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民法改正法案が成立 債権分野120年ぶりに見直し

2017-06-03 | 日記

             民法改正法案が成立 

            債権分野120年ぶりに見直し 

民法改正法案が成立 債権分野120年ぶりに見直し
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 民法の債権法関係規定を改正する民法改正法案が5月26日、参院本会議において賛成多数で可決、成立した。

 改正されるのはおよそ200項目。売買の瑕疵担保責任について、これまで法定責任(特定物は引き渡しで履行完了)とされていたものを、契約責任(一般の債務不履行責任)とするものや、中小企業融資では公証人による保証意思の確認が必要になる。また、賃貸借で敷金や収去義務、原状回復義務が規定される。このほか、認知症など意思能力のない人が結んだ契約は無効になるほか、バラバラだった消滅時効期間を5年間に統一、法定利息も5%から3%になり、一定期間で見直す変動制になる。

 施行は、公布後3年以内とされており、20年施行が想定されている。なお、併せて、民法改正法施行に伴う関係法令整備法も成立した。

民法改正の影響――(上) 20年施行に対応するために知っておくこと 〓瑕疵〓が消えた効果 個人保証は大きく減少か
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 09年、当時の民主党政権時代に法制審議会に改正を諮問された民法改正案。紆余曲折を経て、ついに17年4月14日、衆院本会議で賛成多数で可決し、参院に送付された。参院での審議を経て、この通常国会中に成立することは確実。8年の歳月を経て、当初の形からはいく分変化した改正案だが、社会的に多くの影響が考えられるため、周知期間を経て施行は20年ごろとなる。改正案が成立する前に、今一度、民法改正案について知っておこう。

 今回の民法改正案は、消費者保護の面であるとか、旧来の雑多な法令を整理したとか様々な側面があるが、従来の「債権債務を中心とした解釈の世界から、契約を中心とした思考様式の移行」(吉田克己早大大学院教授)が挙げられる。その最も代表的な改正項目が、瑕疵担保責任から契約不適合責任への変化だ。

 これまでは売買の目的物に隠れた瑕疵があった場合、買主は売主に対し、契約解除と損害賠償ができるとされていた。この部分について、改正法案で論議されたのが、「瑕疵」という言葉だ。中間試案によれば、瑕疵という言葉が法律の専門家以外の人にとっては難解だと言うことに加えて、場合によっては物理的な欠陥しか思い浮かばない可能性があるということで、不適切とされた。

悪意の買主も主張可

 代わりに使われた概念が、「引き渡された目的物が契約の内容に適合しないものである場合」というものだ。このことにより、現民法では、「隠れた」瑕疵であることが要件だが、改正民法では、目的物に必要な性質が備わっていないということが問われて、隠れたものであるかは要求されなくなった。つまり、表に表れている欠陥も対象になるということだ。

 また、これまでは買主が瑕疵があることについて善意無過失であることが要件とされていたが、今後は買主がそれを知ることができたとしても、売主が本来履行すべき債務を履行していないことには変わりないので、これも要求されない。「隠れた瑕疵」という文言を排除しただけで、こうした効果が生み出されている。

 「契約不適合」により、生み出された効果は他にもあり、契約の内容に適合しないものを引き渡したのなら、期間を定めて追完(追って完成させろということ)の催告をし、その間にできないときは、その不適合の程度によって代金減額を請求できることにした。つまり、これまで瑕疵担保責任では、契約の解除と損害相性責任しか買主側が出来できなかったのが、代金減額請求や修補請求も行えるようになった。

 さて、瑕疵から、いわば債務不履行の概念に変化した改正法が実務に与える影響についてだが、既に契約で対応している事業者が多い。

 渡邉不動産取引法実務研究所の渡邉秀男氏によれば、「契約実務や訴訟では、既に取り入れられている考え方で、有力な学説の一つともなっている」とのこと。問題は、契約内容に適合したものを引き渡すにはどうすればいいかということ。物件調査や告知書、重要事項説明書の重要性が増すものといえる。

