gooブログはじめました!

非日常が日常として続いた結果

それでも私がここで働くその理由 第4話

2017-05-16 09:03:59 | ノンフィクションストーリー
電話交換手の求人募集で就職したこの仕事。

市の関係機関なのでK市のカレンダーに基づき勤務。基本的に土日祝日が休み。
お盆休みがなく、年末年始も市が定める休みが私たちも休み。

完全な月給で一月に何日働こうと休日が多かろうと基本給を割ることはない。

ただ、当たり前だけれど有給休暇をもらう前や有給休暇を使い切った後に休みをとれば日割り計算で給料が減る。

雇用保険、健康保険などの福利厚生もしっかりしていた。
それはフルで働く身の特典である。


狭い電話交換室、窓も無いので息苦しさを解消するように日常の他愛もないことを面白可笑しく話す私。
一応気を使って空気が和むようにと話していた。

ただ同僚黒田の反応が薄く(今の話、そんなにつまらなかったかな?)と私なりに反省したりめげたりした。
どんな話なら彼女が喜ぶんだろう?
身の回りのいろんな話をしてみたけれど、どの時も反応が薄い。

力が抜けたりガッカリすることの連続だった。

そうこうしていると秋も終わり冬に入った。
黒田のお舅さんに肺がんが見つかり手術を受けることになったそうだ。
黒田のご主人は地元の市民病院で検査技師として働いている。
「手術をどこで受けるか」と家族で話し合ったそうだ。
結果、県立中央病院で入院手術を、と決まったそうだ。

県立ちゅうおうびょういんまでこちらから車で1時間くらいの距離だ。
いくら紹介状があるとはいえ、いきなり入院できるわけではないので83歳だというお舅さんを黒田は車で送迎して外来受診を2度受けた。そういう日は病院から帰ってきて黒田は仕事に入った。

いよいよお舅さんが入院された。手術は2日後と。
黒田は「手術の日は旦那が仕事だから私が病院に行かなきゃならない」と私に話した。
ん?そういう黒田さんも仕事じゃない?
人の話しの矛盾点が心に引っかかる性分で自分がイヤになる。

大きな病気だし、いくら腹腔鏡下手術とはいえ手術当日は家族が病院に行くのは当たり前。
「お義父さんの手術、うまくいくといいね」とその日1日私1人で仕事をこなした。

その翌日の朝私の携帯がなった。黒田からだった。
「おはよう!今日お義父さんの病院に行ってから仕事に出るのでお昼過ぎに出勤することになります」

その日の午後2時過ぎに黒田は「すみませんでした。明日も午前びょういんに行くのでお願いします」
ダメとも言えずに私は承知した。
そういう日が4日続いた。
その4日目の午後黒田さんの携帯に電話が入った。
「あ!中央病院からだ。どうしよう」

交換室の外で話すと良いんじゃない?と促した。
廊下で話し終えた黒田が言った。
「お義父さんがおかしくなっていて看護師さんの言うことをきかないから今夜から泊まりに来て下さいって言われた。でも私は行けないし、どうしよう。お義姉さんか義妹に頼んでみるわ。少しの間お願いします」と部屋を出ていった。

私は日中病院に行くよりこういう時に行かなきゃならないんじゃないかな。と思った。
そして、もし彼女が本当に今日午前に病院に行っていたなら病院でその話をされたはずではないかと引っかかった。

「お義姉さんに泊まってもらうことになった」
と戻ってきた。