■見出し(2013年05月24日) No2013-29
〇バングラデシュ、「繊維の次はIT」政府が始動
〇JCペニー、バングラデシュで工場の監視強化へ
〇バングラデシュ上陸のサイクロン、勢力弱まる
〇サイクロン「マハセン」、バングラデシュに上陸 2人死亡
〇サイクロン接近、ミャンマーとバングラデシュで数十万人が避難
〇焦点:製造原価は売価の1割、バングラ工場崩壊が映す現実
〇「ハルタル」を知らなければバングラは理解できない
過激化する“ストライキ”との付き合い方
■バングラデシュ、「繊維の次はIT」政府が始動
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130510/476048/?top_pu
(ITPro 2013年05月20日)
インドの隣国バングラデシュの首都ダッカ。道にはミシン1台を置いただけの机がずらり
と並ぶ。衣服の修繕屋たちの仕事場だ。客から依頼を受けると、その場でミシンを踏み
始める(写真1)。繊維大国であることを改めて思い知る光景だ。
バングラデシュにはスウェーデンのH&M(ヘネス・アンド・マウリッツ)や、「ユニク
ロ」を展開するファーストリテイリングといった世界のアパレルメーカーが生産拠点を
構える。同国における輸出額の約8割は衣料品が占めている。
そんなバングラデシュが「IT立国」への道を歩み始めていることは、日本ではあまり
知られていない。輸出額に占めるIT関連製品の割合は現時点では1%に満たないが、実は
バングラデシュにはオフショア委託先としての必要条件がそろっている。
人口は1億6000万人と多く、隣国インド同様に数学的思考に長けた人材が豊富だ。それ
でいて、IT人材の人件費は新卒初任給で見ると250~300ドル程度とインドの半分に近い。
<IT集積地の建設が相次ぐ>
同国政府もその潜在力を開花させるべく全力を挙げる。現在はアジア最貧国の一つだが、
独立50周年となる2021年までに中所得国になることを標榜するバングラデシュは「デジ
タル・バングラデシュ」のスローガンの下、IT産業を縫製業に次ぐ輸出産業に育てる方
針を掲げる(図1)。
その柱となるのが「IT集積地」の建設だ。海外からIT企業の投資を呼び込むことで経
済成長を促進すると同時に、IT関連分野の雇用を創出して人材育成につなげる政策であ
る。
既に政府主導で三つのプロジェクトが動き出している。一つめがダッカ中心部の案件
だ。「カウラン・バザール」地区に14階建てのビルを建設済みで、そこにソフト開発会
社を誘致する。
二つめはダッカの北40キロメートルに位置するカリアクールのハイテクパークだ。東
京ドーム20個分の土地にハードウエア関連の工場のほか、電機・医療・IT分野のハイテ
ク企業を集積させる。政府の入札に応じた国内3社とマレーシアの政府系企業がデベロッ
パーとして開発計画を立案中で、6カ月~1年後には着工し、2015年までの完成を目指し
ている。
三つめはダッカの南西、クルナ管区ジョショールのITパークである。既に4億8000万円
の政府予算を確保しており、1~2年後には着工したい考えだ。情報通信省管轄のバング
ラデシュハイテクパーク局で責任者を務めるアジズル・ラーマン マネージングディレク
ターは「他に3~4カ所のITパークを建設する用意がある」と明かす(写真2)。
いずれのパークでも、入居企業に対して10年間の免税期間を設け、輸出入にかかる関税
の優遇措置も予定する。これまで脆弱だった電気・ガスなどのライフラインや交通イン
フラも整備する。「日系企業にもぜひ進出してもらいたい」とラーマン マネージングデ
ィレクターは強調する。
<欧米が開拓を先行>
現時点でバングラデシュのIT産業規模は推定4億ドルと、ベトナムやフィリピンの1割
にも満たない。そのうち海外からのソフト開発受託は、1.5億~2億ドル程度にとどまる
とみられる。
この、海外からの受託規模について「5年後には10億ドル規模にしたい」と野心的な目
標を掲げるのが、300社以上のIT企業が加盟する同国最大規模のIT業界団体BASISのファ
ヒム・マシュロアプレジデントだ(写真3)。現在の5~6倍の規模だが、達成の可能性は
十分ある。「外資系企業がバングラデシュのオフショア開発に本腰を入れ始めたのは20
10年ごろから」(現地進出コンサルティング会社バングラ・ビジネス・パートナーズ・
ジャパンの岡崎透社長)とまだ日は浅く、成長の余地が十分に残されているからだ。
同国のオフショア事業は欧米向けが先行している。米国向けが全体の約50%を占め、英
国向けとデンマーク向けがそれぞれ10%で続く。
バングラデシュは英連邦加盟国であり、英国とのつながりは深い。デンマークは政府
がバングラデシュ向け施策に力を入れており、現地企業とのジョイントベンチャーを15
社ほど設立しているという。
日本向けのオフショア開発が占める割合は全体の5%程度で、米英デンマークに続く4
番手にとどまっているのが現状だ。
<「客より先に帰るのを遠慮」>
欧米企業を惹きつけるバングラデシュのIT産業の魅力は、人件費だけではない。
バングラデシュにソフト開発拠点を持つ日本のIT企業、BJITの林信宏取締役会長は、
「客先に常駐している当社のバングラデシュ人技術者の中には、顧客より先に帰ること
を遠慮する者が多い」と協調性の高さを口にする。
「顧客や上司を尊重する性格の持ち主が多く親日的。委託先からみても仕事を任せや
すいはずだ」と、BASISのマシュロアプレジデントも強調する。この点が「マイペース」
と指摘されることが多いインド人とは異なるという。
スキルの高さも売り物だ。人件費の水準はミャンマーと比べると若干高いものの、「
スキルレベルはバングラデシュの方が総じて上だ」と、ダッカ工科大学のナシム・アク
ター コンピュータサイエンス&エンジニアリング学部長は主張する。
理由の一つとして、ソフト開発技術者が競争率の高い大学入試を突破してきた選りす
ぐりの人材であることを挙げる。IT系の職種は高給なために銀行員と並んで人気が高い。
ダッカ工科大学の入学試験の倍率は50倍に上る。バングラデシュに5カ所ある国立工科大
学は全て学費が無料だ。
こうした環境で育った優秀なIT人材の争奪戦が世界規模で始まっている。「韓国サム
スン電子や米グーグルが2年ほど前から現地採用に力を入れ始めている」。大手建設会社、
ミルのCOO(最高執行責任者)を務め、同社のIT部門を率いるシャマイ・ザイール氏はこ
う証言する。
サムスン電子は100人以上の新卒プログラマーを既に採用しているという。グーグルは
ダッカ工科大学にも採用活動に訪れている。このほかデンマークやオランダ、英国など
の企業も触手を伸ばしている。
<課題は言葉の壁と企業規模>
ところがバングラデシュのIT人材は絶対数がまだ少ない。新卒ソフト技術者は年間で
約7000人。バングラデシュより人口が1億人少ないミャンマーが年間約6000人を輩出して
いるのと比べると、物足りない。
欧米や韓国の企業に負けじと、日本企業もバングラデシュでのオフショア開発に踏み
切りたいところだが、そこには二つの課題がある。