 次は「保証」だ。今回の改正で連帯保証制度は、事業用の融資などで第三者が個人で保証人になる場合、公証人による意思の確認を必要とすることにした。

 「根保証」も改正された。現行の根保証に関する規定を個人にも適用することとし、保証人の保証債務の「極度額」を定めることにした。保証人の責任には、債務元本のほか遅延損害金など一切の債務が含まれるため、これを保護するために「極度額」を定めない限り、契約そのものが無効になる。

 そして、この根保証は建物賃貸借契約における保証が該当することで、賃貸管理業者に大きな影響が出ることになる。契約時に、家賃何カ月分という極度額を定める必要が出てくるからだ。今回の改正で、建物賃貸借契約における個人保証は減少し、家賃債務保証会社による保証が増加すると思われる。
(近藤 隆)

民法改正の影響――(下) 20年施行に対応するために知っておくこと 契約優先、書面準備を
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 今回の民法改正案で最も変更が多いのが「賃貸借」だ。前回触れた根保証や個人保証の制限も、賃貸借における家賃債務保証に大きく影響を与える。そして、賃貸借規定そのものにも様々な改正や新設が行われた。早速見ていこう。

敷金を初めて規定

 まずは敷金に関する規定だ。敷金は、賃料その他の賃貸借契約上の様々な債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に対して交付する停止条件付きの返済債務を伴う金銭、などと言われているが、実はこれまで民法上にしっかり規定されていたわけではなかった。

 今回の改正で、「いかなる名義をもってするかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」とされた。そして、「(敷金を)受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき、または賃借人が適法に賃借権を譲渡したときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭債務の額を控除した残額を返還しなければならない」

 「賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭債務を履行しないときは、敷金を当該債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金を当該債務の弁済に充てることを請求することができない」と規定されたことで、貸主は滞納家賃に敷金を充当することはできるが、賃借人は充当請求ができないことがはっきりした。

 また、賃借権が譲渡された場合の敷金の取り扱いも規定された。賃借権が譲渡されると、旧借主(譲渡人)が貸主に預けている敷金の返還請求が新借主(譲受人)に移るのか、それともいったん清算しなければならないのか、というもの。今回の改正で、当事者間に特段の事情がない限り、賃借権の譲渡時点で旧借主に対する敷金返還義務が貸主に生じるという規定となった。賃借権の譲渡は貸主の合意がないとできないので、こうした規定があっても貸主に不利とはならないからだ。

 「敷金の定義、効果や譲渡された場合の取り扱いについては、従来の判例の内容が明文化された」(渡邉秀男・不動産取引実務研究所代表)ので、不動産事業者にとってはひと安心というところだろう。

 賃貸借終了後の収去義務と原状回復義務も明文化された。原状回復義務については、通常使用に伴う賃借物の損耗や経年劣化に基づくものは、原状回復義務を負わないと規定された。通常使用に伴うものは借主が支払う賃料の中に含まれていて、それで貸主が負担するということがはっきりした。ただ、具体的な基準が示されたわけではないので、「東京ルール」などこれまで認められてきた判断基準などから認定されることになるだろう。

請求期間は貸主有利に

 不動産事業者やオーナーにとって重要な改正は、費用に関する損害賠償請求の問題だ。原状回復費用があるのに、借主が支払わないで、そのまま行方不明になってしまうというケースがある。そこで、改正案では、「(損害賠償の請求権については)賃貸人が返還を受けた時から1年を経過するまでの間は、時効は完成しない」という規定を付加。賃貸借においては10年を超える長期間ということもあり、賃貸借契約終了後、賃借人の用法違反が判明した時には既に消滅時効期間が経過している場合がある。そこで改正法案では前記した項目を設けて、賃貸人の保護を図った。不動産事業者はオーナーに対し、しっかりと説明すると共に、原状回復管理業務を適切にこなしていく必要がある。

 このほか、貸主が修繕義務を履行しない場合、借主は賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、または貸主が知っているのに相当な期間内に修繕に応じない場合や、急迫の事情がある場合は、借主が修繕を行えるという規定が設けられた。

 いくつか民法の改正項目を見てきたが、前回記したように〓契約を中心とした思考様式の移行〓を明らかにしており、今後は契約内容が問われることになる。不動産事業者は契約書類の改訂作業など、必要不可欠な作業を専門家と一緒に進めていくことが求められる。 (近藤 隆)


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