王様は、その後

王様の耳はロバの耳を書いたあと

いろんなひとに
あの夜のことを話した。

日が経つにつれ
やはり尋常ではないと思い直す。

その現場に自分を派遣している、
自分の会社の営業さんに相談。

自分の会社と現場の仲介をしている会社が
組織として対応してくれることになった。

並行して
あたしはセクハラ対策窓口に
フリーメールでアカウントを作り
自分の身分を隠して
相談メールを送った。

企業と企業の利害関係と
個々人の利害関係を考慮すると
あたしは簡単には身動きできなくなった。

仲介会社の無色の圧力を感じつつ
セクハラ対策窓口の担当者とコンタクト。

ペリカン文書のよに
疑心暗鬼。

誰かに頼りたいし
誰も信じられないし。

いよいよ仲介会社が加害者である部長に進言する日
忠告/警告を促す匿名メールが部長に届いたらしく
仲介会社の対応の前に
加害者である部長に呼ばれ、謝罪された。

しかし
あたしの目的は謝罪ではなく
再発防止。

謝罪があろうがなかろうが
どうでもいい。

もう二度と同じよ不快な思いを
他の女性にして欲しくない。

自分がセクハラを拒絶できなかったからこそ
そのようなときに拒絶する方法を
会社単位で教育する機会ができればと思ったし

自分がセクハラに遭ったとき
誰に相談すればよいか悩んだからこそ
そのようなときにどのように対応すればいいのか
会社単位で教育する機会ができればと思ったし

何より
いまだにセクハラを容認する意識が
会社単位で変わる機会ができればと思った。

セクハラ対策窓口の担当者は
清潔感があり
かっこよかった。

頭がキれるひとだとわかったので
洗い浚いぶちまけた。

日時
場所
被害者
加害者
居合せたひと
会話の内容
行為の詳細
その後の自分の対応
組織への要望
謝罪があったこと

会社が動くということは
もしかしたら
すごくお世話になったひとに
火の粉がかかるかもしれない。

もしかしたら
自分が不利な立場になるかもしれない。

それでも全てを話した。
少し嘘をつけばよかったのかもしれない。
関係ないところは言わなくてもよかったかもしれない。

それでも全てを話した。

自分がしたことで
何が変わるかわからない。
何も変わらないかもしれない。

悪い方向に変わってしまうかもしれない。

あたしは
何かを失う危険を冒して
そこまでするべきだったのだろうか。

それはまだ、わからない。