一つは言葉の壁だ。日本に本社を置くBJITのように、日本語による開発を請け負うこ
とができる企業は限定的。日本語でのやり取りはほぼ期待できない。「話し言葉ではイ
ンドやフィリピンにやや劣るが、英語力は十分ある」(アクター学部長)ので、委託す
る日系企業側も英語を使うか、英語と日本語が話せるブリッジSEを置くなどの対策が必
要になる。
もう一つの課題はバングラデシュ資本の企業の規模が小さいことである。大手グルー
プでも技術者の人数は100~200人程度。人材不足に加え、国内のまとまったIT需要は、
まだ金融業と通信業ぐらいしかない。大量の人的リソースを投入するプロジェクトがほ
とんどないため、大規模に技術者を抱える必要性が少ないのが現状だ。
課題はあるものの、「バングラデシュのIT人材を活用することは、日本企業にとって
グローバル化と中長期的なコスト競争力の強化につながる」と岡崎社長は断言する。「
今後10~20年間は、同国の人件費がアジアで最安水準を維持するだろう」と続ける。
■JCペニー、バングラデシュで工場の監視強化へ
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324602304578494143596853194.html?mod=googlenews_wsjja
(ウォール・ストリート・ジャーナル 2013年05月20日)
米小売り大手JCペニー がバングラデシュでビル構造や設計の検査を初めて義務付ける
ことで、工場の監査を強化する計画を立てている。
同社を含む小売業者の多くはこれまで専ら火災対策や労働環境の改善に力を入れてき
たが、先月のラナプラザのビル崩壊で1100人以上が死亡して以来、ビル構造を含む安全
性の問題に対する意識が高まっている。ラナプラザには5つの工場が入っていた。
JCペニーでブランド・設計・調達を担当するケン・マンゴーン氏は17日、テキサス州
プラーノでの定時株主総会で「問題がありそうな国々ではビル構造や設計の検査を義務
付ける」と話した。
一方、オバマ政権はバングラデシュから輸入した一部製品に対する減税措置の廃止を
検討している。バングラデシュが安全基準を引き上げるよう圧力をかける狙いだ。
米政府高官は数週間以内に関税率を引き上げるかどうかの検討を行う。バングラデシュ
からの輸入量は米国全体の輸入量のほんのわずかを占めるに過ぎないとはいえ、税率が
上がれば打撃を受ける。米国はバングラデシュからたばこやゴルフ用品、陶器、ヘッド
バンドなどの雑貨を輸入している。
米通商代表部(USTR)の高官によると、政府は6月末までにはっきり決断する。米政府
にとっては象徴的な動きとなる。
■バングラデシュ上陸のサイクロン、勢力弱まる
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2944528/10753406?ctm_campaign=txt_topics
(AFP通信 2013年05月17日)
【5月17日 AFP】16日にバングラデシュに上陸したサイクロン「マハセン(Mahasen)」
により、同国では14人が死亡、100万人が避難を余儀なくされたが、上陸後に勢力は弱ま
り、甚大な被害をもたらす恐れは小さくなった。
また同国当局は、隣国ミャンマーとの国境に近い浜辺で、サイクロンから避難する船
が転覆して行方不明となっていたイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)人とみら
れる22人の遺体を発見した。うち14人は子ども、6人は女性だった。残る31人の不明者も、
遺体となって漂着する可能性が高いとしている。
バングラデシュ第2の都市チッタゴン(Chittagong)の当局者がAFPに語ったところに
よると、同国沿岸部に住む3000万人のうち、サイクロンの被害を警戒した100万人が計3
000か所ある避難所や学校、大学で一夜を明かした。うち60万人が同市周辺に避難してい
たが、多くはすでに地元の村へ戻っているという。
バングラデシュとミャンマーはサイクロンの被害を頻繁に受けており、過去数十年間
に数十万人もの死者を出している。(c)AFP/Kamrul Hasan Khan
■サイクロン「マハセン」、バングラデシュに上陸 2人死亡
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2944451/10750775?ctm_campaign=txt_topics
(AFP通信 2013年05月16日)
【5月16日 AFP】サイクロン「マハセン(Mahasen)」は16日午前、バングラデシュ南西
部沿岸のパトゥアカリ(Patuakhali)に上陸した。パトゥアカリ沿岸は強風と豪雨に見
舞われ2人が死亡した。
予報によるとマハセンは午後にも、バングラデシュ第2の都市チッタゴン(Chittagon
g)から人気観光地のコックスバザール(Cox's Bazaar)まで延びる沿岸に到達する。ま
たイスラム系住民と仏教徒住民との衝突により数万人のイスラム系少数民族ロヒンギャ
(Rohingya)人が避難生活を強いられている隣国ミャンマーの北西沿岸地域にも暴風雨
をもたらしている。
だがマハセンはベンガル湾(Bay of Bengal)上で数日間停滞していた間に勢力を落と
したため、上陸した際の風速は25メートルで予想された大被害の恐れはなくなった。低
地では1メートルほど冠水した地域も出たが、この数字は予想より低かった。
長い海岸線を持つバングラデシュでは、マハセン上陸に備え約80万人が国内2000か所
の避難所や校舎などに避難していた。(c)AFP/Kamrul Hasan Khan
■サイクロン接近、ミャンマーとバングラデシュで数十万人が避難
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2944239/10747912
(AFP通信 2013年05月16日)
【5月16日 AFP】ミャンマーとバングラデシュの当局は15日、サイクロン「マハセン(M
ahasen)」の接近を受け、数十万人に避難命令を出した。16日か17日にバングラデシュ
とミャンマーの国境付近に上陸すると予想されており、国連(UN)によると、800万人超
が被害を受ける恐れがある。
バングラデシュ政府は低地に住む70万人を避難所へ移動させた。一方、ミャンマー政
府は洪水が起きやすい北西部の沿岸地域に住む約16万6000人を安全な場所へ避難させる
計画を発表した。
だが、約200人の死者を出した2012年の仏教徒住民との衝突後、ミャンマー北部ラカイ
ン(Rakhine)州で避難生活を強いられているイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingy
a)人の多くは、当局や同州の仏教徒に対して深い不信感を抱いており、怖くて移動でき
ないと話している。国内避難を余儀なくされたロヒンギャ人は約14万人に上るとされる。
ラカイン州の州都シットウェ(Sittwe)郊外のキャンプで生活するイスラム教徒の男
