ネオリベ(新自由主義)礼賛シリーズはそろそろ終わりにしよう。今年に入って新聞各社の論調が明らかに変化しているので、奴らのいかれた考え方を支持する人もだんだん減ってくるだろう。
毎日新聞社会部が連載している「縦並び社会」シリーズの第5部が始まった。「格差克服への提言」として各界有識者の提言を乗せている。シリーズ第一弾は経済評論家の内橋克人氏。難しい数式などを駆使して知ったかぶりをする学者と違って、人間生活の視点から経済を論ずる第一人者。私の好きな人だ。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/tatenarabi/
◆「共生経済」へかじを--経済評論家・内橋克人氏
バブル崩壊後の「長期構造的停滞」をもたらしたものは、狂乱的な土地投機や金融資本の節度喪失、もとをたどれば円高誘導を決めた85年のプラザ合意以降の日本政府の重大な「政策エラー」に真因があった。
ところが一部の論者は巧みに現実をスリ替え、あたかも公正や平等に価値を求める在来の価値観に不況や停滞の原因があったごとく唱え始めた。彼らは平然と「悪平等主義」とか「ぬるま湯につかる日本人」、ついには「日本型社会主義」なる珍語までひねり出し、長期停滞の責をもっぱら社会一般、とりわけ働く者に転嫁し、糾弾を始めた。
アメリカ帰りのある学者は「格差ある社会は活力ある社会」などといい、「金持ちにうんと金持ちになってもらうほか、日本が豊かになる選択肢はない」とまで公言している。その後、この人物が経済政策を担った。日本財界、超富裕層の長きにわたる宿願が、すべて見事に達せられた。ごく普通に生きる日本人の「不幸の始まり」だ。
社会をむしばむ「格差」を一気に深めたものは、小泉政権が完成させた雇用・労働の解体だ。この政権は「改革」の名において、経済界の悲願であった「雇用・労働の規制緩和」の流れを一気に加速させ、不可逆で決定的なものとした。03年改正における差別的派遣労働の全面解禁(期間の上限延長)、製造業への派遣労働の解禁断行などがその核心的なものだろう。まさにここに「格差問題」の起源は発している。
いま、私たちは「あるべき日本社会」の展望を打ち出さねばならない。時の権力に密着してグローバルスタンダードなる「幻想」をふりまき、「既得権」を糾弾しながら「新規権益」をほしいままにした不公正な「利得者」らをあぶり出すことだ。市場が市民社会を支配するのではなく、社会で暮らし、働く人々を守る新たな「共生経済」へ向けてかじを取るほかにない。(毎日新聞7月24日)
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◆名指しこそしていないが、時の権力に密着してグローバルスタンダードなる「幻想」をふりまき・・は竹中平蔵。「既得権」を糾弾しながら「新規権益」をほしいままにした不公正な「利得者」・・は宮内義彦のことを指している。温厚な内橋氏が、「彼らをあぶり出さなければならない」と怒っている。毎日新聞がんばれ。