外川目ときどき賢治さん

「早池峰賢治の会」会長の浅沼利一郎さんと巡る宮沢賢治の作品原風景。

七宝で読み解く宮沢賢治

2010-10-19 14:34:20 | 取材
このブログのバナーであるかわいい猫のキャラクターたち。

この猫の生みの親である、
盛岡サイエンスの栗谷川寛衛さんの七宝展示会にお邪魔してきました。

展示会タイトルは、「七宝で読み解く宮沢賢治」です。

古い蔵を改造した茶房「結の蔵」の2階が会場となっており、
落ち着いた照明と、なめらかな光沢を放つ木が、
優しく作品を包み込みます。

「結の蔵」は、大正時代の蔵の家を復旧しており、
この古民家自体は大迫町から移築されたものだとか。




栗谷川さんの作品は、銅板を加工して形成し、
釉薬を乗せて焼いたもの。

銅板のもつやわらかさを活かし、
独特の色遣いで魅せます。


賢治の作品に出てくるキーワードを作品にしたもの。
作品自体を表現したもの。
実際に賢治が関わったもの。
などなど。

栗谷川さんいわく、「未完成の完成」という作品群から、
いくつかご紹介します。

まずは、こちら。



チェロと、賢治のモチーフが乗った円をのぞくと…。
一番後方に、チェロを奏でる藤原嘉藤治が。

藤原嘉藤治は、宮沢賢治の親友であり、
賢治の死後、全集や童話本の編集などに尽力。

晩年は賢治の生き方に共感し「開拓農民」となりました。
宮沢賢治にチェロや音楽を教え、
「セロ弾きのゴーシュ」の主人公、ゴーシュのモデルとの説もあります。

二人の親交を音楽(チェロ)で結んだ素敵な作品です。


もうひとつご紹介します。
展示会告知のはがきにも掲載された作品「賢治さんの天気輪」



白を基調とした柱に、3つの輪。
「銀河鉄道の夜」に登場する、天気輪の柱。
解釈には、死後菩提を弔う念仏車や、
法華経の宝塔などなど、諸説あるようです。

栗谷川さんの天気輪は、自然現象を表現しています。
作品自体は小ぶりですが、スケールの大きなモチーフです。

展示会「七宝で読み解く宮沢賢治」は、
10月25日まで開催しています。

■「七宝で読み解く宮沢賢治」
会場:㈱ゆい工房 茶房「結の蔵」
   岩手県滝沢村巣子1162
日時:開催中~10月25日(※19日、20日はお休み)
   11時~17時

展示会への入場は無料ですが、一階の茶房もおススメです。
美味しいコーヒーやおしるこを召し上がりつつゆっくりと、どうぞ。

浅沼メモより~とっておきのエピソード~ ②

2010-10-07 10:46:55 | 取材
今回も、「早池峰と賢治」の展示館での浅沼さんのお話より
短歌とたばこ産業についてご紹介します。



  たばこばた風ふけばくらし 
  
  たばこばた光の針がそそげばかなし

この短歌を(お客さんに)ご説明した時に、
本当に面白いことになるんです。

皆さん、解釈が一人ひとり違うんです。

哲学者も、宗教学者も、文学者の方も、表現がね。

俺は、この「光の針」っつのは、
たばこの葉っぱが、
穴開いて、
そこから日が差すと針みたいになるじゃ?

これ、光の針だと思うんです。

穴が開いてしまうと売り物にならない。

一年もかけたのにですよ?

100円で売れるものが10円にもならないわけ。
生活できなくなるんですよ。

そういう、農家の人たちの想いを書いてるんでねぇですべか?


このたばこ(南部葉)っつのは、
日本全国で、ここ(大迫)にしかないわけさ。

昭和40年代の中ごろから、バーレー種に変わっていくわけだけど。

賢治さんの短歌もね、原風景が必ずあると思います。



次回は、賢治さんとダルトン・プラン(教育)についてです。


浅沼メモより~とっておきのエピソード~ ①

2010-10-06 14:34:59 | 取材
「早池峰と賢治の展示館」に、お邪魔した際に、
浅沼利一郎さんが、お話された、“あれこれ”。

いつも、メモを取りながらお聞きしています。
その「浅沼メモ」から、少しずつエピソードをご紹介します。

今回は、加筆修正の跡が残る賢治の原稿についてです。


賢治さんは、何回も、何回も書きかえてる。

書きかえてるっていうより、人生の経験を書き足してるんですよ。

20代の時と、30代の時では、また、変わってくる。

宗教観だって、若い時と違ってくるんです。
おれたちだって、そうなんだもん。

賢治さんは、そういうのを全部作品に書いてる。

『自分の作品は、わかる人にはわかるけど、わからない人にはわからない』
で、『銀河鉄道の夜は、誰にも、わからない』って。

本当に賢治さんは、想いをそのまま書いてる。

賢治さんの作品で、加筆修正の跡がたくさん残ってるのが、
「銀河鉄道の夜」と、「風の又三郎」なんです。

字も違うでしょ?

一つ、ひとつ確かめるように書いてますべ?

活字で賢治作品を見てきた方が、
ここ(大迫)に来て、
原風景とこの原稿を見て、「いかにもそうなんだよな」って感じがすると言いますっけ。



「早池峰と賢治」の展示館、そして、宮沢賢治記念館など、
想いの伝わる賢治さんの原稿をぜひぜひご覧になってみてください。