お久しぶりです、赤見直樹です。いやーいつの間にか2012年ですね。
ブログは基本的に重要告知か、長文を書きたい時に利用するので
割とこの1年はツイッターで毎日元気にしておりました。
不在の時には、ツイッターをお訪ね下さい。
本年もよろしくお願いいたします。
そういうわけで、久々にゲームレビューです。
今回は、前々から注目していたメーカー:クインロゼの新作
乙女向けゲーム「逢魔時~怪談ロマンス~」です。
--------------------------------------------------------------
●ストーリー
--------------------------------------------------------------
舞台は、人間世界と妖怪世界の境にある高校。
昼間は人間達が学生生活を送っているが、逢魔時を境に妖怪達の学校に切り替わる。
そのことに、人間は気づいていない……。
主人公は、磯姫の血を引く妖怪。
成績はいいが、強い妖力をもてあましている問題児。
力を発散しなくてはいけないため、悪友と組んで
人のみならず妖怪相手にも悪戯を仕掛けている。
楽しいことが好きで、退屈は嫌い。
妖怪の持つ性質に違和感を持ちながらも、
永遠にも思える、変わらない日常を過ごしていた主人公。
同じ高校に通う相手との恋が、その日常を変えていく――。
--------------------------------------------------------------
●全般
--------------------------------------------------------------
いわゆる一般的な恋愛ADVです。すっかりクインロゼもこの形式におちつきましたね。
主人公が妖怪で、テーマが学園もの。そして付随テーマが神隠し。
謎を孕んだデモムービーの内容に違わず、特定の攻略対象には真相EDが用意されており、
主人公と彼らの隠れた過去がわかるようになっています。
真相EDが用意されているのは、式部密(磯撫&死神)と日比谷京極(元人間)ですが、
それらには真相ED以外のEDを見ないと辿り着けない形式になっています。
Amazonでは、この2人は攻略を最後にまわした方がいいというレビューがありますが、
真相EDには攻略制限がかかっている上、真相の内容はだいたいわかり易い内容なので、
あまり真相に過剰な期待をせず、好きなキャラからプレイするのが一番楽しめるやり方だと思います。
自分は、由良城(山犬)→遠野(鬼)→日比谷(元人間)→式部(磯撫&死神)→和泉(妖狐)
→梨畑(ろくろ首/サブキャラ)→飛浦(天狗/サブキャラ)→式部真相ED→日比谷真相ED
…の順で攻略しました。
--------------------------------------------------------------
●内容について
--------------------------------------------------------------
王道のストーリーにいつものクインロゼのキャラクター。
なかなか面白かったです。
(ハートの国のアリス時代に比べて大分毒気が抜けていますが)
各キャラクターに真相の片鱗がちりばめられているのは
ハートの国のアリスと同じですが、真相の内容はほどほどに
隠されているものの内容はやや明らかで、1キャラ攻略した時点で
大体、内容に察しがつくようになっています。
どのキャラをたどっても大体使い回しのシチュエーションの連続で
いわゆる金太郎飴な構成で大変残念な出来だった
前作「12時の鐘とシンデレラ」ですが、本作「逢魔時~怪談ロマンス~」では
多少内容がかぶるところはあるものの、重複表現がほとんど気にならない
とても自然な流れの構成になっていて楽しめました。
しかし、テーマや世界観を徹底的に描き込むこのメーカーの作風は
前作から大分、方針変更されたようで、ハートの国のアリスシリーズのような
独特でぶっとんでいる描写の面白さが目当ての人は、本作でも
やや食い足りないことになりそうです。
妖怪や学園設定、神隠しといったテーマは一般的な乙女ゲーム程度の
やや軽めの描写で、ほどほどに独特な世界観と共通ストーリー、
そしてちょっと独特のキャラクター性で売り出すようになったようですね。
一般的な乙女ゲーに比べてややボリューム多めで、量的にも適度に楽しめたのですが、
やはり昔のアクの強さのファンとしては、ちょっと最近の傾向は残念です。