性は「われわれはここで死ぬかもしれない。行く所がないんだ」と話した。AFPの記者ら
は15日にキャンプ2か所を訪れたが、集団での避難が行われている様子はほとんど見られ
なかった。
13日には高台に避難するロヒンギャ人を乗せたボートが転覆し、58人が行方不明にな
る事故が起きている。(c)AFP
■焦点:製造原価は売価の1割、バングラ工場崩壊が映す現実
http://www.asahi.com/international/reuters/RTR201305160096.html
(朝日新聞 2013年05月16日)
[マドリード 14日 ロイター] 1100人以上が死亡したバングラデシュのビ
ル崩落事故。現場で回収された発注書では、欧米諸国での販売価格のわずか10分の1
で注文を受けていた工場もあったことが明らかになり、外国企業がバングラデシュに衣
類を発注する理由を明確に示している。
首都ダッカ近郊では4月24日、縫製工場などが入る8階建てのビル「ラナ・プラザ」
が崩壊。当局によると、ビルは適切な許可を得ず違法に建設されていたもので、事故前
日に危険な亀裂があると指摘されていたにもかかわらず、その日も従業員を建物内に入
れていた。
ラナ・プラザに入居していた工場は、世界の大手小売企業のサプライヤーだった。例
えば英ロンドンで46ドル(約4700円)で販売される、あるブランドのポロシャツ
の場合、製造原価は4.45ドルだった。最新トレンドを消費者にできるだけ早く、そ
して安価に届けようとする業界では、典型的な価格の変化となる。
5ドルのTシャツであれ5000ドルのスーツであれ、消費者が支払う金額に製造コ
ストが占める割合はほんの一部であることは周知の事実だ。しかし事故現場から入手し
た文書は、世界的なサプライチェーン(供給網)の一端から一端までの関係を如実に表
している。
縫製工らの多数の遺体が見つかった事故現場では、スペインのアパレル大手マンゴに
よる工場ファントム・タックへの発注書も見つかった。ファントム・タックは同ビルを
拠点とし、事業経営者らは利益のために安全を犠牲にしたとして非難の対象となってい
る。
1月23日付の発注書では、秋冬コレクション用のコットン100%の男性用ポロシャ
ツ1万2085枚の注文内容が記され、マンゴが1枚当たりに支払う金額は4.45ド
ルとなっている。同ブランドの似たようなポロシャツはスペインで26─30ユーロ(
約3400─4000円)で販売されている。
一般的に、バングラデシュの縫製工場で働く労働者の給与は、中国の労働者の給与の
半分以下とされる。バングラデシュの労働者がスペインの首都マドリードでマンゴのポ
ロシャツを買うには、2─3週間分の給与が必要となる。
<「良質な製品で低価格」>
消費者が低価格を求める競争の激しいアパレル業界では、輸送コスト、店員の給与、
店舗の賃料、広告費などで利幅が減っていく。一方、多くの企業はサプライヤーが労働
者を酷使しないよう対策を講じていると強調。スウェーデンのアパレルメーカー、へネ
ス・アンド・マウリッツ(H&M)や傘下に「ザラ」などのブランドを展開するスペイ
ンのインディテックスなどは今週、安全性強化などを盛り込んだバングラデシュでの労
働環境改善案に合意した。
マンゴの広報担当は事故現場から発見された発注書について、注文は完了していなか
ったと指摘。サンプルをチェックし、ファントム・タックが労働安全基準を満たしてい
ると確認できない限り注文しない予定だったと説明した。マンゴは100カ国以上で約
2600店舗を展開している。
このほか事故現場では、デンマークのブランド「Jack's」の発注書も見つかった。長
袖シャツの製造原価は5.08ドルで、このシャツに付けられる商品タグには24.9
0ユーロの価格が記載されていた。北欧諸国、ロシア、英国、アイルランドで男性向け
衣類を販売する同ブランドは、広告では「低価格で良質な製品」と宣伝している。
世界銀行のデータによると、2010年の工場労働者の最低賃金でバングラデシュは
最下位だった。事業経営者はロイターに対し、同国での工場労働者の平均月収は64ド
ル程度だとしている。同国の衣料業界では最もスキルの低い労働者の最低賃金は300
0タカ(約3900円)だという。
<小売企業への批判>
活動家らは、世界の小売りチェーンが製造側とより多くの利益を共有すべきだと指摘。
スペインの消費者団体FACUAの広報担当者ルベン・サンチェス氏は、「小売企業は
消費者への安価な製品提供や労働者の安全確保よりも、高い利益率の達成を重視してい
る」と非難した。
ソーシャルメディアでも小売企業は批判の対象となっている。アパレル大手ベネトン
のフェイスブックのページでは、バングラデシュの労働環境についてのコメントが相次
ぎ、これを受け同社は「われわれは責任を果たし、犠牲者への資金提供を行う」と発表
した。
英国の低価格ブランドのプリマークやカナダのロブローも、ラナ・プラザで勤務して
いた犠牲者の遺族に補償を申し出ている。
バングラデシュでは死者が出る工場崩壊事故が過去6カ月間で4件発生しており、欧
州連合(EU)や米国の当局は労働安全基準の厳格化を検討している。
■「ハルタル」を知らなければバングラは理解できない
過激化する“ストライキ”との付き合い方
http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20130322/245462/?rt=nocnt
(日経ビジネスオンライン 2013年05月16日)
小島正憲です。
経営の一線からは退いていますが、岐阜にある小島衣料という縫製会社のオーナーを
務めています。取引先から婦人服の生地やデザインをお預かりし、それを当社の手で仕
立てあげ、納品するのが仕事です。
ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、小島衣料に特徴的なことがあるとすれ
ば、それは中国や東南アジアへの進出に積極的なことだと思います。1991年に中国の湖
北省に工場を出したのを皮切りに、オーストラリアやタイ、韓国、ミャンマー、ヨルダ
ンなどで経営に携わりました。
例えば韓国ではマイナス25度という極寒の中で生活し、ミャンマーではプラス42度と
いう灼熱の中で、現地の労働者とともに働いてきました。この経験こそが私の財産です。
<フィールドワークが経営に直結>
そして今、私がライフワークとしているのがバングラデシュやミャンマー、カンボジア
の現場を歩いて回ることです。労働争議や賃金上昇の動向。電気は十分に供給されるの
か。携帯、インターネットは不自由なく使えるのか。空港まで実際にはどれくらい時間
を要するのか。少数民族問題や宗教紛争の現状はどうなのか。これらは、実際に足を運
ばなければ分かりません。
言うまでもなく、縫製業は労働集約型の産業です。その競争力は人件費や人材の質、
電力や道路などのインフラ、政治の安定性などに大きく左右されます。上記のフィール
ドワークは経営に直結します。こうして見聞きした情報の一端を、ご紹介できればと考
えます。
まずは、小島衣料も1300人規模の工場を持つ、バングラデシュから。
