GOGO三国志!

2014年に復活した白井恵理子先生の劉備くんシリーズや長池先生の「破龍」(完結)他三国志作品を応援しています!

水煮三国志

2005-10-29 20:52:54 | 三国志/小説(演義ベース)
水煮三国志(みずにさんごくし)~中国ビジネス思想の源流を知る~/成 君憶(チェン・ジュンイ) 著/呉 常春(ウ・チャンチュン)・泉 京鹿(いずみ きょうか) 訳/日本能率協会マネジメントセンター/刊行中/1600円(本体価格)
内容とコメント「三国志」のビジネス小説。劉備や曹操たちの企業家としての奮闘を「三国志」の展開に沿って描き、彼らの口を通して経営者の心構えを教示しています。
雑誌で人気を博した連載を単行本化し、中国でも日本でも大ベストセラーになった作品です。タイトルの「水煮」は四川料理の人気メニュー「水煮魚片」(油で揚げた唐辛子と山椒がたっぷり入った激辛の川魚の水煮)のようなピリ辛の風刺を効かせたという意味で使用したそうです。
この作品に登場する劉備たちは現代の人間で、「三国志」は古典として登場します。それが時々紛らわしくなってしまいます。
例え話として出て来る寓話(イソップ物語?)もその必要性に疑問を感じ、大いに戸惑います。
人材管理(社員の操り方)や顧客の心をつかむ方法など、ビジネス教本としてはとても勉強になりそうで、必要とされる方が読まれると確かに面白いかもしれませんが、「三国志」の武将たちが非情なビジネスの世界で利潤を追求する姿には感動出来ません。
それと、ビジネス用語もある程度知っておく必要もあります。これは最近のニュースや新聞を騒がせた流行の用語がちょうど出てきます。
それでも、展開は「三国志」に沿っているので、呂布絡みの話(劉備から徐州を奪ったり、貂蝉の為に董卓を殺害してしまった事や滅亡の様子)や赤壁の戦いのあたり(特に曹操の南下や黄蓋の偽降と火計)などは現代風にアレンジされていて面白かったです。
各章の終わりにはその章で教えた事のまとめを、巻末には登場人物の総覧が収録されています。
この女性がキラリ!
阿丑(あしゅう)。諸葛亮の妻。この小説では(でも?)扱いがひどい女性陣の中では良い役に描かれています。
世に出て自分の力を試したい孔明に覚悟を決めさせ、快く送り出す、爽やかな奥方です。
孔明より頭脳明晰な印象もあります。



長池とも子「破龍」第2巻発売日決定!

2005-10-14 20:57:20 | 三国志ニュース
プリンセスGOLD(秋田書店)で連載中の少女漫画三国志「破龍」の単行本第2巻の発売日が来年1月16日(月)に決定しました。
この作品は曹操、孫策、諸葛亮がそれぞれ主人公で、三国志に彼らの恋愛を絡めたストーリー展開になっています。
既にご紹介した孫堅が主役の「碧眼の花嫁」も収録していただけると嬉しいです。
表紙は誰になるのか、自分で想像するのも楽しいです。
今回は女性たちをカラーで見せて欲しいです(勝手な希望)。

情報源:三国茶屋(長池先生の公式HP)