--------------------------------------------------------------
●各キャラクターについて
--------------------------------------------------------------
・式部 密
磯撫と死神の系列の妖怪。主人公の親友で、
ヘラヘラした態度のひたむきなヤンデレ。
一般的なヤンデレ…いわゆる暴力系・束縛系・監禁系とは
ちょっと方向性の違ったタイプのキャラで、ヤンデレなのに
(主人公限定で)友人としてとても面倒見がよく、
選択肢による主人公の行動に対しての反応も面白いので
何だかんだで見ていて飽きないキャラでした。
よくも悪くも妖怪らしい妖怪で、主人公との仲の良いやりとりの中にも
その本性が見え隠れしていて、割とハラハラしました。
そのペースが、個別EDも真相EDもぶれずに一貫していたのが良かったと思います。
ネタバレのため詳しくを明かせませんが、主人公との意識の差が胸をうつロマンスでした。
多分、一番(危険という意味でも)目の離せないキャラNo.1はこの密だと思います(苦笑)。
--------------------------------------------------------------
・日比谷 京極
規律を破った者を片っ端から制裁してまわる、やや過激な風紀委員長。
元人間。
兄属性成分かなり多めの先輩で、ユリウス(「ハートの国のアリス」のキャラクター)と
同じストイックな考え方の説教くどくど系ですが、
規則以外に関しては割と柔軟で、またフォローがとてもうまく、
その懐の広さゆえに、兄属性持ちの人にはたまらないキャラだと思いました。
時々、極端な判断でひどく暴走するのに、前述のようにフォロー上手という一面もあり、
振り回し振り回される先輩-後輩の恋愛ストーリーがとても面白かったです。
個別ルートのストーリーは、妖怪になってまだ日が浅い元人間だけあり、
式部とは対照的な内容です。式部とセットで魅力がさらに増すキャラクターだと思います。
京極と主人公の反応に一喜一憂し、人間味あふれるシナリオで、
プレイ中は終始わくわくしていました。
このキャラクターに出会えてよかったです。
--------------------------------------------------------------
・和泉 零次
やや天邪鬼の妖狐。素直になれない後輩。
人を馬鹿にするのが大好きな天狗ほどにはひねくれておらず、
けれど境遇上、素直になることもできない性格。
最初はどうとも思っていなかったのですが、プレイする度に
それまで見えなかったかわいい面がたくさん出てきて、
最終的には悶え転がる程になってしまいました。
じわじわくるギャップがとても美味しいキャラクターです。
主人公よりも年下、という設定でこそ生きるシチュエーションも
たくさんあり、ひたすらナデナデしたくなるようなキャラでした。
もう少し妖狐らしさが生きる設定も欲しかったですが、ところどころで見せる
かわいらしさによるキャラクター萌えは十分だったので満足でした。
--------------------------------------------------------------
・遠野 篤郎
鬼に連なる系統の妖怪。
えーと、なんというか、豪胆で古風な正統派の伊達男ですね(大笑)。
もう見たまんまの性格とストーリーですが、ここまでとことん
やってくれた(色事的な意味でも)乙女ゲーもあまりなかったと思うので、
ストーリー的には定番の内容なのに逆に新鮮でした。
主人公とは喧嘩友達?ですが、お互いをよく知ってるだけあり
それが些細な出来事をきっかけに、あれよあれよとあらぬ方向に転んでいく様が
面白かったです。
でもやはりこういう風に関係が変化してしまったら
主人公が戸惑ってもしょうがないなあ、と思いました。
クインロゼさんは、こういう漢らしい漢を描くのが得意ですね。
とても楽しめたのですが、やはり鬼という設定があまり
ストーリーに生きていなかったのが少し残念でした。
--------------------------------------------------------------
・由良城 閨悟
モフモフのわんわん。…じゃなくて山犬の妖怪。
常にしっぽ振ってるのが見えそうなわかりやすく
素直な割とまともなキャラクターでした。
えーと肝心のストーリーは…わんこ(汗)?