「ハルタル」という言葉をご存知でしょうか。
ハルタルは、ゼネラルストライキと解説されることが一般的です。ただ、ゼネストは
「総同盟罷業」とも呼ばれ、一国または一定地域の、多産業にわたる多くの労働者が、
一致協力して経済的または政治的要求を獲得するために行うストライキと定義されます。
ただ、その意味では、ハルタルはゼネストとは性格を異にしています。
現在、バングラデシュで行われているハルタルは、政権与党であるアワミ連盟に対し、
野党であるバングラデシュ民族主義党(BNP)とジャマティ・イスラミ党(JI)が、政権
転覆を目指し、あるいは今年末の総選挙を有利に展開するため起こしている騒動を指し
ます。
最近はイスラム過激派の影響を受けたJIの主導するハルタルが多くなり、過激化して
います。毎回、警察との間で衝突が起き、多数の死傷者が出る事態となっているのです。
ちなみに、アワミ連盟が野党であった時代には、同様に、与党のBNPに対しハルタルを行
っていました。
ハルタルの主な活動方法は、「バスや列車、タクシーなどの乗り物の通行を自粛せよ」
、「商店や学校、オフィスなどの活動を停止せよ」というものです。もともとこのハル
タルは、インドでガンジーが提起し、イギリスから独立を勝ち取った「非暴力・非協力」
思想に、その根源を遡ることができます。
<ハルタルの日はダッカ名物の渋滞が解消>
しかしながら最近では「暴力」を行使し、大衆を「非協力」の旗のもとに結集させよ
うという思想に大きく変わってしまっています。活動の中心は交通手段の自粛に移って
いて、ハルタル中にバスや列車、タクシーなどの交通機関を強行運行すると、ハルタル
賛同者から強力な妨害行為を受けるようになっています。
近頃は走行中の車輌が放火や投石で大きな被害を受けることも多くなり、ハルタル中
は車両の運行をやめる企業や個人がほとんどとなりました。皮肉にもハルタル期間中は
ダッカ名物の交通渋滞は見事に解消されます。しかし市内中心部の交通は完全に遮断さ
れ、営業活動などはほぼ全滅状態となり、ダッカに来た外国人ビジネスマンもホテルか
らの外出がままならず、バングラデシュ経済に大きな痛手を与えています。
地元メディアのニュースサイトを1つ紹介します。雰囲気が少し伝わるかと思います。
そのハルタルの最新動向です。
4月も引き続きハルタル騒動が起きています。幸い、現時点では日系を含む工場には、
まったく実害はなく、ほとんどの工場が通常操業を続けています。これは、ハルタルは
主要都市の市内中心部に限られ、郊外にある工場までは活動が及ばないためです。また、
ハルタルでは労働者の賃金アップなどの要求は大きくは掲げられておらず、その点で他
国のストライキとは一線を画しています。
ただ物流への影響は否めません。
ハルタル当日の昼間(午前8時から午後6時ごろまで)は、主要道路の交通が遮断され
てしまうので、ダッカを訪れた人々はホテルや工場内に缶詰となり、外に出ることはで
きません。欧米向けの生産工場などでは出荷納期に影響し始めているようです。また、
これは各工場の受注・営業活動に大きな障害となっています。
私も4月9日の午後2時ごろの便で帰国する予定でしたが、当日はハルタル実施が宣告さ
れていたので、前夜に空港近くのホテルに移動しておき、当日早朝、そのホテルから裏
道を通って空港に入った次第です。
その前夜、ホテルのテレビで現地のニュース番組をじっと見続けていましたが、数百
人のデモ隊が国旗を掲げて大通りを行進する様子や、警官隊と衝突する場面が繰り返し
放映されていました。現在のバングラデシュでは、このような異常事態が進行している
のです。政府が鎮静化に努めているので、やがてハルタルも終息するでしょうが、ハル
タルがバングラデシュの一面であることもまた事実です。以下は4月2日から9日までのハ
ルタルの様子です。
<ハルタルが続発するバングラデシュの現実>
1.4月2日(火)
バングラデシュ民主主義党 (BNP)と、その野党同盟18党は、拘留されているリーダー
と活動家の釈放、政権の辞任を求め、4月2日夜明けから夕暮れまで12時間のストライキ
を全国で呼びかけた。ストライキ前夜、首都各所で放火、爆破、投石があった。ストラ
イキの直前、デモ隊は警察を襲い、車(ほとんどがマイクロバス)に火をつけ、各所で
爆破事件を起こした。
このストライキで、少なくとも49人が捕まり、35人がケガをした。「バングラニュー
ス」取材班によると、午前8時頃、市内のムグダ地区でストライキを支持したデモが出発
したとき、警察は活動家2人を連行した。また、警察は午前中、カクテル爆弾を爆発さ
せようとしたシビル・ケンドレを捕まえた。
2.4月3日(水)
イスラミ・チャトラ・シビル(ジャマティ・イスラミ党の学生組織)は、そのリーダ
ーであるデロワール・ホセイン・ヤシン・アラファトの即釈放を要求し、4月3日、ラン
グプールとラズシャヒ(ともにバングラデシュの都市)で夜明けから夕暮れまでのスト
ライキを呼びかけた。
チャトラ・シビルの文化部秘書は「無差別殺人や拘留の名の下に、シビルのリーダー
たちを拷問していることに抗議し、その党総裁の即釈放を要求してストライキを呼びか
けた」と語った。コミッラでは、早朝にデモ隊たちが鉄路をはずしたため、「トゥルナ
・ニシタエクスプレス」が脱線し、この事故で30人以上の乗客がケガをした。鉄道は不
通になり、何千人もの人々に影響した。鉄道関係者や目撃者は、列車が田に落ちず、溝
や起伏した土地に突っ込んでいれば大惨事になっていただろうと言っている。
3.4月8日(月)
過激イスラムグループ「ヘファジャト・エ・イスラム」は4月7日、月曜の夜明けから
夕暮れまでのストライキを呼びかけた。ヘファジャト・エ・イスラムは7日の記者会見で
「ストライキは平穏に終わらせ、暴動や破壊行為は行なわない」といったが、この発表
の数時間後には車に火がつけられた。ストライキ前の暴動を避けるために、政府は4月7
日の夕方から首都にバングラデシュ国境警備隊(BGB)を配置した。
4.4月9日(火)
野党バングラデシュ民主主義党(BNP)は、8人のリーダーが刑務所に送られたことに
抗議をし、全ての野党政党員を釈放することを求め、4月9日の午前6時から36時間のスト
ライキを呼びかけた。18の連盟野党もこのプログラムをサポートした。彼らは暫定政府
の復活、そして首相の辞任を要求している。3つのダッカの裁判所にミルザ・ファクルー
ル・イスラム・アロンギール氏を含めBNPのリーダー10人が送られた後、すぐにストライ
キが呼びかけられた。
8日夜、様々な場所で約50台の車が破壊され、5台の車に火がつけられた。ストライキ
の支持者はダッカとボゴラ間の高速道路に丸太を置き、通行止めにした。
これらは網羅的なものではありません。現地報道をもとにしているため、事実誤認も
あるかも知れません。ただ、これまでに述べたことがバングラデシュで起きていること
は確かです。
現時点で、「だからバングラデシュは危ない」「進出には不適だ」などと結論を下す
つもりはありません。連載を通じて考えていければと思います。

