私は20代の頃から、人が驚いたり、感動してくれるような商品をつくりたいという夢があった。
しかし商品開発の世界では、なかなか全体の設計まではやらせてもらえない。
そこで20日間掛かるのが1か月分の正味の仕事だとすれば、
徹夜か、それに近い無理をしてでも10日間でその分の仕事を終えてしまい、
残り10日間で違う分野の手伝いをするようにしていた。
実社会でモノを言うのは、頭の良し悪しや能力の有無ではなく「やる気」の如何である。
キヤノンは私の入社した昭和42年に日本で初めてとなる完全週休2日制を導入した。
しかし私が20代の頃は土日もほとんど休んだことがなく、ひたすら仕事に没頭していた。
毎晩11時20分の終電に飛び乗り、帰宅すると深夜の1時。
そのまますぐ眠りにつき、翌朝5時半には家を出るという生活だった。
その間、特に大切していたのは通勤電車で過ごす時間である。
一人で考えごとをするのに最も適しているのは電車の中で、
当時はつい夢中になるあまり、よく終点まで乗り過ごしていたものだった。
私がこうした「習慣」にこだわるのは、それが第二の天性とも呼べるものだからである。
習慣になるまで努力すれば、頭でいろいろと考える前にさっと体が動く。つまり自分が天から授かった能力と同じになるのだ。
仕事に対する取り組み方で何よりも強く問われるのは「この仕事をやりたい、やり遂げて成功させたい」という執念である。
自分の力はこれくらいだ、などと初めから諦めたりせず、
若い時には何事にも果敢にチャレンジしていってもらいたいと願っている。