とにかく、終始いろんな意味で犬がメインのお話だったという記憶しか…。
ああでも、温泉のシーンではやはりかわいかったです。
…わんこが。
個人的にはモフモフする関係で終わっちゃう
友情EDが欲しかったのですがダメですか。
割と見所も多かったのですが、大体がモフモフの記憶に
塗りつぶされていて覚えていません。
ああでも、時々ズバッと腹黒いところかいいスパイスになっていたと思います。
とにかくワンワンしたい人にオススメのお話です。
定番ながら、山犬の閨悟でモフモフしたくなるような
心温まる(?)ストーリーでした。
--------------------------------------------------------------
・真相ED
式部密と日比谷京極に各1つ存在。
式部→京極の順に見ると無理なく楽しめます。
明らかになる真実は、どちらも切ないものです。
どちらも逢魔時に起こった物語。密の真相EDは、これもひとつの結末。
そして、京極の真相EDは、最後のCGが印象的でした。
定番のストーリー。予測はついていたものの、
主人公や京極らその他のそれぞれの境遇とポジション、
神隠しというテーマをうまく使った内容で、よくまとまっていたと思います。
本作「逢魔時~怪談ロマンス~」が自分にとって、
ただ単に恋愛して終わり、で完結しない、良い作品だったと
いえるのはこのEDがあったからだといえます。
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●総評
--------------------------------------------------------------
のちのちにも記憶が残る名作という程ではないけれど、
乙女ゲーとしては十分な良作でした。
主人公が泳ぎが苦手な理由等、大体察しはつくのですが
ゲーム中で明らかにされない設定もなきにしもあらずでしたが、
プレイする度にあっという間に過ぎる時間はとても楽しいものでした。
クインロゼというメーカー特有の内容の濃さが
おとなしくなってしまったのは残念ですが、
コンスタントにゲームを発売してくれるのが嬉しいのも事実なので、
できれば今後もこの調子を保ってくれればなと思います。
あと、やたら露骨な色事の描写と、キスシーンの絵が
あまりに直接的すぎて色気が無いのを、どうにかしてくれればなと(苦笑)。
(イベントスチルで重要なのは、行為そのものではなく、
そのシーンの甘い雰囲気が絵に描き出されてるかどうか、なので。
クインロゼのキスシーンのCGは、行為を描き出すばかりで、
絵にムードが不十分だから情緒が感じられず、印象に残らないんですよね。
バランスの悪い色事の描写も、ストーリーを盛り上げるどころか
出てくる度に、うっかりこっちのプレイの手を止めさせてしまうので、
もう少し程度をわきまえて欲しいと思いました。)
--------------------------------------------------------------
久々のレビューで、随分と落ち着かない文章になってしまいました。
ではでは、ここまで読んで下さり、ありがとうございました!
赤見直樹でした。
P.S.
●京極真相EDに対する、激烈に個人的な意見
(ものごっついネタバレな上適当な意見なので反転)
定番のお別れEDでしたね。
でもこれこそ、異種族の恋愛という感じで切なくて良かったです。
逢魔時にさらわれたことから始まり、逢魔時に終わった物語として
胸にしみました。
あくまでも妖怪の密と、あくまでも人間の京極、
そしてもう取り戻せない過去を持つ主人公の
3キャラのテイストがあってこその結末であり、
その内容自体は王道ではあるものの、「帰る者」と「帰れない者」、
そしてその発端となった妖という、
それぞれの立場がいい感じにあわさった秀作だったと思います。
個人的には、くっついて終わりというEDはお腹いっぱいだったので、
こういう好き同士だからこそありえる結末、というものは
久々に「良かった」としみじみ感動できるものでした。
…京極真相ED後についての個人的な解釈…
妖怪である主人公を人間の世界に帰った京極が見るためには
強力な霊力が必要なわけですが、それは主人公にすでに奪われています。
しかし、京極の弟である巳継は、ED後も変わらず「見える人」なわけです。
私はオカルト話(心霊・超常現象・都市伝説・異性物etc)が好きで
ここ10年ほどずっとネットで読んでいるのですが、
どうやら人間の霊感は、周囲の環境に影響されて変化することが多々あるようで、
(霊感が強い人間のそばにいたらいつの間にか見えるようになっていた等。
おそらくは、霊感のある人間に引き寄せられてきた霊を知らず察知する
本能が鍛えられて、見えるようになるのでしょう)
もともと人間の頃からそれが強かった京極のこと。いったん奪われたとしても、
彼の頑張り次第では、主人公との再会のチャンスはありえるんじゃないかなと思いました。
(そう考えると、京極真相EDの最後の京極の笑顔のCGは未来への希望とともとれる?)
