読書の森

追いかけられて



ミヤは現在フリーのライターをしている。
と言えば聞こえはいいが、最近大手出版社をクビになり、一応ライターの肩書きを人前で出してるだけ、全く収入が無い。

クビになったのは、生来の短気が原因である。
同僚の陰湿なイジメ(と彼女は思い、同僚は冗談だと言っている)にむかっ腹を立てた。
それだけでない、来客の目の前で同僚に掴みかかったのである。

辞表を出しても誰も引き止めなかった。
ミヤは自分の抑制の無さを、しみじみ
後悔する。穏やかでいたいのに、ひどくイラつき易い女になってしまった。



あれは、父が仕事に失敗して、ミヤの肩に一家の生活がかかってきた時からだ。
大学生の弟は能天気だし、両親はベッタリとミヤにまとわりつく。

振り払う訳にはいかず、心労の多いミヤは恋人の小澤に愚痴をこぼした。
甘いデートの雰囲気に酔うより、小澤に生活の指針を立てて貰いたかった。

小澤は実務能力に優れていたし、いつも頼りになる答えを出してくれたから。

ベッドの中でミヤは無心に甘える女を演じていた。
内心プロポーズの言葉ばかり待っていたのだ。
早く楽になりたい。
小澤の庇護の下で働きたい。


ある日小澤は言った。
「悪いけどもう会うのやめよう。僕は君の家族とは関係ないんだ。おんぶされるのは迷惑なんだよ」
うんざりした表情が覗いていた。

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