本年も残すところあと僅か。40代も後半になり、歳のせいか1年があっという間です。
さてさて、特許異議申立制度については、7月4日にアップしたブログ記事で、一応検討してまとめてありました。
詳細早くーーーー!と思っていたところ、今般、特許異議の申立て制度の運用(案)なるものが、特許庁にやっとこさっとこアップされましたね。
そこで、運用(案)を踏まえて、検討したことを記事にします。2点だけですが(汗
【1】決定予告の運用決定と、それに伴う実務上の話
決定予告については、改正法において規定されていないので、どうなるのかな?
おそらくは二度目の取消理由通知で対応するんだろうな、という予想でした。
今般アップされた運用(案)をみると、やはりそうなっていましたね。
特に当時気にしていたのは、「特許権者に与えられる反論機会はどれほどか?」という点でした。
これについて、運用(案)には以下の記載があります。
(A)『取消理由通知(決定の予告)
取消決定を行う前には、取消理由通知(決定の予告)を行い、特許権者に訂正の機会を与える。
【運用方針】
無効審判においては、特許庁と裁判所との間の「キャッチボール現象」を防止するため、平成23 年法改正により、「審決の予告」を行って訂正の機会を与えると共に、審決取消訴訟係属中の訂正審判の請求を禁止している。特許異議の申立てにおいても、同様の理由で取消決定取消訴訟係属中の訂正審判の請求を禁止している(特§126②)ため、取消理由の通知後に特許異議申立事件が決定をするのに熟した場合において、特許を取り消すべき旨の判断となったときは、「決定の予告」である旨が明示された「取消理由通知(決定の予告)」を行って訂正の機会を与えることとする。
応答の指定期間は、標準60日(在外者90日)とする。
以下の場合には、取消理由通知(決定の予告)を行わないこととする。
・取消理由通知に対する応答がない(意見書の提出又は訂正の請求がない)場合
・決定の予告を希望しない旨の特許権者の申出がある場合』
(B)『取消決定においては、取消理由通知(決定の予告の取消理由通知を行ったときは当該取消理由通知)に記載された理由のうち、その根拠となる全ての取消理由を記載する。取消理由通知(決定の予告の取消理由通知を行ったときは当該取消理由通知)に記載されなかった理由は採用できない。』
上記(A)によれば、1回目の取消理由通知があった場合に「訂正請求」を行わなくても、「意見書さえ提出していれば」2回目の取消理由通知(決定の予告)において訂正の機会が保障される運用になっています。
したがって、進歩性が微妙であるなど取り消されるかどうか微妙な場合、1回目はチャレンジとして訂正を行わずに意見書勝負、2回目は妥協して訂正して安全策にでる、という対応をとれるということですね。
上記(B)によれば、独立特許要件違反であるとして、これまで提示されなかった理由によって突如としてバサッと取消決定されることがない安心感がありますね。
一方で、1回目は訂正せず、2回目(決定予告付記の取消理由通知)に訂正したような場合、決定予告付記の取消理由通知の対応後、更に取消理由通知(再度の決定予告)を行わなければいけない場面が生じます。
例えば、1回目に取消理由をクリアできず、2回目に取消理由をクリアしたけど新たな取消理由を生じさせたような場合には、3回目の取消理由通知がやってくることになります。
無限ループのおそれがなくはないですが、実際それほど問題にはならないでしょうね。そんなに弾をもっている特許なら強いともいえます。
以上のとおり、特許権者としては、訂正なし又は少しの訂正でのチャレンジ機会をもつことができ、最低限2回、場合によっては3回以上の機会をもつことができるわけですから、無効審判制度と比べて不利になることがない(最初の取消理由通知から既に審判合議体の判断を踏まえた対応である(無効審判では合議体の判断が示されていない初回答弁書の段階で自衛的な対応が求められる)ことから、むしろ無効審判よりも特許権者には有利)ということになります。
めでたしめでたし。
【2】付与後情報提供との関係
付与後異議制度が無効審判制度に吸収されたときに、それとセットで付与後情報提供制度(特許法施行規則第13条の3)ができたわけですが、付与後異議制度が分離(復活)される今回、付与後情報提供制度はどうなるのでしょう?制度廃止でしょうか?という疑問があります。
情報提供制度は省令改正で対応できるため、必ずしも併存決定とはいえないなー。
などと考えていたところ、昨日、今般の法改正に伴う特許法施行規則等の一部を改正する省令案が、特許庁にアップされました。
これをみますと、付与後情報提供制度は、このまま存続し、付与後異議申立制度と併存するようです(あくまで意見募集段階の案ですが、特に大問題がなければ普通は変わりませんので決定でしょうね)。
うむ?
となると、新たな疑問が生じてしまうんですよね。
運用(案)には付与後情報提供制度との関係が何も説明されていないのです。
付与後情報提供制度と無効審判・訂正審判制度との関係については、「特許付与後の情報提供制度について」という特許庁ページにおいて、
『無効審判又は訂正審判が請求された際、情報提供の内容は、無効審判又は訂正審判の審判記録袋に出願記録とともに配付されますので、審判官が確認できるとともに、職権審理の対象とすることもできるため、より迅速・的確な審理が期待できます。』
とされていて、職権審理に役立てようという姿勢が表れています。
では、特許異議申立制度においても、職権審理がなされることになっていますが、提供された情報はどのように取り扱われるのでしょうか?
特許異議申立人に課されている証拠等の採用基準(時期的制限・内容的制限)に従って採否が決定されるのか?または無視されることがあるのか?
例えば、特許掲載公報発行後6月以内に取り消すべき証拠・理由が情報提供制度経由で提出された場合、訂正請求の内容に付随して生じる新たな取消理由を構築する証拠・理由が情報提供制度経由で提出された場合は(もちろん、誰か1名は特許異議申立てを行っている前提として)、合議体によって「ちゃんと」参酌されるのでしょうか?という疑問がありますね。
もし、「ちゃんと」参酌されるなら、特許異議申立人が1名いてくれれば、他の人は情報提供者(影武者)としてサポートすることもできなくはない。その方が印紙代がかからないとか、完全匿名が可能であるメリットとか、…色々考えてしまいますね。
この辺り、どうなんでしょうか?
意見募集中ということなので、忘れなければ(←ここが怪しい)意見だしてみようかなと思います。
※何か私が誤解しているようでしたら、間違っているよとご指摘くださいませm(..)m
本日は以上で。
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