主人公の血縁者でもない京極の存在を、密が危惧していた理由についてですが、
密は死神としてこの世のあの世の境目、すなわち彼岸における死者と生者のやりとりを
目の当たりにできる存在です。
そして、古代から現代に至るまで黄泉帰りの物語はこの国にありふれています。
おそらく密は、それまでの人(?)生において、人の縁と思いの強さが起こす奇跡を知り得ており、
その中には、天狗の飛浦が京極真相EDにて主人公に伝えた方法以外で
人間に戻る方法を知っていたのではと思いました。
(オカルト話では、神隠しにあった人間が何十年も経ってから帰ってくる話は
定番として存在しますので、ライターがそれを知らないはずもないかな、と。
また、主人公はあちら側に攫われましたが、その時に肉体が死んだわけではないので
帰還は不可能ではないはずです)
(また、やや下品で強引な解釈になりますが、
主人公が京極との子供を孕んでいた場合、赤子は京極の血縁なので、
出産前であれば飛浦の呪術を用いて、京極の血により、
母体ごと主人公を人間界に戻すことが可能になるのでは?と思いました)
個人的には、京極EDでいろいろはっちゃけてくれる京極さんのこと。
元には戻れなくても、もう一度再会して話すぐらいはできればなぁと思いました。
…まあ、京極のことだから、霊力を鍛え上げて、
今度は別の妖に攫われてくる、もしくは自ら妖怪化して
乗り込んでくるという可能性もなくはないでしょう。
たわごとに等しい、オカルトマニアのわがままな主張を読んでくださり、
ありがとうございました。
では、また機会が合うころにお会いできればと思います。
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ブログは基本的に重要告知か、長文を書きたい時に利用するので
割とこの1年はツイッターで毎日元気にしておりました。
不在の時には、ツイッターをお訪ね下さい。
本年もよろしくお願いいたします。
そういうわけで、久々にゲームレビューです。
今回は、前々から注目していたメーカー:クインロゼの新作
乙女向けゲーム「逢魔時~怪談ロマンス~」です。
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●ストーリー
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舞台は、人間世界と妖怪世界の境にある高校。
昼間は人間達が学生生活を送っているが、逢魔時を境に妖怪達の学校に切り替わる。
そのことに、人間は気づいていない……。
主人公は、磯姫の血を引く妖怪。
成績はいいが、強い妖力をもてあましている問題児。
力を発散しなくてはいけないため、悪友と組んで
人のみならず妖怪相手にも悪戯を仕掛けている。
楽しいことが好きで、退屈は嫌い。
妖怪の持つ性質に違和感を持ちながらも、
永遠にも思える、変わらない日常を過ごしていた主人公。
同じ高校に通う相手との恋が、その日常を変えていく――。
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●全般
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いわゆる一般的な恋愛ADVです。すっかりクインロゼもこの形式におちつきましたね。
主人公が妖怪で、テーマが学園もの。そして付随テーマが神隠し。
謎を孕んだデモムービーの内容に違わず、特定の攻略対象には真相EDが用意されており、
主人公と彼らの隠れた過去がわかるようになっています。
真相EDが用意されているのは、式部密(磯撫&死神)と日比谷京極(元人間)ですが、
それらには真相ED以外のEDを見ないと辿り着けない形式になっています。
Amazonでは、この2人は攻略を最後にまわした方がいいというレビューがありますが、
真相EDには攻略制限がかかっている上、真相の内容はだいたいわかり易い内容なので、
あまり真相に過剰な期待をせず、好きなキャラからプレイするのが一番楽しめるやり方だと思います。
自分は、由良城(山犬)→遠野(鬼)→日比谷(元人間)→式部(磯撫&死神)→和泉(妖狐)
→梨畑(ろくろ首/サブキャラ)→飛浦(天狗/サブキャラ)→式部真相ED→日比谷真相ED
…の順で攻略しました。
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●内容について
