春、桜が咲く頃になると、標高1,707メートルの吾妻小富士の山肌にうさぎの形をした雪形がくっきりと姿を現す。
別名「種まきうさぎ」として、農家の人達はこのうさぎを見ると春の訪れを知り、苗代に種をまき始めたと言われている。
吾妻の雪うさぎは、今では春を告げる福島のキャラクターももりん、として花見山と共に広く親しまれている。
4月27日(日)、20年ぶりに雪ウサギに逢いたくなり、冬季休業中の微湯温泉の登山口から訪ねてみた。
パイロット道路分岐から微温湯温泉までの道路は冬季閉鎖中だが。
人気の全く無い微温湯温泉の登山口に車をデポして身支度を整え出発!
根雪が解けたあとに真っ先に咲くショウジョウバカマに励まされ。
雑木林の登山路には、まだ根雪が残る。
ヒメコマツの尾根道は明るく何時来てもルンルン気分。
クマは越冬を終えると、穴の近くで大量のフンをする。
よく観察すると水気が少なく細かな木片がびっしり詰まっている。木の皮でも食べてたのだろうか。
登山路の雪渓には、今しがた走り去ったカモシカの足跡も。
雪根開き、斜面の雪が立ち木の根本から融け始め春の訪れを感じさせる。
落葉樹林からゴヨウマツの針葉樹林になると残雪で登山路は埋もれ、正面に小富士がその姿を現す。
吾妻小冨士の裾を右に回り込むと、雪形の雪うさぎがその姿を大きく現す。
シンボルの耳は短くなったが、目は大きく開き愛くるしい。 福島市のPRキャラクターの「ももりん」誕生日は平成8年4月。
雪うさぎもながく伸びると森林限界で、残雪も黄砂で黄色く染まる。
北斜面は冬の強烈な西風で雪が吹き飛ばされ登山路が現われている。
ラクダ尾根を展望する巨大な噴石でちょっといっぷく。
標高1500m付近で、スカイラインの道路に飛び出る。
車の多い道路を避け、雪渓を選んで浄土平へ。
噴煙が真っ直ぐ立ち上る無風の浄土平に到着。レストハウスでカツカレーを食べたかったが、時間切れで我慢。
福島市から桧原湖を経由してスカイラインを下る自転車ツーリングの男性としばし歓談。
吾妻小富士から望む浄土平駐車場はほぼ満車。
火口壁から見下ろす直径500mの噴火口は巨大で迫力満点。
小富士から見下ろす涅槃坂、正面がラクダ山。
山頂から望む左から東吾妻山、蓬莱山、一切経山。
小富士山頂の大岩から下山する東側の山麓を見下ろす。
砂礫の斜面を慎重に降りながら振り返ると頂の大岩が小さく見える。
小富士の傾斜は約30度、浮石も多いので落石に要注意!
斜面を半分ほど降りると、うさぎの耳の上部の雪渓に達する。
この斜面は中学3年の時から付き合っているが、気はゆるせない。右側のブッシュがうさぎの目に見える。
純白の雪渓も、砂塵で汚れグリセードで滑り降りた跡が白く残る。(注、滑落ではありません)
雪渓の下部はおびただしい落石に覆われ河原の様に。
麓の周回登山路の往路の足跡に無事合流。
そのまま、沢筋の雪渓を降れば最短距離と目論んで。
見事に微湯温泉への下山路に到達、小富士の雄姿ともお別れ。
雪解けの登山路には春を待ちかねたショウジョウバカマが。
鏡のように葉を輝かせて春を待つイワカガミ。
ついに登場!クマの足跡、大きさも新鮮さも一級品。音も出さず遭遇を避ける山の住人はさすがプロ。
傍らのコシアブラの大木には古い爪痕が鋭く残る。
雑木林の枯葉を押しのけカタクリが夕日を浴びて舞い踊る。
車のデポ点の登山口に無事到着。見渡すとフキノトウが辺り一面に。
橋の先は微温温泉、並木の桜が咲くと湯治客で賑わう。
半世紀前の想い出・・・中学3年の夏、級友4人で自転車をこぎ微湯温泉に遊びに来た。
そこから登山道を下駄履き姿で、開通したばかりのスカイラインまで登ることにした。
やがて吾妻小富士の裾から目前の小富士を仰ぎ、突如その斜面に取り付き悪戦苦闘の末、直登を果たした。
それから50年の間に10回余り、小富士の斜面を滑り降りたが、登ったのはその最初の1回目だけである。