エンタテイメントを見つめたい

エンタテイメントな日々を考えます。

ネットと既存メディアの融合という未開拓分野と権利処理の落とし穴

2005年02月09日 | 企業・市場
 ニッポン放送の発行済み株式の35%を取得したライブドアの昨日の会見で強調されていたのは「ネットと既存メディアの融合とそこから生まれる相乗効果」だ。現在の状況としては親和性が高いと思われるネットとラジオやテレビといった既存メディアは相乗効果の関係にはほとんどない。確かに各テレビ局のウェブサイトでは番組の紹介程度のものしか見当たらず最大級のコンテンツホルダーであるテレビ局としては十分にネットを活用しているとは言えない。トレソーラというTBS、フジテレビ、テレビ朝日の民放3社が2002年に設立したコンテンツのネット配信会社がある。試験サービス中らしいが去年の10月からは何も進展していないようだ。著作権やプロダクションなどのしがらみがあるのは理解できが、3年経過しても本サービスの始まる気配すら感じられないのはあまりにも遅すぎる(この遅々とした対応が今回のライブドアにつけいる隙を与えたともいえるのだが)。要するにネットとメディアの融合というのは未開拓分野なのである。

 それではライブドアの描く融合とは具体的にどのような事業なのか。それはサンケイグループが持つ膨大なコンテンツの二次利用と、ネットと既存メディアの相互乗り入れだ。ニッポン放送を実質支配下に置きそれを足場にフジテレビやグループ全体への影響力行使がライブドアの本来の目的なのは容易に推察できるが、そのサンケイグループが持つ膨大なコンテンツをネットに流し込むことによる数次利用が最も分かりやすい事業展開だ。またテレビ番組とECやオークションといったネットコマースとの連動もあるだろう。ライブドアの資料によるとHDD(PCやHDD内臓DVDレコーダー)を介した既存メディアとの融合も考えているようだ。

 このようなライブドアの描く事業モデルは技術的には問題ないかもしれない。しかしネット配信に関わる著作権処理やその保護という以外と高い知的財産の壁の存在にライブドアは気付いていない可能性がある。以前にも書いたがテレビコンテンツの権利者はネット配信について必ずしも柔軟な姿勢を見せてはいない。技術的に問題が無くともネットに流すコンテンツが存在しなければ実もフタもない。ライブドアのいう「ネットと既存メディアの融合」にはフジテレビの協力が不可欠だがフジテレビはライブドアの業務提携を強く拒絶している。このことから芸能プロダクションなどの権利者から許諾を得るのも非常に難しいと思われる。記者会見でも認めていたがライブドアはコンテンツビジネスに秀でているわけではない。これが今後どのような影響を及ぼすのか。大きな落とし穴になりかねない。