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王道のストーリーにいつものクインロゼのキャラクター。
なかなか面白かったです。
(ハートの国のアリス時代に比べて大分毒気が抜けていますが)
各キャラクターに真相の片鱗がちりばめられているのは
ハートの国のアリスと同じですが、真相の内容はほどほどに
隠されているものの内容はやや明らかで、1キャラ攻略した時点で
大体、内容に察しがつくようになっています。
どのキャラをたどっても大体使い回しのシチュエーションの連続で
いわゆる金太郎飴な構成で大変残念な出来だった
前作「12時の鐘とシンデレラ」ですが、本作「逢魔時~怪談ロマンス~」では
多少内容がかぶるところはあるものの、重複表現がほとんど気にならない
とても自然な流れの構成になっていて楽しめました。
しかし、テーマや世界観を徹底的に描き込むこのメーカーの作風は
前作から大分、方針変更されたようで、ハートの国のアリスシリーズのような
独特でぶっとんでいる描写の面白さが目当ての人は、本作でも
やや食い足りないことになりそうです。
妖怪や学園設定、神隠しといったテーマは一般的な乙女ゲーム程度の
やや軽めの描写で、ほどほどに独特な世界観と共通ストーリー、
そしてちょっと独特のキャラクター性で売り出すようになったようですね。
一般的な乙女ゲーに比べてややボリューム多めで、量的にも適度に楽しめたのですが、
やはり昔のアクの強さのファンとしては、ちょっと最近の傾向は残念です。
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●各キャラクターについて
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・式部 密
磯撫と死神の系列の妖怪。主人公の親友で、
ヘラヘラした態度のひたむきなヤンデレ。
一般的なヤンデレ…いわゆる暴力系・束縛系・監禁系とは
ちょっと方向性の違ったタイプのキャラで、ヤンデレなのに
(主人公限定で)友人としてとても面倒見がよく、
選択肢による主人公の行動に対しての反応も面白いので
何だかんだで見ていて飽きないキャラでした。
よくも悪くも妖怪らしい妖怪で、主人公との仲の良いやりとりの中にも
その本性が見え隠れしていて、割とハラハラしました。
そのペースが、個別EDも真相EDもぶれずに一貫していたのが良かったと思います。
ネタバレのため詳しくを明かせませんが、主人公との意識の差が胸をうつロマンスでした。
多分、一番(危険という意味でも)目の離せないキャラNo.1はこの密だと思います(苦笑)。
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・日比谷 京極
規律を破った者を片っ端から制裁してまわる、やや過激な風紀委員長。
元人間。
兄属性成分かなり多めの先輩で、ユリウス(「ハートの国のアリス」のキャラクター)と
同じストイックな考え方の説教くどくど系ですが、
規則以外に関しては割と柔軟で、またフォローがとてもうまく、
その懐の広さゆえに、兄属性持ちの人にはたまらないキャラだと思いました。
時々、極端な判断でひどく暴走するのに、前述のようにフォロー上手という一面もあり、
振り回し振り回される先輩-後輩の恋愛ストーリーがとても面白かったです。
個別ルートのストーリーは、妖怪になってまだ日が浅い元人間だけあり、
式部とは対照的な内容です。式部とセットで魅力がさらに増すキャラクターだと思います。
京極と主人公の反応に一喜一憂し、人間味あふれるシナリオで、
プレイ中は終始わくわくしていました。
このキャラクターに出会えてよかったです。
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・和泉 零次
やや天邪鬼の妖狐。素直になれない後輩。
人を馬鹿にするのが大好きな天狗ほどにはひねくれておらず、
けれど境遇上、素直になることもできない性格。
最初はどうとも思っていなかったのですが、プレイする度に
それまで見えなかったかわいい面がたくさん出てきて、
最終的には悶え転がる程になってしまいました。
じわじわくるギャップがとても美味しいキャラクターです。
主人公よりも年下、という設定でこそ生きるシチュエーションも
たくさんあり、ひたすらナデナデしたくなるようなキャラでした。
もう少し妖狐らしさが生きる設定も欲しかったですが、ところどころで見せる