正史三國志 群雄銘銘傳

2005-10-06 20:53:48 | 三国志/関連本
正史 三國志 群雄銘銘傳(ぐんゆうめいめいでん)/坂口 和澄(さかぐち わずみ)著/光人社/刊行中/3800円(本体価格)
内容とコメント「正史」(魏書・蜀書・呉書に分かれた歴史書)に登場する「三国志」の登場人物に裴松之の注釈や「後漢書」、「晋書」、「世説新語」「華陽國史」などからエピソードの補足、子孫の略述を加えた人物事典。本は分厚くて重く、ページ数が726Pと、とにかく多いので、著者が薦めるように好きな人物の項から読むのが効率がいいかもしれません。
人物伝は魏・蜀・呉・後漢に分けられ「演義」に登場しない人やあまり目立たなかった人、また、当時の異民族についてもきちんと紹介しています。
年代は読者が混乱しないように元号ではなく西暦が使われ、巻末には人物の生・没年も加えた年表もあります。
人名や一部の漢字には原典どおりの表記(旧字体)が使われています。例:欠く→缺く
「まえがき」を読んで覚えておかないと、漢字が出たときに焦ります。
人物のエピソードに矛盾した記述がある場合などには著者独自の考えも記されています。
無名の(失礼ですが)人物の清廉さや忠臣ぶり、とばっちりで命を奪われる運命の皮肉さ、あるいは保身に走る見苦しさといった数々の記述、占いで孫権などの有力者に頼られていた人々の存在、正しい音楽の復興に尽くした人、各分野で才能を発揮した発明家たち、「演義」には登場しないものの、馬超をあわや刺し殺す寸前まで追い詰めた武将(閻行‐えんこう‐)、黄忠をしのぐ活躍ぶりの老将(呂岱‐りょたい‐)、諸葛亮が崔州平(さいしゅうへい)や徐庶と親しかった背景、陳寿は人物の不名誉なエピソードにはその人物伝での記述は避け、関連する人物伝の中で記述している、など、色々と新発見をする事が出来ました。
有名な武将の新たな一面にも触れる事が出来、より好感度が増しました(笑)。
老将も沢山出て来て、本当に「三国志お達者くらぶ」が作れそうです。

この武将がキラキラ♪
主君を陰で支える人たち。間引きを行っていた人民に農地を開墾させて生活を安定させた鄭渾(ていこん)、屯田制を進言した任峻(じんしゅん)、棗祗(そうし)と韓浩(かんこう)や異民族の侵攻を武力で防いだ牽昭(けんしょう)、誠実な人柄で防いだ馬忠と張嶷(ちょうぎょく)、その他の人々…。こうした人々がいたお陰で、曹操や諸葛亮、孫権が国事や外患に煩わされる事なく三国間での戦に明け暮れる事が出来たのかもしれません。
彼らを現地に赴任させた曹操たちの頭脳の凄さも改めて思い知らされます。(謀臣の献策かもしれませんが)

この武将がキラリ!
夏侯惇と夏侯淵。夏侯惇は大旱魃(かんばつ)と蝗(いなご)の害で苦しむ民の為に太寿の河をせき止めて堤防を作り、自ら土を担いで運び、将校・士卒にも稲を植えるように指導したそうです。当時の将が自ら労働する習慣が無かった点でも(あったとしても想像する事も無かったです)貴重ですし、土を担ぐ将軍の姿もかなり貴重です。合戦中とはまた違う凛々しい姿かな、と想像しちゃいます。
夏侯淵は曹操が家にいた頃、彼の身代わりで重い罪を被り、そして救い出されたそうです。
一体どんな罪状で、何故罪を被ったのでしょうか?想像するのも楽しいですし、小説や漫画でも読んでみたいです。
それも気になるのですが、兗州(えんしゅう)・豫州(予州・よしゅう)の大混乱で飢餓に見舞われた時、夏侯淵は自分の幼子を後回しにしてまで亡き弟の遺児の面倒を見たというエピソードが新鮮でした。でも正直、実子と“同様に”、が良かったのですが…。
凌統も若いながら誠実さを伝えたエピソード(留贊‐りゅうさん‐の項)を知る事が出来て良かったです。そして、若くして亡くなった事も…。著者が紹介した説では享年29歳。若すぎます…。少しイメージが変わったかも。高順も良かったです。彼の軍の渾名(あだな)・「陥(かん)陣営(敵の陣営を陥‐おと‐す)」がかっこ良いです。
あとは、太史慈! 理由は後述します。

この武将がトホホ
周不疑(しゅうふぎ)。幼い頃から聡明で、曹操にも「自分の娘を嫁がせたい」ほど気に入られていた人ですが、やはり幼くして聡明だった曹沖がわずか13歳で亡くなると一転して疎まれ、ついに刺客により殺害されてしまいます。「彼の才覚は曹沖以外には御しきれないほど後の脅威になる」と曹操は暗殺を止めようとした曹丕に言うのですが…暗殺時の彼は17歳。単純に考えるとやはり曹操が才能にあふれたまま成長した彼に嫉妬したように見えます。…子供の頃から思いやりのあった曹沖がそれを喜ぶとは思えません。

