学生時代、
「毎晩お話を作ってそれで安心して眠れるの」
と漏らした事がある。
それを聞いた後輩の男の子
「嫌らしいな!嫌らしいな!」
と囃し立てた。
一瞬何が嫌らしいのか分からなかったが、次の瞬間
「そっちの方が嫌らしいよ!」
と怒りかけて言葉を飲み込んだ。
その後輩はいかにも頑丈そうで、口も悪く、勝ち目が無かったからである。
当時の私の頭の中で作ってる物語とは、かなり安易で子供っぽいロマンスだった。
現実では恋しい人(しょっ中いるのですが)の本心が見えず悩んでいた。
つまり、空想の中でハッピーエンドの想定をして、それで安心して眠っていたのである。
下地になったのは何とグリム童話やアンデルセン童話だった。
それも残酷なのは一切避けている。
淡い夢の様なトーンに彩った物語は癒しになった。
このお話作りの習慣は極々短い期間で終わった。
確かに、嫌らしい後輩の言った様に、年頃らしい妄想に捕らわれた。
そこで、週刊誌を読みながら別の夢想を始めてしまった(o^^o)
私は昔から本と名のつくものが好きだった。
小さな時から童話を読んでいた。
それを知って、大学生の従兄がお古の文庫本をくれた。
かなりの量だった。
小学生にも向く様に、童話全集である。
岩波文庫のグリム童話全何冊かとアンデルセン童話全何冊か。
欣喜雀躍とはその時の私の事である。
この貴重な本を読む時間を夜明けと決めた。
静かで誰にも邪魔されないからである。
寝転んで、暗い灯りの中で、物語の世界に浸った。
岩波文庫の文字は細かく漢字にはルビが振ってある。
お陰で学校での漢字の読みのテストは常に満点が取れた!
しかも、近眼というおまけ付きだった。
こんな経歴を語る割には、自分の創作は冴えないと我ながら思う。
メルヘンチックなものも、ドロドロの人間関係なものも、関係がない様である。
様々な小説との出会い以上に、実体験の複雑奇妙さが、全然別な物語を求めさせてる。
ただただ、新人賞募集の文句じゃないけれど面白い小説が書きたいと思う。
人に「これは面白い」と思ってもらえる小説である。
多分これが「生きたい」と思い続ける最大の理由なのだろう。
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