かわいらしさによるキャラクター萌えは十分だったので満足でした。
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・遠野 篤郎
鬼に連なる系統の妖怪。
えーと、なんというか、豪胆で古風な正統派の伊達男ですね(大笑)。
もう見たまんまの性格とストーリーですが、ここまでとことん
やってくれた(色事的な意味でも)乙女ゲーもあまりなかったと思うので、
ストーリー的には定番の内容なのに逆に新鮮でした。
主人公とは喧嘩友達?ですが、お互いをよく知ってるだけあり
それが些細な出来事をきっかけに、あれよあれよとあらぬ方向に転んでいく様が
面白かったです。
でもやはりこういう風に関係が変化してしまったら
主人公が戸惑ってもしょうがないなあ、と思いました。
クインロゼさんは、こういう漢らしい漢を描くのが得意ですね。
とても楽しめたのですが、やはり鬼という設定があまり
ストーリーに生きていなかったのが少し残念でした。
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・由良城 閨悟
モフモフのわんわん。…じゃなくて山犬の妖怪。
常にしっぽ振ってるのが見えそうなわかりやすく
素直な割とまともなキャラクターでした。
えーと肝心のストーリーは…わんこ(汗)?
とにかく、終始いろんな意味で犬がメインのお話だったという記憶しか…。
ああでも、温泉のシーンではやはりかわいかったです。
…わんこが。
個人的にはモフモフする関係で終わっちゃう
友情EDが欲しかったのですがダメですか。
割と見所も多かったのですが、大体がモフモフの記憶に
塗りつぶされていて覚えていません。
ああでも、時々ズバッと腹黒いところかいいスパイスになっていたと思います。
とにかくワンワンしたい人にオススメのお話です。
定番ながら、山犬の閨悟でモフモフしたくなるような
心温まる(?)ストーリーでした。
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・真相ED
式部密と日比谷京極に各1つ存在。
式部→京極の順に見ると無理なく楽しめます。
明らかになる真実は、どちらも切ないものです。
どちらも逢魔時に起こった物語。密の真相EDは、これもひとつの結末。
そして、京極の真相EDは、最後のCGが印象的でした。
定番のストーリー。予測はついていたものの、
主人公や京極らその他のそれぞれの境遇とポジション、
神隠しというテーマをうまく使った内容で、よくまとまっていたと思います。
本作「逢魔時~怪談ロマンス~」が自分にとって、
ただ単に恋愛して終わり、で完結しない、良い作品だったと
いえるのはこのEDがあったからだといえます。
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●総評
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のちのちにも記憶が残る名作という程ではないけれど、
乙女ゲーとしては十分な良作でした。
主人公が泳ぎが苦手な理由等、大体察しはつくのですが
ゲーム中で明らかにされない設定もなきにしもあらずでしたが、
プレイする度にあっという間に過ぎる時間はとても楽しいものでした。
クインロゼというメーカー特有の内容の濃さが
おとなしくなってしまったのは残念ですが、
コンスタントにゲームを発売してくれるのが嬉しいのも事実なので、
できれば今後もこの調子を保ってくれればなと思います。
あと、やたら露骨な色事の描写と、キスシーンの絵が
あまりに直接的すぎて色気が無いのを、どうにかしてくれればなと(苦笑)。
(イベントスチルで重要なのは、行為そのものではなく、
そのシーンの甘い雰囲気が絵に描き出されてるかどうか、なので。
クインロゼのキスシーンのCGは、行為を描き出すばかりで、
絵にムードが不十分だから情緒が感じられず、印象に残らないんですよね。
バランスの悪い色事の描写も、ストーリーを盛り上げるどころか
出てくる度に、うっかりこっちのプレイの手を止めさせてしまうので、
もう少し程度をわきまえて欲しいと思いました。)
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久々のレビューで、随分と落ち着かない文章になってしまいました。
ではでは、ここまで読んで下さり、ありがとうございました!