〇バングラデシュ、「繊維の次はIT」政府が始動
〇JCペニー、バングラデシュで工場の監視強化へ
〇バングラデシュ上陸のサイクロン、勢力弱まる
〇サイクロン「マハセン」、バングラデシュに上陸 2人死亡
〇サイクロン接近、ミャンマーとバングラデシュで数十万人が避難
〇焦点:製造原価は売価の1割、バングラ工場崩壊が映す現実
〇「ハルタル」を知らなければバングラは理解できない
過激化する“ストライキ”との付き合い方
■バングラデシュ、「繊維の次はIT」政府が始動
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130510/476048/?top_pu
(ITPro 2013年05月20日)
インドの隣国バングラデシュの首都ダッカ。道にはミシン1台を置いただけの机がずらり
と並ぶ。衣服の修繕屋たちの仕事場だ。客から依頼を受けると、その場でミシンを踏み
始める(写真1)。繊維大国であることを改めて思い知る光景だ。
バングラデシュにはスウェーデンのH&M(ヘネス・アンド・マウリッツ)や、「ユニク
ロ」を展開するファーストリテイリングといった世界のアパレルメーカーが生産拠点を
構える。同国における輸出額の約8割は衣料品が占めている。
そんなバングラデシュが「IT立国」への道を歩み始めていることは、日本ではあまり
知られていない。輸出額に占めるIT関連製品の割合は現時点では1%に満たないが、実は
バングラデシュにはオフショア委託先としての必要条件がそろっている。
人口は1億6000万人と多く、隣国インド同様に数学的思考に長けた人材が豊富だ。それ
でいて、IT人材の人件費は新卒初任給で見ると250~300ドル程度とインドの半分に近い。
<IT集積地の建設が相次ぐ>
同国政府もその潜在力を開花させるべく全力を挙げる。現在はアジア最貧国の一つだが、
独立50周年となる2021年までに中所得国になることを標榜するバングラデシュは「デジ
タル・バングラデシュ」のスローガンの下、IT産業を縫製業に次ぐ輸出産業に育てる方
針を掲げる(図1)。
その柱となるのが「IT集積地」の建設だ。海外からIT企業の投資を呼び込むことで経
済成長を促進すると同時に、IT関連分野の雇用を創出して人材育成につなげる政策であ
る。
既に政府主導で三つのプロジェクトが動き出している。一つめがダッカ中心部の案件
だ。「カウラン・バザール」地区に14階建てのビルを建設済みで、そこにソフト開発会
社を誘致する。
二つめはダッカの北40キロメートルに位置するカリアクールのハイテクパークだ。東
京ドーム20個分の土地にハードウエア関連の工場のほか、電機・医療・IT分野のハイテ
ク企業を集積させる。政府の入札に応じた国内3社とマレーシアの政府系企業がデベロッ
パーとして開発計画を立案中で、6カ月~1年後には着工し、2015年までの完成を目指し
ている。
三つめはダッカの南西、クルナ管区ジョショールのITパークである。既に4億8000万円
の政府予算を確保しており、1~2年後には着工したい考えだ。情報通信省管轄のバング
ラデシュハイテクパーク局で責任者を務めるアジズル・ラーマン マネージングディレク
ターは「他に3~4カ所のITパークを建設する用意がある」と明かす(写真2)。
いずれのパークでも、入居企業に対して10年間の免税期間を設け、輸出入にかかる関税
の優遇措置も予定する。これまで脆弱だった電気・ガスなどのライフラインや交通イン
フラも整備する。「日系企業にもぜひ進出してもらいたい」とラーマン マネージングデ
ィレクターは強調する。
<欧米が開拓を先行>
現時点でバングラデシュのIT産業規模は推定4億ドルと、ベトナムやフィリピンの1割
にも満たない。そのうち海外からのソフト開発受託は、1.5億~2億ドル程度にとどまる
とみられる。
この、海外からの受託規模について「5年後には10億ドル規模にしたい」と野心的な目
標を掲げるのが、300社以上のIT企業が加盟する同国最大規模のIT業界団体BASISのファ
ヒム・マシュロアプレジデントだ(写真3)。現在の5~6倍の規模だが、達成の可能性は
十分ある。「外資系企業がバングラデシュのオフショア開発に本腰を入れ始めたのは20
10年ごろから」(現地進出コンサルティング会社バングラ・ビジネス・パートナーズ・
ジャパンの岡崎透社長)とまだ日は浅く、成長の余地が十分に残されているからだ。
同国のオフショア事業は欧米向けが先行している。米国向けが全体の約50%を占め、英
国向けとデンマーク向けがそれぞれ10%で続く。
バングラデシュは英連邦加盟国であり、英国とのつながりは深い。デンマークは政府
がバングラデシュ向け施策に力を入れており、現地企業とのジョイントベンチャーを15
社ほど設立しているという。
日本向けのオフショア開発が占める割合は全体の5%程度で、米英デンマークに続く4
番手にとどまっているのが現状だ。
<「客より先に帰るのを遠慮」>
欧米企業を惹きつけるバングラデシュのIT産業の魅力は、人件費だけではない。
バングラデシュにソフト開発拠点を持つ日本のIT企業、BJITの林信宏取締役会長は、
「客先に常駐している当社のバングラデシュ人技術者の中には、顧客より先に帰ること
を遠慮する者が多い」と協調性の高さを口にする。
「顧客や上司を尊重する性格の持ち主が多く親日的。委託先からみても仕事を任せや
すいはずだ」と、BASISのマシュロアプレジデントも強調する。この点が「マイペース」
と指摘されることが多いインド人とは異なるという。
スキルの高さも売り物だ。人件費の水準はミャンマーと比べると若干高いものの、「
スキルレベルはバングラデシュの方が総じて上だ」と、ダッカ工科大学のナシム・アク
ター コンピュータサイエンス&エンジニアリング学部長は主張する。
理由の一つとして、ソフト開発技術者が競争率の高い大学入試を突破してきた選りす
ぐりの人材であることを挙げる。IT系の職種は高給なために銀行員と並んで人気が高い。
ダッカ工科大学の入学試験の倍率は50倍に上る。バングラデシュに5カ所ある国立工科大
学は全て学費が無料だ。
こうした環境で育った優秀なIT人材の争奪戦が世界規模で始まっている。「韓国サム
スン電子や米グーグルが2年ほど前から現地採用に力を入れ始めている」。大手建設会社、
ミルのCOO(最高執行責任者)を務め、同社のIT部門を率いるシャマイ・ザイール氏はこ
う証言する。
サムスン電子は100人以上の新卒プログラマーを既に採用しているという。グーグルは
ダッカ工科大学にも採用活動に訪れている。このほかデンマークやオランダ、英国など
の企業も触手を伸ばしている。
<課題は言葉の壁と企業規模>
ところがバングラデシュのIT人材は絶対数がまだ少ない。新卒ソフト技術者は年間で
約7000人。バングラデシュより人口が1億人少ないミャンマーが年間約6000人を輩出して
いるのと比べると、物足りない。
欧米や韓国の企業に負けじと、日本企業もバングラデシュでのオフショア開発に踏み
切りたいところだが、そこには二つの課題がある。
一つは言葉の壁だ。日本に本社を置くBJITのように、日本語による開発を請け負うこ
