私の三丁目

映画「ALWAYS 三丁目の夕日」と共によみがえるあの頃、そして今

ASIAGRAPH「続・三丁目の夕日」トークショー(2)

2007-10-14 17:42:04 | 映画「三丁目の夕日」

昨日、東京・秋葉原で開催された ASAIAGRAPH 2007 のイベント「ALWAYS 続・三丁目の夕日 VFXのひみつ」のあらましを紹介します。

実は私がもっとも強く印象に残っている山崎監督の発言は、参加者からの質問に答える形で語られた「ALWAYS 三丁目の夕日」卒業宣言でした。

『とりあえず今、次の作品は別のものを予定しているので、昭和には行かないと思うんですけど。まぁ、そうですよね、再現ばかりやっててもねぇ....。再現の方がよろこばれたりするんで、微妙な気持ちになるんですけど。でも、僕自身がその、昭和を次々とやっていきたいということではなくて、まぁ、いろんなジャンルに手を出して行きたいなと思っています』

昨年、「続・三」の制作が発表された時に、欲張りな私は「続の次」まで期待してしまったのですが、奇跡は二度と起こらないようです。きっと監督としては「すべてやり遂げた」という気持ちなのだと思います。

以下、トークショーの中で、私の印象に残ったお話をいくつか紹介します。私のメモと記憶がもとになっていますので、不正確な部分があることをお含み置きの上、お読みください。

---- 0号試写を観て質問をまとめようと思ったんですけど、ストーリーに引き込まれ、ボロボロ泣いてしまってダメでした。まず最初に「白組の制作体制、ハード・ソフト、人数構成、フロー」などを教えていただけますか?

人数は少人数です(笑)。フローはないんですよね。調布スタジオはけっこうぐだぐだな集団。本社から離れており、独立愚連隊と言われ、治安が行き届いていなくて....(笑)

スタッフ構成CGチーム7人、コンポジット専任は3人、ミニチュア常駐3名+2名お手伝い、カメラマンなど3名くらい。役職があるようでない、手が空いていれば何でもやるという感じです。SEが合成やったり、何でもできるように鍛えあげているんですよ(笑)

---- 少人数のメリット、デメリットは?

デメリットは「少ない」ということですかね(笑)。メリットは指導が行き届きやすいことです。情報の伝達を繰り返すと精度が悪くなりますが、少人数の場合はすぐに伝えられ、ロスが少ないので、ピュアな情報を共有することができます。

このように作品のクオリティが揃えられるというメリットがありますが、人数が少ない分完成までに期間がかかってしまいます。

映画はお金がかかるビジネスですから、投資から回収までの時間がかかってしまうことを納得できる人(プロデューサ)でないと、つきあえないということは言えるかもしれませんね。

---- 白組が担当されるのは VFX だけですか?

撮影後、実写分を含めてすべてのカットが完成するまでを担当します。作業に時間がかかるため、その間に関係者がチェックにきて、そこで大きく進路変更されてしまうこともあります。今回の飛行機のシーンもいろいろありました。タイヤの大きさが違うとか、図面通りではダメで「(観る人が描く)イメージとの一致」という闘いもあるんですね。

---- ハリウッドではたとえば1000台のコンピュータでレンダリングをしたりするところもありますが、白組はどうですか?

作業環境も人と同じで少ないです。サーバでやるのかスタンドアローンの自分のマシンでやるのかといったことは、個人に任されている感じですね。

---- 日本式 VFX という感じでいいですよね。1000台あればいいというものではないですから。VFX を含めて、監督が演出で心がけていることは何でしょう?

映画というものはお客様のものです。感動したり、笑ったりということは、お客様のものさしで考えるべきだと思うんです。ですから、できるだけたくさんの人=ものさしに響くか、ということを大切にしています。

裸の王様にならないよう、たとえば照明のアシスタントの人の声であっても耳を傾けるようにしていますね。若い人の声、特に恋愛に関しては女子の意見は貴重で、彼らの顔色が気になります。

---- 映画「続・三丁目の夕日」の中で日本橋の位置づけは?

日本橋は真ん中あたりで出てきます。橋は出会いや別れの場所。一作目は東京タワーで時代を表しましたが、今回は高速道路のない日本橋を選びました。

ただし、CG で高速道路のない日本橋が再現するだけでは満足できないわけで、そこにドラマがないとダメ。そこで、日本橋にストリーを絡ませたんですね。

日本橋は現存してるわけですから、実写撮影ができると思っていたんですけど、そう思っていたのは監督だけだったようです。

交通量が激しい、建造物の陰、期待通りのカットを撮影するようなクレーンを設置できないなどいろいろな問題があって、茨城・霞ヶ浦そばの駐車場に日本橋の16分の1の歩道と欄干部分だけのセットを作り実写撮影をし、白組調布スタジオ内に24分の1のミニチュアを作って撮影、そして最後に CG を組み合わせて再現することになりました。

---- それでは、日本橋でロケはできなかったんですね?

撮影ではなくリハーサルをしました。映画の撮影、しかもリハーサルで日本橋を半日封鎖するなんて、前代未聞のことと言われました(笑)。

役者さん、スタッフとも16分の1のセットだけでは全体像を把握することができないため、「日本橋祭り」という名目で、本物の日本橋の歩道と一車線を半日止めてリハーサルを行うことにしたんです。

---- 日本橋には飾り(彫像)がついていたと思いますが、実物大セットにはないですよね?

美術の方が「作りましょうか?」と言ってくれたんですけど、眼はそう言っていませんでしたね(笑)。「実際に作成すると、どこかのセット(の予算)が消えてしまいますね」と言われました。

結局、そういう交渉のされかたをして負けました(笑)。そして、彫像は CG でやることになりました。

---- 前作の三丁目の町並みのミニチュアは再利用できたんですよね?

一作目の時は「次回作なし」という前提で制作したんですね。夕日町の町並みは6ブロックからなっていて、ミニチュアは繰り返し利用したので、同じ建物に6回の化粧直しが加えられているわけです。

今回も1度だけですが大通りのシーンが出てきます。このために、自分達が前作で作ったシーンを参考にしながら、町並みのミニチュアの復元作業をしなければなりませんでした。「なんでもっと写真を撮っておかなかったんだ」とか言いながら(笑)。

それでもひとつやふたつは前作と違う建物やお店があるかもしれません。それは商売繁盛で、増改築されたと考えてください(笑)。

山崎監督は繰り返し「オープニングには注目してください」と語っていました。映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」公開まであと20日。早く観たい!!