赤見直樹でした。
P.S.
●京極真相EDに対する、激烈に個人的な意見
(ものごっついネタバレな上適当な意見なので反転)
定番のお別れEDでしたね。
でもこれこそ、異種族の恋愛という感じで切なくて良かったです。
逢魔時にさらわれたことから始まり、逢魔時に終わった物語として
胸にしみました。
あくまでも妖怪の密と、あくまでも人間の京極、
そしてもう取り戻せない過去を持つ主人公の
3キャラのテイストがあってこその結末であり、
その内容自体は王道ではあるものの、「帰る者」と「帰れない者」、
そしてその発端となった妖という、
それぞれの立場がいい感じにあわさった秀作だったと思います。
個人的には、くっついて終わりというEDはお腹いっぱいだったので、
こういう好き同士だからこそありえる結末、というものは
久々に「良かった」としみじみ感動できるものでした。
…京極真相ED後についての個人的な解釈…
妖怪である主人公を人間の世界に帰った京極が見るためには
強力な霊力が必要なわけですが、それは主人公にすでに奪われています。
しかし、京極の弟である巳継は、ED後も変わらず「見える人」なわけです。
私はオカルト話(心霊・超常現象・都市伝説・異性物etc)が好きで
ここ10年ほどずっとネットで読んでいるのですが、
どうやら人間の霊感は、周囲の環境に影響されて変化することが多々あるようで、
(霊感が強い人間のそばにいたらいつの間にか見えるようになっていた等。
おそらくは、霊感のある人間に引き寄せられてきた霊を知らず察知する
本能が鍛えられて、見えるようになるのでしょう)
もともと人間の頃からそれが強かった京極のこと。いったん奪われたとしても、
彼の頑張り次第では、主人公との再会のチャンスはありえるんじゃないかなと思いました。
(そう考えると、京極真相EDの最後の京極の笑顔のCGは未来への希望とともとれる?)
主人公の血縁者でもない京極の存在を、密が危惧していた理由についてですが、
密は死神としてこの世のあの世の境目、すなわち彼岸における死者と生者のやりとりを
目の当たりにできる存在です。
そして、古代から現代に至るまで黄泉帰りの物語はこの国にありふれています。
おそらく密は、それまでの人(?)生において、人の縁と思いの強さが起こす奇跡を知り得ており、
その中には、天狗の飛浦が京極真相EDにて主人公に伝えた方法以外で
人間に戻る方法を知っていたのではと思いました。
(オカルト話では、神隠しにあった人間が何十年も経ってから帰ってくる話は
定番として存在しますので、ライターがそれを知らないはずもないかな、と。
また、主人公はあちら側に攫われましたが、その時に肉体が死んだわけではないので
帰還は不可能ではないはずです)
(また、やや下品で強引な解釈になりますが、
主人公が京極との子供を孕んでいた場合、赤子は京極の血縁なので、
出産前であれば飛浦の呪術を用いて、京極の血により、
母体ごと主人公を人間界に戻すことが可能になるのでは?と思いました)
個人的には、京極EDでいろいろはっちゃけてくれる京極さんのこと。
元には戻れなくても、もう一度再会して話すぐらいはできればなぁと思いました。
…まあ、京極のことだから、霊力を鍛え上げて、
今度は別の妖に攫われてくる、もしくは自ら妖怪化して
乗り込んでくるという可能性もなくはないでしょう。
たわごとに等しい、オカルトマニアのわがままな主張を読んでくださり、
ありがとうございました。
では、また機会が合うころにお会いできればと思います。
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