フランスの詩

宮之森享太 翻訳

[ 聞け、さかりの鹿の. . . ]

2011-07-28 | Weblog

       [ 聞け、さかりの鹿の. . . ]

    聞け、さかりの鹿の鳴き声のように
    アカシアの木々のそばで
    四月にエンドウの
    緑のからむ手を!

    きれいな靄のなか、
    月の女神に向かって! きみは見る
    かつての聖人らの頭が
    揺れ動いているのを. . .

    遠く離れて、岬の明るい
    積みわらから、美しい屋根から。
    そのいとしい古人らは
    この陰険な媚薬を欲しがっている. . .

    ところで週日のものでも
    天体のものでもない!
    その靄は、それはこの夜の
    効果が発している。

    それでも彼らは残る、
    ― シチリア、ドイツ、
    悲しく青白い
    この霧のなかで、まさに!



狼は吠えていた、葉っぱの下で. . . ]

2011-07-26 | Weblog

   [狼は吠えていた、葉っぱの下で. . . ]


       狼は吠えていた、葉っぱの下で。
       食事にとった鶏たちの
       きれいな羽を吐き出して。
       彼のようにぼくも憔悴する。

       サラダ菜、果実は
       摘み取られるのを待つしかない。
       でも生け垣にいるその蜘蛛は
       スミレだけしか食べやしない。

       ぼくは眠りたい! 沸騰したい 
       ソロモン王の祭壇で。
       できた泡が錆の上を流れる
       そしてセドロン谷へ合流する。



飢えの祭り

2011-07-26 | Weblog

         飢えの祭り


       ぼくの飢えよ、アンヌ、アンヌ、
       逃げてしまえ、きみのロバに乗って。

   ぼくに嗜好があるとすれば
   それはほとんど土と石だけ。
   ディン!ディン!ディン!ディン!ぼくは食う、空気、
   岩石、土、黒がね、
 
   回れ、飢えたち! 食え、飢えたち、
       牧場、麦かすの!
   それから目立たない震える毒
       昼顔のだ、

   砂利、貧者が砕いたもの、
   古い石々、教会のだ、
   丸い小石、洪水の息子、
   パン、灰色の谷間に横たわっている!

   ぼくの飢え、それは黒い大気の端々、
       蒼穹の鐘つき男、
   ― それは胃だ、ぼくを引っぱる。
       それは不幸だ。

   地上に現れたのは葉々。
   ぼくは熟れすぎた果物の果肉を目指す。
   畝溝のふところで、ぼくが摘むのは
   ノヂシャとスミレ。

       ぼくの飢えよ、アンヌ、アンヌ!
       逃げてしまえ、きみのロバに乗って。



[ 彼女はエジプトの踊り子か?. . . ]

2011-07-24 | Weblog

   [ 彼女はエジプトの踊り子か?. . . ]

  彼女はエジプトの踊り子か?. . . 初めの青い時刻に
  壊れるのか、彼女は、亡き火の花々のように. . .
  素晴らしい広がりを前にして、そこは並外れて
  繁栄した都市の吐く息が感じられる!

  あまりにも美事だ! あまりにも美事だ! だが必要だ
  ― 海女と海賊の歌にとって、
  そしてさらに最後の仮面らが、清純な海の上の夜宴を
  まだ信じたのだから!



[ 葉鶏頭の長い花壇. . . ]

2011-07-23 | Weblog

       [ 葉鶏頭の長い花壇. . . ]

      7月  ブリュッセル
              レジャン大通り


  葉鶏頭の長い花壇
  快いジュピターの宮殿まで続く。
  ― ぼくが知るのは、きみが、これらの場所に、
  ほとんどサハラのきみの青を混ぜていることだ!

  それから、なんと太陽の樅の木とバラそして
  つる植物がここでは閉じこもった遊びを持ち、
  かわいい寡婦の牢屋だ!. . .
                 なんたる
  鳥の群れなんだ、おお、ヤヨ、ヤヨ!. . .

  ― 静かな家々、昔の情熱の数々!
  あずまや、情愛によって狂った女の。
  バラの木々の後ろには、バルコニー、
  薄暗くとても低くジュリエットのだ。

  ― ジュリエット、それはアンリエットを
  思い出させる、魅力的な鉄道の駅も、
  山間にあり、果樹園の奥のようだ、
  そこでは千の青い悪魔らが空中で踊っている!

