Nの祝祭日

映画、読書などのメモ

ロスト・イン・トランスレーション

2017-07-06 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★ロスト・イン・トランスレーション
原題:LOST IN TRANSLATION
監督:ソフィア・コッポラ
キャスト:ビル・マーレイ/スカーレット・ヨハンソン
2003/アメリカ

東京で撮影された作品である。ソフィア・コッポラの傑作プラトニックラブストーリィといっていい。人物の表情は繊細に描きながらも、物語の展開は何もないフラットなもの。面白くもなんともない異邦人の退屈な東京滞在物語だが、映画の魅力は、女性監督コッポラの東京を描く視点である。東京の雑踏を浮遊感漂う、空虚感溢れる街として描き、無国籍風アジアの街、未知の街「tokyo」として魅せてくれた。

夜の風景、ネオンの輝き、暗闇、無音の時間を巧みに取り入れ、不思議とどこか懐かしく、優しい空気が漂う。アジアの空気である。ボクらが慣れ親しんでいる日本文化スタイルも、彼ら異邦人からすれば、映画で描かれるようなある意味滑稽なものかもしれない。登場する日本人たちのふりまく「笑顔」は、不思議な動物の表情を見ているような気がしたくらいである。

ビル・マーレイのどこか飄々とした孤独な表情、スカーレット・ヨハンソンの憂いを持った瞳と何か言いたげな厚ぼったい唇。この二人の極めて微妙な関係に迫りながらも、フラットでプラトニックな物語にして、迷宮世界に迷い込んだような至福感を抱かせてくれる。


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