「世の中にはいろんな人がいるもんだなぁ。いろんな人がいるからいいんだなぁ」と知ったのは、確か19歳のとき。公民館で行われた「スピーチ講座」に飛び込んだのが最初だったと思う。
それまではまず学校活動が忙しく、また同年代の友達との付き合いが一番であるから、親以外の大人といえば先生と近所の人くらい。
それが、見ず知らずの大人たちと触れあって、地域社会の一員となり、一気に視野が広がった
この講座に参加したきっかけはたまたま目にした市報だが、そのころ大学が暇だったこと、新しいことに挑戦したかったこと、自分を変えたいと思っていたこと、話すってなんだろうという好奇心があったこと、いろいろ理由はあるが、やっぱりもっとうまく話したかったからだ
人前に立つとあがってしゃべれない、とか、どもるとかいう症状はなかったが、朗読がひどく苦手だった。それに輪をかけて、自分の声にも話し方にも自信がなかった
自分の声が変だと思ったのは、自分が朗読した読書感想文をラジオで聞いたとき・・・。放送局の読書感想文コンクールだったので、最優秀の特典としてラジオ放送が与えられた。
これは私には特典どころか苦痛でしかなかった。声は震えるし、つっかえるし、何よりこんな声でこれまでしゃべっていたのかと愕然とした
だからそれを直したくてスピーチ講座に入ったのだった。
そこで出会ったのは自分の親ほどの年齢の人たち。
ハスキー声の人もいれば、どもって聞き取れない人もいれば、緊張して後が続かない人もいればさまざま。それなのにみんな勉強熱心
そしてだんだん打ち解けていくうちに、みんなそれぞれに家族や仕事を抱え、悩み、いろんな人生の中でここに来ていることを知った。
恵まれていることに私はみんなに可愛ってもらい、単純なのであっさりと自信を取り戻し堂々と話せるようになったのだが、つまりは、いい声だの、うまい話し方だのはなく、全ては個性であると教わったのだ。
先生は退職したフリーアナウンサーなので発声から発音、スピーチの内容も指導してくれたが、一人ひとりを本当によく褒めて尊重してくれていつも楽しい講座だった。
公民館の講座は数回で終了したものの、すぐに有志でサークルを立ち上げ、私の次に若いは40代のお父さん、あとはほとんどが管理職クラスの50代、そして70近い主婦の方々。その中で、まだ大学生だった私は親からは学べないいろんなことを教わるのである
このサークルのことを思い出すと、いつも心がじーんと温まる。先生も会長もみんな穏やかで素敵な人ばかりだった・・・
そう、私はここ4年ほど顔を出していない。その頃ちょうど自分の生き方に迷いが生じ、もっと頑張らなきゃ、自分の道を探さなきゃ、その葛藤の中で、ひどい話だが、私はおじさん・おばさんたちとのほほん話し方のサークルなどしている場合じゃないと思ってしまったのだ。
最初は案内を貰っていたが無断欠席が増えるにつれ、さすがに遠慮してか連絡がこなくなった・・・。あんなによくしてもらったのに「辞めます」とも言わずに、私は音信不通にしてしまったんだなぁと思い出す度に申し訳なく思った
でもきっとふらっと立ち寄ってもみんな温かく笑顔で迎えてくれるだろう。
とはいえ、もうだいぶ経つし、まだサークルが存続しているかもわからない。そして結局私自身も、まだまだ道半ばでどの顔してスピーチなんかできようか・・・。
でもやっぱり落ち着いたら先生やみんなに会いたいなぁ
こういう思いって届くのだろうか。
私に必要なご縁だからまた巡ってきたのだろうか。
なんと、先日のFP無料相談会で、県立病院の看護婦長をされていたメンバーの一人にばったり再会したのであるしかもトイレで
この日たまたま同会場で「心のケア」のイベントがあり、手伝いに来ていたということで、すっごい偶然
その第一声、「うわぁ、あなたにまた会えるなんて本当に嬉しいわ。夢見たい。」とおっしゃってくれた。これだけでこの方の人柄が伺えるだろう。
そして私も時々思い出していること、ずっと顔を出さずに申し訳なく思っていること、今はFPになって相談員をさせてもらっていること、そして、ここでこうして出会えるのも何かのご縁、再会できて本当に嬉しいと伝えた。
みんなも元気で先生も相変わらず指導してくれて、昔と同じ時間に同じ場所で月2回続けているとのこと、安心した・・・
この秋の試験が終わったらまた行きたいので、みんなによろしく伝えてくださいと言って別れた。
今このタイミングで再会できるなんて・・・、人生って素晴らしい
お互いに縁あってこの世に生まれてきた。そして縁あっていろいろの人と繋がりを持っている。
人と人との繋がりはとかく人間の個人的な意志でできたと思いやすいもので、だからまたこの繋がりは、自分一人の考えで、いつでも断てるかのように無造作に考えやすい。だが本当はそうではない。
人と人との繋がりには実は人間のいわゆる個人的な意志や希望を越えた、一つの深い縁の力が働いているのである。男女の縁もまた同じ。
そうとすれば、お互いにこの世における人と人との繋がりをもう少し大切にしてみたい。もう少しありがたく考えたい。
不平や不満で心を暗くする前に、縁のあったことを謙虚に喜びあい、その喜びの心で、誠意と熱意をもって、おたがいの繋がりをさらに強めてゆきたい。そこから、暗黒をも光明に変えるぐらいの力強い働きが生まれてくるであろう。
(松下幸之助「道をひらく」より)
あまりご縁があるとか若い人は言わないし、ちょっとくさいセリフだけど、そう思ったほうがやっぱり人生は味わい深く、より豊かなものになると思わずにはいられない私の人生観なのである
「人生最強の名言集』とういうサイトの中に「座右の書』として『道をひらく』を紹介しているページになります。
http://jsm.livedoor.biz/
お立ち寄りくださいましてありがとうございます。
「道をひらく」は、この春旅行のお供にと何気なく手に取った本でしたが、開くたびに真理をついた言葉に驚きと発見があり、本ブログでもこの他に「本領を生かす」や「日々是好日」などで引用させていただいています。
この度のリンクの件了解いたしました。ご丁寧に事前のご連絡ありがとうございました。