Akatsuki庵

日々と向き合って

『乾山の芸術と光琳』

2007年12月01日 06時56分35秒 | 美術館・博物館etc.
出光美術館(東京) ※12/16まで

江戸初期に活躍した京焼の陶工、尾形乾山の焼き物にスポットを当てた展覧会。
今回の展覧会を企画するにあたり、京都の窯跡に於いて発掘調査を行ったそうで、その出土品や成果も展示されている。

今回は、金曜夜の開館時間延長を利用。学芸員による展示解説ツアーに参加しながら観賞した。
(ここの解説はとてもわかりやすくて勉強になる)

裕福な呉服屋の息子として生まれ育った兄弟、時代が疲弊し家業が傾く中で、経済的な自立を余儀なくされた。
派手で遊び好きの兄・尾形光琳に対し、5歳下で真面目かつ堅実な弟・乾山は、閉窯したばかりの仁清窯から技術を受け継ぎながら、急速に台頭しつあった伊万里焼きに対抗するように、京都の雅を背景に日本的な京焼を作り出して行く~。

兄も諫めて改心させ、やがて琳派で名をなすようになってくると、絵付けのデザインに協力させ、ますます華麗な器に発展させ~。
と、解説を聴いていると、素晴らしくドラマティックでい前向きなサクセスストーリーが展開されて、驚いた。

既に乾山の器は美術館や博物館で何回も観ているし、現代の京焼の作家さんでも"乾山写し"と称した作品を出しているので、いわゆる先入観はかなりあった。

が、それが完全に覆された。
前半生の鳴滝窯の時代は異国趣味(赤絵、磁器、ベトナム風~宋胡録<すんころく>の写し~や阿蘭陀、磁州窯のサビ絵)も手がけ、また狩野派の絵師に絵付けさせたと思われる王朝の伝統美も絵皿で再現。
さらには、大量生産の型押しの絵皿も。

窯の中で、職人に指示を与えながら、自分のデザインを生産していくというシステムは現代のファッションデザイナーの工房のような会社チックな世界だな。
色彩感覚も器の形も斬新的で、最初は海外の模倣に始まり、(鎖国の影響もあって)やがて世界のどこにも存在しないメードイン・ジャパンなものになっていく過程は圧巻。
(今でも、単に観賞用じゃなくて、料理や菓子を盛り付けてもビジュアル的に通じるもんな)

兄の光琳も、絵付けを描いた!と確たる証拠は遺されていないものの(最初に1点だけ出てたけど)、おそらくは合作であったろうと思われるという作品の展示もそれまでの過程を追った上で観ると、「なるほど」と感心した。

晩年?たぶん発掘調査で出土したのだろうが、志野や織部の再現も研究していたらしく、破片があったし、唐津の手法の向付もあった。
乾山窯の幅の広さに感服。

展覧会を観て帰宅した後、『美の壷』のテーマが懐石だったので、観ていたら、乾山の皿が出てきた。
やはり、実用に使ってこそ"映える"のが工芸の真骨頂だなと思った。

ちなみに明日の『新日曜美術館』でも、今回の展覧会を取り上げる。
放映はNHK教育、朝9時~ないし夜8時~。

★展示解説はすごく勉強になるけど、唯一の欠点は終了後の観賞時間が10分弱しかないこと。←夜ゆえ閉館時刻。
今回も始まる前の5分で予めザッと観たものの、やはり帰宅してからチラシや目録を眺めていると、「見逃した」と後悔する作品がポロポロ。明日のテレビを観たら、さらに増えるだろう。
(リピーターになるかも)
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