  緑のベンチ、そこで歌っているのは、色白のアイル
  ランド娘、雷雨の楽園でギターに合わせている。
  それから、ギアナの食堂での
  おしゃべり、子どもらや籠々のだ。

  公爵邸の窓でぼくが思うのは
  エスカルゴとツゲの毒、その木は
  この世で日差しを受けて眠っている。そして
  あまりにも美事だ! あまりにも! 黙っていようよ。

  ― 大通り、往来も商売もなく
  無言のあらゆるドラマとコメディー、
  無限の場面の集合だ、
  ぼくはおまえを知る、そして感嘆する、黙って。



若いカップル

2011-07-11 | Weblog

           若いカップル

   その部屋はトルコ・ブルーの空に開かれている、
   スペースがない、大小のケースたちで!
   壁の外には馬の鈴草がいっぱいある、
   そこかしこで小妖精らの歯茎がふるえている。

   まさしく精霊の陰謀だ
   そんな出費やむなしい散らかりは!
   アフリカの妖精が、黒イチゴを
   運んでいる。そして隅々にはネットだ。

   何人か入ってくる、不満足な代母らだ、
   すそを光らせ、食器棚のところに、
   それからそこに居残る! カップルは不在だ
   ほとんど不真面目で、それで何も行われていない。

   新郎は、自分をだます風に吹かれる、
   彼の不在の間、ここで、いつも。
   悪意のある水の精まで入ってきて
   アルコーヴのあたりをうろつく。

   夜、友の、おお!蜜月が
   二人の微笑みを摘むだろう、そして
   銅の千の目隠しで空を満たすだろう。
   それから二人は意地悪鼠を相手にするのさ。

   ― 青白い鬼火が起らないのなら、
   銃の発射のように、晩課の後で。
   ― おお、ベツレヘムの聖なる白い幽霊たちよ、
   むしろ魔法にかけろ、二人の窓の青色を!



忍耐の祭り

2011-07-08 | Weblog

          忍耐の祭り


          1.五月の団旗
          2.最も高い塔の歌
          3.永遠
          4.黄金時代


          五月の団旗

       菩提樹のまばらな枝々に
       猟師の病的な叫び声が消えて行く。
       だが魂の歌々は
       スグリの実々の間に飛び回っている。
       ぼくらの血が血管で笑うがいい、
       葡萄のつるの絡み合いになる。
       空は天使みたいにきれいで
       青空と海はひとつになる。
       ぼくは離れる。光線がぼくを傷つけるなら
       ぼくは苔の上で死のう。

       我慢しても退屈しても
       それはあまりにも単純だ。ちぇっだ
       ぼくの苦労なんか。ぼくは劇的な夏が
       運命の戦車にぼくを結ぶことを望んでいる。
       とてもおまえによって、おお自然よ、
       ― ああ! 孤独や無価値を少なくして!―
       死にたい。それなのに羊飼いらは、妙だが、
       社会によってほとんど死んでいる。

       ぼくは強く願っている、季節がぼくをすり
       減らすことを。自然、おまえにぼくは屈する。
       ぼくの飢えもあらゆるぼくの渇きも。
       そして、どうか、食べさせて飲ませてくれ。
       まったくぼくに幻想を抱かせるな。
       親たちに微笑みかけることだ、太陽にそう
       することは。だがぼくは何も微笑みたくない。
       そして自由であるがいい、この不幸は。

                    5月 1872



         最も高い塔の歌

          無為の青春
          すべてに屈従していた。
          繊細ゆえに
          ぼくは自分の人生を失った。
          ああ! 来てくれ、みんなの
          心が夢中になる時が。

          ぼくは自分に言った、ほうっておけ、
          そして誰にもおまえを見せるな、
          もっと強い喜びの
          約束なしに。
          何もおまえを止めてはいけない、
          厳かな引退だ。

          ぼくはさんざん我慢した
          いつまでも忘れていたいくらいに。
          恐れと苦痛の数々は
          天国に飛んで行った。
          すると病的な渇きは
          ぼくの静脈を暗くした。

          たとえば草原、
          忘却にゆだねられた、
          生い茂り花開く
          香る草と毒麦のある、
          かすかに凶暴な音のする
          百の汚いハエどものいる。

          ああ! 千のやもめ暮らし、
          そんなに哀れで
          聖母に
          似せただけの魂の!
          祈りを捧げるのか
          聖母マリアに?

          無為の青春
          すべてに屈従していた。
          繊細ゆえに
          ぼくは自分の人生を失った。
          ああ! 来てくれ、みんなの
          心が夢中になる時が!

                   5月 1872




              永遠

         見つかった。 
         何が? ― 永遠だ。
         太陽といっしょにいった
         海なんだ。

         見張り番の魂よ、
         告白をささやこうよ
         こんなに無能な夜について
         燃え上がる昼について。

         賛同する人々から、
         ありふれた高揚から
         そう君は解放され
         飛んでゆけ。

         だって君らだけから、
         サテンの燠らよ、
         義務は発散されるんだ
         ようやく、と言う間もなく。

         まさに希望はない、
         いかなる生誕もいらない。
         辛抱強く学問だ、
         責め苦があるのは確実だ。

         見つかった。 
         何が? ― 永遠だ。
         太陽といっしょにいった
         海なんだ。

                5月 1872          




             黄金時代

       声々のひとつは
       いつも天使のようだが
       ― ぼくについて ―
       厳しく説明する。

       その千の問いは
       枝分かれしていて、
       結局は、陶酔や狂気にしか
       ならない。

       見分けろ、この芸当を    
       とても陽気で、とても容易だ。
       それは波、植物相でしかない、
       そしてそれがおまえの家族だ!