このエピソードがキラリ!
孫策との一騎打ちが有名な太史慈ですが、この本では黄忠もビックリの弓の腕前や孫策に登用された太史慈のその後のエピソードも紹介されています。
その中には、なんとあの曹操にスカウトされた話も!太史慈の評判を聞いた曹操は彼に手紙を送ります。文面には何も記されず、ただ当帰(とうき)という薬草が入っているだけ。
これは「当(まさ)に帰(き)すべし」という謎かけで、曹操の粋な一面を伝えています。
この話も色々考えると面白いです。太史慈の事は遠くまで聞こえた武名の他、配下の孔融からも聞いているかもしれません。(孔融とはかつて母の面倒を見てもらった事や、その恩で彼の危機を救ったなど、色々縁があったので)
配下への誘い方もいつもと違います。いつもの「捕縛後に説得や賛辞、人柄で魅了」ではなく、馬超と韓遂の時にあった離間の計でもなく、謎かけで呼びかけたのは、学問を好んだ太史慈の教養を知って(或いは聞いて)、試したのでしょうか?
配下に欲しくても強引に離間をしなかったのは、関羽の時のように心証を悪くしたくなかったのかもしれませんね。あの時は馬超と韓遂(のどちらか)を配下にする気は無く、不仲が目的で、しかも入れ知恵で、年代も違います。
太史慈の場合は将に恋する(吉川英治 三国志 参照)パターンだと思います。
薬草というのも太史慈が母親思いであるなら効果的です。謎が判らなくても母の為に薬草を送るか使えばいいですし。まさかいきなり毒草は贈らないでしょうから。それこそ印象は最悪になってしまいます。
曹操に認められる太史慈も凄いですし、目を付けた曹操も流石です。どちらも嬉しく思います。



「三国志マガジンVOL.5」その3(終) 漫画とインタビュー

2005-10-02 20:31:23 | 三国志/漫画
今回はやっと漫画作品のご紹介です。
三国志大戦スタッフインタビュー
稼動から半年を経ても未だ衰えない人気のアーケード・カードゲーム「三国志大戦」(セガ)の開発スタッフ、大原 徹氏、小室 和生氏、西嶋 一真氏へのインタビュー記事。
ゲームの客層からカードの登場武将や伏兵と接触した時の効果音の秘密、ゲームの醍醐味であるデッキの組み立て(手札の組み合わせ)まで、ゲームユーザーにも三国志ファンにも興味が持てる内容になっています。
また、携帯電話対応のシミュレーションゲーム「三国志年代記DX」の紹介もあります。

三国志ゲーム特集や、今回のようなスタッフインタビューは面白いです。ゲーム誌では聞けない事、書かない事をどんどんやっていただきたいです。

漫画作品
「火鳳燎原」(陳某)は董卓VS貂蝉。故郷の人々を懐かしむ歌で兵たちを動揺させる貂蝉だが、董卓のカリスマ性はそれをはるかに上回り、貂蝉の心をも捕らえていく…。

「関羽、一擲(いってき)!」(島崎 譲)は関羽VS黄忠。長沙を押さえようとする劉備軍に、兵たちの首が突如飛ばされる怪現象が起きる…。黄忠の矢が凄すぎます。槍?

「瞼の楽土~鍾会(しょうかい)伝~」(志水 アキ)
タイトルや人物総覧ではいきなり鍾が鐘(かね)になっていますが、魏の将で、艾(とうがい)らと同じく蜀を攻め、その滅亡後は蜀の再起を図る姜維と手を組み自らも破滅する数奇な運命の持ち主、鍾会の足跡を描き、その動機には幼い頃から親愛に渇望していたという設定をつなげています。

「張飛翼徳 世にはばかる」(日高 建男)は、青年張飛を描いた作品。のどかな村と豪快な祭りの中で展開する、張飛のあの運命の出会いと成長の話です。
張飛の幼なじみ陽祥がいい味出してます。あの人も若い!

