読書の森

幻の味



暑い夏、料理はなるべく火を使わず簡単に仕上げたいと思う。
手軽で簡単と言えば、インスタント麺が浮かぶけど防腐剤など添加物が身体に良くない気がして、私はこの頃殆ど食べていない。
ただ、生まれてからこの方一番美味しかったラーメンと言えば、昔、友人の作ったインスタントラーメンなのだ。

大学生時代のことだから(昭和40年代)、まだカップ麺がない頃、学生はお鍋に湯を沸かしインスタント麺とスープを入れてお腹の足しにした。
友達の下宿に仲間が集まり、小腹がすいた時に、理系男子が作ってくれたのがこの私史上最高のラーメンである。

彼はいかにも秀才という感じ、繊細かつ緻密で、お湯の沸き加減を正確に捉えて、お湯の量はきっちり測る。
一番適温の時に麺を上手にほぐし、スープの素が均等に亘るように、丁寧に箸をまわした。
出来上がったラーメンの味に皆はっとしたようである。
同じキチンラーメンが全く別の味に思えた。

火加減、材料の割合の微妙な塩梅は大ざっばより緻密にした方が美味しいのではないか?

学生時代の幻のラーメンの味だ。



さて、それより時代が遡って中学時代はお弁当だった。
母は彩りよい綺麗なお弁当を作ってくれたが、どうも他人の弁当が魅力的に思えた。
というのは、隣の席の友人のお弁当はダイナミックな量で、新鮮に感じたからである。

その友人の両親は店を経営していて、あれこれ手をかけたお弁当が作れない。
そのため、おかずは単品だが、主食が半端でない。
新ジャガを丸のまま蒸かして塩をふり、アルミホイルで包んだのや、おにぎりを海苔で何重にも巻いたものがゴロゴロ大きなお弁当箱入っていた。
私はいつもお裾分けしてもらったが、そのおにぎりの美味しさは忘れられない。

それは釜で炊いた御飯の美味しさであり、御飯に染みた海苔の絶妙な味である。
海苔が不足し、美味しい昔ながらの海苔は入手しづらい。
真っ黒な艶のあるあのおにぎりの海苔の味はもう幻なのかもしれない。



私の料理は、テキストを手本にごちゃごちゃ手の込んだものを作り勝ちである。
それも大ざっばなので、出来上がりは今一である。

母も料理テキストで覚えたらしく、それをいろいろ工夫して作ってくれた。
その中で一番好きなのが、ロールキャベツミルクスープである。

ロールキャベツをミルク味の甘く味付けたスープで煮込むというお子様向けのもので、ひき肉を包んだキャベツは干瓢で結んである。
干瓢もキャベツ巻きもとろける様に美味しかった(ひょっとしたらエバミルクを入れたのかも知れない)

自分でも寒い冬など時々作るが、あの母のとろける味は再現できない。
幻の母の味である。

追記:
夏バテせぬよう、美味しいもの食べて夏を乗り切りたいですね。
それも、素材を簡単にしゃしゃっと作りたいのですが。
あまり頑張らないで、ともかくきちんと食べるのが大切!

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