       それからそれは歌っている、おお
       とても陽気で、とても容易だ、
       そして裸の眼には見える. . .
       ― ぼくはそれと共に歌う、―

       見分けろ、この芸当を
       とても陽気で、とても容易だ。
       それは波、植物相でしかない、
       そしてそれがおまえの家族だ!. . . 等々. . .

       そのうえまた声だ
       ― それは天使のようだ!―
       ぼくについて
       厳しく説明する。

       そしてすぐに歌う
       呼気に似て。
       ドイツ調だが
       熱烈で充分だ。        

       この世は悪徳だ。
       それがおまえを驚かすだって!
       生きろ、そして火にくべろ
       暗い不運なんか。

       おお! きれいな城よ!
       何とおまえの人生は澄んでいることか!
       いつの時代からおまえはあるのか、
       君主の自然
       ぼくらの偉大な兄の! 等々. . .

       ぼくも歌う、ぼくも。
       様々な姉妹たち! 声
       まったく公開されていない!
       ぼくを取り巻け
       慎み深い栄光で. . . 等々. . .

                6月 1872







渇きの劇

2011-07-02 | Weblog
            渇きの劇

           1. 祖先

       わしらはきみの祖父母、
          偉大じゃ!
       月と草木の冷たい汗に
       包まれておる。
       わしらの辛口の酒には心があった!
       欺瞞なき太陽を浴び
       何が人間に必要か? 飲むことじゃ。

   ぼく ― 未開の大河で死ぬことだ。

       わしらはきみの祖父母、
          田舎のじゃ。
       水は柳の木々の奥にある、
       見よ、堀の流れを、
       湿った城の周りにある。
       降りようではないか、わしらの酒蔵に、
       後で、りんご酒と牛乳じゃ。

   ぼく ― 雌牛が水飲むところへ行くことだ。

       わしらはきみの祖父母、
          つかめ、飲め
       戸棚のなかのリキュールを。
       紅茶、コーヒーは、珍品で、
       やかんのなかでコトコト沸いとる。
       ― 見ろ、絵や花を。
       わしらは墓場から戻ってるのじゃ。

   ぼく ― ああ! すべての骨壷を涸らすことだ!


           2. 精神

       永遠のオンディーヌたち
          純粋な水を割れ。
       ウェヌス、青空の姉妹、
          清純な潮を感動させろ。
       ノルウェーのさまよえるユダヤ人たち
          おれに雪を語れ。
       親愛なる古代の追放者たち
          おれに海を語れ。

   ぼく ― いや、もういらない、そんな清純な飲み物、
          コップ用のそんな水中花。
       伝説も絵も
          ぼくの渇きを癒さない。
       歌謡作者、きみの代子よ
          ぼくの渇きはそんなに気の狂った
       ヒュドラ、内心の口なしのだ、
          それは蝕み困らせている。


           3. 友人ら

       来い、酒が浜辺に達している、
       それで何百万もの波々だ!
       見ろ、野生のビター酒が
       山々の頂から転がり落ちるのを!

       たどり着こう、賢明な巡礼者よ
       アブサンへ、緑の列柱にある. . .

   ぼく ― もういらない、そんな風景は。
       酔いとは何か、友よ?

       ぼくは池のなかで
       腐ったほうがいい、
       恐ろしいクリームの下で、
       浮かぶ木々の近くで。


           4. 哀れな夢

       おそらく夕暮れはぼくを待っている、
       その時ぼくは静かに飲んでいるだろう
       どこかの古い都市で、
       それからもっと満足して死ぬだろう。
       ぼくは我慢強いから!

       ぼくの困難が甘受するなら
       ぼくがいつか金銭をいくらか得るなら
       ぼくは北の国を選ぼうか
       それとも葡萄の国か?. . .
       ― ああ、夢見るのは価値がない

       それはまったくの無駄だから!
       そしてぼくが再び昔の旅人に
       なるにしても、
       決して緑の宿屋は
       ぼくに開かれるはずもない。


           5. 結論

       鳩たち、草原で震えている、
       猟獣、夜見えて走っている、
       水の動物、隷属した動物、
       最後の蝶々!. . . みんな同じく渇いている。

       だがあの迷い雲が消えるところで
       消えること、― おお! 爽やかなものに
       恵まれて! 日々の暁がそれらの森を覆って
       いる濡れた菫畑の上で消えることなのか?

                   5月 1872.