「曹操孟徳正伝」(大西 巷一)は董卓暗殺で却って困窮を極めてしまった献帝を救おうとする曹操の前に数々の困難が…。
…さすがに、陶謙のいる徐州で行った大量殺戮に関しては、詳しく触れられていません…。
読者の想像に委ねた形を取ったのかもしれません。
すっかり荒みきった献帝ではなく、乱世を憎もうとする曹操の胸中もまた然り。

呉の魯粛が活躍するシリーズの最新作「遊仙洞(ゆうせんどう)」(佐々木 泉)。今回は諸葛瑾が登場。苦手とする魯粛に誘われ、仙人がやってくるという洞窟に気乗りしないまま同行しますが、そこでの一件から印象が変わり、次第に惹きつけられていきます。
シリーズを通して水上の場面が描かれるのが特徴。孫権や周瑜も出ます。

「STOP!劉備くん!」(白井 恵理子)は赤壁スペシャル前・後編と題して白井版「赤壁の戦い」を描いています。その中にもいつもの時事ネタが入ってます。さりげなく反戦ネタも?ほのぼの魯粛やホウ統の出番もあります。
この武将がキラキラ♪
「火鳳燎原」の許臨(きょりん)。貂蝉が歌った詩は彼の作で、既に亡き彼の人となりが、今ようやく明かされます。

この武将がキラリ!
同じく「火鳳燎原」の呂布。…忘れがちですが、彼は許臨の為に、仇である眼帯の男を捜しています。今回の呂布も超人的な強さでかっこ良かったです。そして謙虚。どちらかと言えば後者がキラリ!の理由です(苦笑)。

もう少しくだけた感想はこちらです。





「三国志マガジンVOL.5」その2 赤壁の戦い

2005-10-01 20:38:58 | 三国志/漫画
今回は「三国志」の最大の山場・赤壁の戦いを取り上げた作品をご紹介します。

赤壁新風(翁 子揚)
漫画家・イラストレーターである同氏による赤壁の戦いの名場面集。鮮烈な赤に彩られる長江と、人物がまとう緑が映えて美しいです。

赤壁の戦い(李 志清)
漫画と言うよりは絵物語のような重厚な作品で、誰もが知っている赤壁の戦いを忠実に描き、ドラマのように見せています。曹操が短慮で劉馥(りゅうふく)を斬ってしまった事を泣いて後悔したり、周瑜の芝居がかっている立ち居振る舞いなど、人物の魅力も描かれます。

赤壁の虚実(島崎 晋)
赤壁の戦いの名場面の数々(主に孔明が大活躍)は「演義」に書かれたエピソードで、これはどこまでが真実なのか「正史」と照らし合わせて検証した内容です。
「正史」を持ち出しても史実通りなのかの判断が難しいものもありますが…。
また、「赤壁」といわれる場所はどこか、その有力な場所を唐の詩人杜牧(とぼく)や北宋の詩人蘇軾(そしょく)の詩から紹介しています。
その他、曹操軍の敗因にも色々な仮説をまとめての史実の推測や、「三国志平話」に出て来る異説を紹介しています。
これに地理的、気候的検証があればもっと良かったのですが、欲張りすぎですね
黄蓋のちょっと臭かった話や、中国古代(唐の時代)の兵船の図解も収録しています。

アレ国志 特別編 赤壁反省会(末弘、解説:大澤良貴)
赤壁の戦に敗れて逃走する曹操が呼んで現れた郭嘉の霊と共に戦の敗因を振り返る、解説付き漫画作品。

三国志新聞(大澤良貴)
これも赤壁特集号。戦が行われた年の六月、曹操は三公(司徒、司空、大尉)を廃止して丞相に就任し、十二月には赤壁の戦から撤退した事を報じています。
その他、後の成都陥落の記事もあります。

この武将がキラリ!
武将ではないですが、「アレ国志」の郭嘉。彼のダメ出しにヘコむ曹操(壊れ気味)ですが、最後はちゃんと励まして結ぶ形にかつての二人を見るようで、懐かしくもあり、寂しくも感じます。
それと、曹操の子の一人、曹沖(そうちゅう)。幼くして夭折した彼が亡くなったのは奇(く)しくも赤壁の戦の年なのですね…。何か、因縁めいたものを感じます…。ついでに、孔融(こうゆう)も。(この扱いの差は一体?!)

この武将がトホホ
「アレ国志」の夏侯恩(かこうおん)。他の漫画でも扱いが酷かったのですが、自分の中ではちゃんとかっこ良いイメージがあるのでこのような描写でも割と平気です。
ただ、初めて見た方への印象が心配です…