とができる企業は限定的。日本語でのやり取りはほぼ期待できない。「話し言葉ではイ
ンドやフィリピンにやや劣るが、英語力は十分ある」(アクター学部長)ので、委託す
る日系企業側も英語を使うか、英語と日本語が話せるブリッジSEを置くなどの対策が必
要になる。
もう一つの課題はバングラデシュ資本の企業の規模が小さいことである。大手グルー
プでも技術者の人数は100~200人程度。人材不足に加え、国内のまとまったIT需要は、
まだ金融業と通信業ぐらいしかない。大量の人的リソースを投入するプロジェクトがほ
とんどないため、大規模に技術者を抱える必要性が少ないのが現状だ。
課題はあるものの、「バングラデシュのIT人材を活用することは、日本企業にとって
グローバル化と中長期的なコスト競争力の強化につながる」と岡崎社長は断言する。「
今後10~20年間は、同国の人件費がアジアで最安水準を維持するだろう」と続ける。
■JCペニー、バングラデシュで工場の監視強化へ
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324602304578494143596853194.html?mod=googlenews_wsjja
(ウォール・ストリート・ジャーナル 2013年05月20日)
米小売り大手JCペニー がバングラデシュでビル構造や設計の検査を初めて義務付ける
ことで、工場の監査を強化する計画を立てている。
同社を含む小売業者の多くはこれまで専ら火災対策や労働環境の改善に力を入れてき
たが、先月のラナプラザのビル崩壊で1100人以上が死亡して以来、ビル構造を含む安全
性の問題に対する意識が高まっている。ラナプラザには5つの工場が入っていた。
JCペニーでブランド・設計・調達を担当するケン・マンゴーン氏は17日、テキサス州
プラーノでの定時株主総会で「問題がありそうな国々ではビル構造や設計の検査を義務
付ける」と話した。
一方、オバマ政権はバングラデシュから輸入した一部製品に対する減税措置の廃止を
検討している。バングラデシュが安全基準を引き上げるよう圧力をかける狙いだ。
米政府高官は数週間以内に関税率を引き上げるかどうかの検討を行う。バングラデシュ
からの輸入量は米国全体の輸入量のほんのわずかを占めるに過ぎないとはいえ、税率が
上がれば打撃を受ける。米国はバングラデシュからたばこやゴルフ用品、陶器、ヘッド
バンドなどの雑貨を輸入している。
米通商代表部(USTR)の高官によると、政府は6月末までにはっきり決断する。米政府
にとっては象徴的な動きとなる。
■バングラデシュ上陸のサイクロン、勢力弱まる
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2944528/10753406?ctm_campaign=txt_topics
(AFP通信 2013年05月17日)
【5月17日 AFP】16日にバングラデシュに上陸したサイクロン「マハセン(Mahasen)」
により、同国では14人が死亡、100万人が避難を余儀なくされたが、上陸後に勢力は弱ま
り、甚大な被害をもたらす恐れは小さくなった。
また同国当局は、隣国ミャンマーとの国境に近い浜辺で、サイクロンから避難する船
が転覆して行方不明となっていたイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)人とみら
れる22人の遺体を発見した。うち14人は子ども、6人は女性だった。残る31人の不明者も、
遺体となって漂着する可能性が高いとしている。
バングラデシュ第2の都市チッタゴン(Chittagong)の当局者がAFPに語ったところに
よると、同国沿岸部に住む3000万人のうち、サイクロンの被害を警戒した100万人が計3
000か所ある避難所や学校、大学で一夜を明かした。うち60万人が同市周辺に避難してい
たが、多くはすでに地元の村へ戻っているという。
バングラデシュとミャンマーはサイクロンの被害を頻繁に受けており、過去数十年間
に数十万人もの死者を出している。(c)AFP/Kamrul Hasan Khan
■サイクロン「マハセン」、バングラデシュに上陸 2人死亡
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2944451/10750775?ctm_campaign=txt_topics
(AFP通信 2013年05月16日)
【5月16日 AFP】サイクロン「マハセン(Mahasen)」は16日午前、バングラデシュ南西
部沿岸のパトゥアカリ(Patuakhali)に上陸した。パトゥアカリ沿岸は強風と豪雨に見
舞われ2人が死亡した。
予報によるとマハセンは午後にも、バングラデシュ第2の都市チッタゴン(Chittagon
g)から人気観光地のコックスバザール(Cox's Bazaar)まで延びる沿岸に到達する。ま
たイスラム系住民と仏教徒住民との衝突により数万人のイスラム系少数民族ロヒンギャ
(Rohingya)人が避難生活を強いられている隣国ミャンマーの北西沿岸地域にも暴風雨
をもたらしている。
だがマハセンはベンガル湾(Bay of Bengal)上で数日間停滞していた間に勢力を落と
したため、上陸した際の風速は25メートルで予想された大被害の恐れはなくなった。低
地では1メートルほど冠水した地域も出たが、この数字は予想より低かった。
長い海岸線を持つバングラデシュでは、マハセン上陸に備え約80万人が国内2000か所
の避難所や校舎などに避難していた。(c)AFP/Kamrul Hasan Khan
■サイクロン接近、ミャンマーとバングラデシュで数十万人が避難
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2944239/10747912
(AFP通信 2013年05月16日)
【5月16日 AFP】ミャンマーとバングラデシュの当局は15日、サイクロン「マハセン(M
ahasen)」の接近を受け、数十万人に避難命令を出した。16日か17日にバングラデシュ
とミャンマーの国境付近に上陸すると予想されており、国連(UN)によると、800万人超
が被害を受ける恐れがある。
バングラデシュ政府は低地に住む70万人を避難所へ移動させた。一方、ミャンマー政
府は洪水が起きやすい北西部の沿岸地域に住む約16万6000人を安全な場所へ避難させる
計画を発表した。
だが、約200人の死者を出した2012年の仏教徒住民との衝突後、ミャンマー北部ラカイ
ン(Rakhine)州で避難生活を強いられているイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingy
a)人の多くは、当局や同州の仏教徒に対して深い不信感を抱いており、怖くて移動でき
ないと話している。国内避難を余儀なくされたロヒンギャ人は約14万人に上るとされる。
ラカイン州の州都シットウェ(Sittwe)郊外のキャンプで生活するイスラム教徒の男
性は「われわれはここで死ぬかもしれない。行く所がないんだ」と話した。AFPの記者ら
