「聖マリア教会」は既に瓦礫の山になっていて、神父がどこにも見当たらなかったらしく
おまけに物騒な連中が奥に住み着いていたらしい。
教会に避難してきた住民も大勢いただろうに・・・
これだけは言える、ここは間違いなく地獄だ!
マルコに以前訪れてみた「建設現場」の話をしてみたところ
ひょっとしたら資材がたんまり眠っているかもと行く気満々になっていた。
兵士らにばったり出会わなければいいのだが・・・
そんな心配をよそに「建設現場」は無人の廃墟と化していたらしい。
思ったとおり、資材どころか食糧まで山ほど残ってたぜ!
マルコはパンパンになったバックを叩いて喜んでいた。
しばらくの間、夜は「建設現場」に通うことになった。
もちろん食糧や水は貴重で、なくてはならない物なのだが
資材も無いとえらい困るんだ。
金鋸などの道具が作れないと探索が思うように進まないし
燃料が無ければストーブが焚けなくて凍え死んでしまう。
何気なく過ごしてきた日々の生活は
いろんなものに支えられていたんだなと、つくづく思い知らされたよ。
そして、雪積もる寒い日々が終わりを告げた。
ドアを必死に何度も叩く音に気がついて用心しながら覗いてみると
まだ幼い子供が二人立っていて驚いた。
どうやら母親が病気になってしまったようだ。
かわいそうに・・・
こんな銃弾が飛び交う真っ只中を、さぞ怖かっただろうに。
薬の在庫は一つしか残っていなかった。
けれど、反対する者は誰もいなかった。
バックに薬と食糧・水を詰め込んで、子供たちの隠れ家へと向かった。
今日から寝ずの番を二人でする事になった。
物資を調達できる所は限られている。
各地で避難している住民の中には食糧や水が尽きてしまった者もいるだろう。
探してもなかなか見つけられないとなれば・・・
こんな事、考えたくもないな。
ありったけの資材を使ってドアを強化した。
それでも、死を覚悟して襲撃してくる者がいるやもしれない。
命のやり取りだけはしたくないが、仲間を傷つけられるのも嫌だ!
もし、その時が来たら、俺は人めがけて撃てるのだろうか・・・
ここのところ、ローマンは暇さえあればギターを弾いている。
とても悲しげな音色だ・・・
元は兵士だったからと言って俺たちと同じ感情のある人間だ。
こんな状況は誰だって気が滅入るさ・・・
その日の夜は「倉庫」を訪れてみたんだが、最悪の連中が陣取っていた。
自分たちの都合だけで見境無く襲うなんて・・・
けれど、もし、自分の愛する者が危機的状況で
すぐにでも食糧や医療品が必要となった時、綺麗ごとを言っていられるだろうか?
今はまだ強盗などしなくても何とかなってはいるが
このままの状況が続けば嫌でも物資は尽きてしまう。
そうなった時、俺たちは・・・
いつぞや野菜を分けてくれたジフーが手伝いを求めてきた。
もちろん、手伝うさ!
張り切って出かけようとする俺の背後で
他人の世話を焼いてる余裕は、もう無いぜ・・・
ローマンが俯きながら静かにそうつぶやいた。
俺が顔をこわばらせて立ち止まっていると
ローマンは行ってこいと軽く背中を押してくれた。
朝になって隠れ家に戻ってみると、皆、疲弊しきっていた。
俺とマルコがいない間、銃で武装した賊たちに襲撃されたらしい。
薬莢が無数に転がり、ドアの近くは銃弾が何発もめり込んでいる。
ものすごい銃撃戦だったようだ・・・
弾が無くなっちまったよ。
ローマンは苦笑いしながらそうつぶやいた。
この日から寝ずの番は三人に増やす事にして
マルコには「駐屯地」で銃弾を調達してもらってきた。
食糧や資材より弾が必要になる日が来てしまうなんてな・・・
寝ずの番が三人という事は、当然昼間は四人とも爆睡・・・したいところだが
食事の用意やら道具作成やら、やらなきゃならない事はいっぱいあるんだよな・・・
ふぁ~あ、ねむぃ~ねむぃ~
昨夜、マルコは「半壊した二戸建て住宅」へ行ってみたものの
たいした物は見つけてこれなかったと嘆いていた。
もう手付かずの場所は、おそらく残っていないだろう・・・
誰も口にしないが、いよいよ食糧も水も底をついてきてしまい
みんな焦りと苛立ちが見え隠れするようになってきてしまった。
医療品も銃弾も残っていない。
今度、大掛かりな襲撃をされれば、ひとたまりも無いだろう。
どうする?
とは怖くて聞けなかった。
ジフーが先日のお礼だと酒を持ってきてくれた。
ここを出て行く時にジフーたちや俺たち皆で乾杯しようという事になった。
そして、俺たちの戦いは、ようやく終わりを迎えた。
※
単にサバイバルシミュレーションゲームというだけでなく
改めて戦争というものに対していろいろと考えさせられた
心に残る作品でございました。