は15日にキャンプ2か所を訪れたが、集団での避難が行われている様子はほとんど見られ
なかった。
13日には高台に避難するロヒンギャ人を乗せたボートが転覆し、58人が行方不明にな
る事故が起きている。(c)AFP
■焦点:製造原価は売価の1割、バングラ工場崩壊が映す現実
http://www.asahi.com/international/reuters/RTR201305160096.html
(朝日新聞 2013年05月16日)
[マドリード 14日 ロイター] 1100人以上が死亡したバングラデシュのビ
ル崩落事故。現場で回収された発注書では、欧米諸国での販売価格のわずか10分の1
で注文を受けていた工場もあったことが明らかになり、外国企業がバングラデシュに衣
類を発注する理由を明確に示している。
首都ダッカ近郊では4月24日、縫製工場などが入る8階建てのビル「ラナ・プラザ」
が崩壊。当局によると、ビルは適切な許可を得ず違法に建設されていたもので、事故前
日に危険な亀裂があると指摘されていたにもかかわらず、その日も従業員を建物内に入
れていた。
ラナ・プラザに入居していた工場は、世界の大手小売企業のサプライヤーだった。例
えば英ロンドンで46ドル(約4700円)で販売される、あるブランドのポロシャツ
の場合、製造原価は4.45ドルだった。最新トレンドを消費者にできるだけ早く、そ
して安価に届けようとする業界では、典型的な価格の変化となる。
5ドルのTシャツであれ5000ドルのスーツであれ、消費者が支払う金額に製造コ
ストが占める割合はほんの一部であることは周知の事実だ。しかし事故現場から入手し
た文書は、世界的なサプライチェーン(供給網)の一端から一端までの関係を如実に表
している。
縫製工らの多数の遺体が見つかった事故現場では、スペインのアパレル大手マンゴに
よる工場ファントム・タックへの発注書も見つかった。ファントム・タックは同ビルを
拠点とし、事業経営者らは利益のために安全を犠牲にしたとして非難の対象となってい
る。
1月23日付の発注書では、秋冬コレクション用のコットン100%の男性用ポロシャ
ツ1万2085枚の注文内容が記され、マンゴが1枚当たりに支払う金額は4.45ド
ルとなっている。同ブランドの似たようなポロシャツはスペインで26─30ユーロ(
約3400─4000円)で販売されている。
一般的に、バングラデシュの縫製工場で働く労働者の給与は、中国の労働者の給与の
半分以下とされる。バングラデシュの労働者がスペインの首都マドリードでマンゴのポ
ロシャツを買うには、2─3週間分の給与が必要となる。
<「良質な製品で低価格」>
消費者が低価格を求める競争の激しいアパレル業界では、輸送コスト、店員の給与、
店舗の賃料、広告費などで利幅が減っていく。一方、多くの企業はサプライヤーが労働
者を酷使しないよう対策を講じていると強調。スウェーデンのアパレルメーカー、へネ
ス・アンド・マウリッツ(H&M)や傘下に「ザラ」などのブランドを展開するスペイ
ンのインディテックスなどは今週、安全性強化などを盛り込んだバングラデシュでの労
働環境改善案に合意した。
マンゴの広報担当は事故現場から発見された発注書について、注文は完了していなか
ったと指摘。サンプルをチェックし、ファントム・タックが労働安全基準を満たしてい
ると確認できない限り注文しない予定だったと説明した。マンゴは100カ国以上で約
2600店舗を展開している。
このほか事故現場では、デンマークのブランド「Jack's」の発注書も見つかった。長
袖シャツの製造原価は5.08ドルで、このシャツに付けられる商品タグには24.9
0ユーロの価格が記載されていた。北欧諸国、ロシア、英国、アイルランドで男性向け
衣類を販売する同ブランドは、広告では「低価格で良質な製品」と宣伝している。
世界銀行のデータによると、2010年の工場労働者の最低賃金でバングラデシュは
最下位だった。事業経営者はロイターに対し、同国での工場労働者の平均月収は64ド
ル程度だとしている。同国の衣料業界では最もスキルの低い労働者の最低賃金は300
0タカ(約3900円)だという。
<小売企業への批判>
活動家らは、世界の小売りチェーンが製造側とより多くの利益を共有すべきだと指摘。
スペインの消費者団体FACUAの広報担当者ルベン・サンチェス氏は、「小売企業は
消費者への安価な製品提供や労働者の安全確保よりも、高い利益率の達成を重視してい
る」と非難した。
ソーシャルメディアでも小売企業は批判の対象となっている。アパレル大手ベネトン
のフェイスブックのページでは、バングラデシュの労働環境についてのコメントが相次
ぎ、これを受け同社は「われわれは責任を果たし、犠牲者への資金提供を行う」と発表
した。
英国の低価格ブランドのプリマークやカナダのロブローも、ラナ・プラザで勤務して
いた犠牲者の遺族に補償を申し出ている。
バングラデシュでは死者が出る工場崩壊事故が過去6カ月間で4件発生しており、欧
州連合(EU)や米国の当局は労働安全基準の厳格化を検討している。
■「ハルタル」を知らなければバングラは理解できない
過激化する“ストライキ”との付き合い方
http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20130322/245462/?rt=nocnt
(日経ビジネスオンライン 2013年05月16日)
小島正憲です。
経営の一線からは退いていますが、岐阜にある小島衣料という縫製会社のオーナーを
務めています。取引先から婦人服の生地やデザインをお預かりし、それを当社の手で仕
立てあげ、納品するのが仕事です。
ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、小島衣料に特徴的なことがあるとすれ
ば、それは中国や東南アジアへの進出に積極的なことだと思います。1991年に中国の湖
北省に工場を出したのを皮切りに、オーストラリアやタイ、韓国、ミャンマー、ヨルダ
ンなどで経営に携わりました。
例えば韓国ではマイナス25度という極寒の中で生活し、ミャンマーではプラス42度と
いう灼熱の中で、現地の労働者とともに働いてきました。この経験こそが私の財産です。
<フィールドワークが経営に直結>
そして今、私がライフワークとしているのがバングラデシュやミャンマー、カンボジア
の現場を歩いて回ることです。労働争議や賃金上昇の動向。電気は十分に供給されるの
か。携帯、インターネットは不自由なく使えるのか。空港まで実際にはどれくらい時間
を要するのか。少数民族問題や宗教紛争の現状はどうなのか。これらは、実際に足を運
ばなければ分かりません。
言うまでもなく、縫製業は労働集約型の産業です。その競争力は人件費や人材の質、
電力や道路などのインフラ、政治の安定性などに大きく左右されます。上記のフィール
ドワークは経営に直結します。こうして見聞きした情報の一端を、ご紹介できればと考
えます。
まずは、小島衣料も1300人規模の工場を持つ、バングラデシュから。
「ハルタル」という言葉をご存知でしょうか。
ハルタルは、ゼネラルストライキと解説されることが一般的です。ただ、ゼネストは
「総同盟罷業」とも呼ばれ、一国または一定地域の、多産業にわたる多くの労働者が、
一致協力して経済的または政治的要求を獲得するために行うストライキと定義されます。
ただ、その意味では、ハルタルはゼネストとは性格を異にしています。
現在、バングラデシュで行われているハルタルは、政権与党であるアワミ連盟に対し、
野党であるバングラデシュ民族主義党(BNP)とジャマティ・イスラミ党(JI)が、政権
転覆を目指し、あるいは今年末の総選挙を有利に展開するため起こしている騒動を指し
ます。
最近はイスラム過激派の影響を受けたJIの主導するハルタルが多くなり、過激化して
います。毎回、警察との間で衝突が起き、多数の死傷者が出る事態となっているのです。
ちなみに、アワミ連盟が野党であった時代には、同様に、与党のBNPに対しハルタルを行
っていました。
ハルタルの主な活動方法は、「バスや列車、タクシーなどの乗り物の通行を自粛せよ」
、「商店や学校、オフィスなどの活動を停止せよ」というものです。もともとこのハル
タルは、インドでガンジーが提起し、イギリスから独立を勝ち取った「非暴力・非協力」
思想に、その根源を遡ることができます。
<ハルタルの日はダッカ名物の渋滞が解消>
しかしながら最近では「暴力」を行使し、大衆を「非協力」の旗のもとに結集させよ
うという思想に大きく変わってしまっています。活動の中心は交通手段の自粛に移って
いて、ハルタル中にバスや列車、タクシーなどの交通機関を強行運行すると、ハルタル
賛同者から強力な妨害行為を受けるようになっています。
近頃は走行中の車輌が放火や投石で大きな被害を受けることも多くなり、ハルタル中
は車両の運行をやめる企業や個人がほとんどとなりました。皮肉にもハルタル期間中は
ダッカ名物の交通渋滞は見事に解消されます。しかし市内中心部の交通は完全に遮断さ
れ、営業活動などはほぼ全滅状態となり、ダッカに来た外国人ビジネスマンもホテルか
らの外出がままならず、バングラデシュ経済に大きな痛手を与えています。
地元メディアのニュースサイトを1つ紹介します。雰囲気が少し伝わるかと思います。
そのハルタルの最新動向です。
4月も引き続きハルタル騒動が起きています。幸い、現時点では日系を含む工場には、
まったく実害はなく、ほとんどの工場が通常操業を続けています。これは、ハルタルは
主要都市の市内中心部に限られ、郊外にある工場までは活動が及ばないためです。また、
ハルタルでは労働者の賃金アップなどの要求は大きくは掲げられておらず、その点で他
国のストライキとは一線を画しています。
ただ物流への影響は否めません。
ハルタル当日の昼間(午前8時から午後6時ごろまで)は、主要道路の交通が遮断され
てしまうので、ダッカを訪れた人々はホテルや工場内に缶詰となり、外に出ることはで
きません。欧米向けの生産工場などでは出荷納期に影響し始めているようです。また、
これは各工場の受注・営業活動に大きな障害となっています。
私も4月9日の午後2時ごろの便で帰国する予定でしたが、当日はハルタル実施が宣告さ
れていたので、前夜に空港近くのホテルに移動しておき、当日早朝、そのホテルから裏
道を通って空港に入った次第です。
その前夜、ホテルのテレビで現地のニュース番組をじっと見続けていましたが、数百
人のデモ隊が国旗を掲げて大通りを行進する様子や、警官隊と衝突する場面が繰り返し
放映されていました。現在のバングラデシュでは、このような異常事態が進行している
のです。政府が鎮静化に努めているので、やがてハルタルも終息するでしょうが、ハル
タルがバングラデシュの一面であることもまた事実です。以下は4月2日から9日までのハ
ルタルの様子です。
<ハルタルが続発するバングラデシュの現実>
1.4月2日(火)
バングラデシュ民主主義党 (BNP)と、その野党同盟18党は、拘留されているリーダー
と活動家の釈放、政権の辞任を求め、4月2日夜明けから夕暮れまで12時間のストライキ
を全国で呼びかけた。ストライキ前夜、首都各所で放火、爆破、投石があった。ストラ
イキの直前、デモ隊は警察を襲い、車(ほとんどがマイクロバス)に火をつけ、各所で
爆破事件を起こした。
このストライキで、少なくとも49人が捕まり、35人がケガをした。「バングラニュー
ス」取材班によると、午前8時頃、市内のムグダ地区でストライキを支持したデモが出発
したとき、警察は活動家2人を連行した。また、警察は午前中、カクテル爆弾を爆発さ
せようとしたシビル・ケンドレを捕まえた。
2.4月3日(水)
イスラミ・チャトラ・シビル(ジャマティ・イスラミ党の学生組織)は、そのリーダ
ーであるデロワール・ホセイン・ヤシン・アラファトの即釈放を要求し、4月3日、ラン
グプールとラズシャヒ(ともにバングラデシュの都市)で夜明けから夕暮れまでのスト
ライキを呼びかけた。
チャトラ・シビルの文化部秘書は「無差別殺人や拘留の名の下に、シビルのリーダー
たちを拷問していることに抗議し、その党総裁の即釈放を要求してストライキを呼びか
けた」と語った。コミッラでは、早朝にデモ隊たちが鉄路をはずしたため、「トゥルナ
・ニシタエクスプレス」が脱線し、この事故で30人以上の乗客がケガをした。鉄道は不
通になり、何千人もの人々に影響した。鉄道関係者や目撃者は、列車が田に落ちず、溝
や起伏した土地に突っ込んでいれば大惨事になっていただろうと言っている。
3.4月8日(月)
過激イスラムグループ「ヘファジャト・エ・イスラム」は4月7日、月曜の夜明けから
夕暮れまでのストライキを呼びかけた。ヘファジャト・エ・イスラムは7日の記者会見で
「ストライキは平穏に終わらせ、暴動や破壊行為は行なわない」といったが、この発表
の数時間後には車に火がつけられた。ストライキ前の暴動を避けるために、政府は4月7
日の夕方から首都にバングラデシュ国境警備隊(BGB)を配置した。
4.4月9日(火)
野党バングラデシュ民主主義党(BNP)は、8人のリーダーが刑務所に送られたことに
抗議をし、全ての野党政党員を釈放することを求め、4月9日の午前6時から36時間のスト
ライキを呼びかけた。18の連盟野党もこのプログラムをサポートした。彼らは暫定政府
の復活、そして首相の辞任を要求している。3つのダッカの裁判所にミルザ・ファクルー
ル・イスラム・アロンギール氏を含めBNPのリーダー10人が送られた後、すぐにストライ
キが呼びかけられた。
8日夜、様々な場所で約50台の車が破壊され、5台の車に火がつけられた。ストライキ
の支持者はダッカとボゴラ間の高速道路に丸太を置き、通行止めにした。
これらは網羅的なものではありません。現地報道をもとにしているため、事実誤認も
あるかも知れません。ただ、これまでに述べたことがバングラデシュで起きていること
は確かです。
現時点で、「だからバングラデシュは危ない」「進出には不適だ」などと結論を下す
つもりはありません。連載を通じて考えていければと思います。
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