このゆびと~まれ!

「日々の暮らしの中から感動や発見を伝えたい」

シルクの世界(シルクは繊維の女王)〔第1話〕

2017年04月27日 | 日本

先日、「日本の着物文化」についてお伝えしました。

その着物文化を支えたのはシルク(絹)です。

シルクは日本の着物を文化にまで発展させましたが、それを実現させたのは日本の「銀と銅」のおかげでした。

 

江戸時代には、シルクをもう輸入できないぐらいまで、銀や銅を使い果たしたのです。

そのシルクは世界の人々が昔から愛し続けた素晴らしい繊維だったのです。

今日は女性の目線も入れて、そのシルクの素晴らしさをご紹介します(全3話)。

 

シルクを特別な日の晴着として、身につけるようになったのは、近代になってからのことです。パリでもシルクの肌着が大もてで、ディオールの絹製肌着は、高価にもかかわらず他の肌着製品を圧倒、年間20%以上の売上げを示していると言われています。

 

女性の憧れの一つにシルクの商品は入るのではないでしょうか。20代を中心にした、あらゆる世代の女性にアンケートした結果、手持ちのシルク製品の中でもっとも多いのはスカーフで、80%強でした。ほとんどの女性が手にしているといえます。

 

続いてブラウス、下着を60%の女性が持っていることがわかりました。和服や、ハンカチを持っている人も多いようです。シルクの肌触り、しなやかさ、高級感は女性にとって魅力のある素材であることはもちろん、お肌への負担が少ないということからも大人の女性の証しとして、身につけられているようです。

 

以前、テレビのクイズ番組の問題のひとつに、「イギリスの元首相サッチャー夫人は、毎晩お風呂の中で肌をキレイにするために何をやっているのでしょう?」というものがありました。答えは、「シルクのスカーフで毎日、体を洗っている」ということでした。シルクは磨くだけでなく、素晴らしいパワーを秘めているのです。

 

私たちの肌は、順応性が高く、柔らかいものでこすれば柔らかくなり、硬いものでこすれば硬くなる性質があります。例をあげれば乾布摩擦などがそうで、乾いた布でゴシゴシこすると、皮膚は鍛えられて硬く、強くなります。また、はだしで歩いたりすると、足の裏はコチンコチンに硬くなります。

 

つまり、皮膚は硬いもので洗うと、それに負けまいとして、より硬くなるわけです。柔らかい肌になりたいと思うなら、シルクのような柔らかな素材のものを使うといいのです。毎日根気よくシルクのタオルで洗っているうちに、自然と古い角質が落ち、次第に柔らかくなります。

 

シルクのタオルが、垢すりの効果を持っていることをご存じない方がまだまだ多いのです。

シルクの繊維は断面が三角形をしており、優しく垢を落とすのにもってこいの構造をしています。

 

シルクは使えば使うほど、微細繊維が毛羽立ち、肌から垢を落とすのに適した状態に変化していきます。もちろん皮膚そのものを痛めることはありません。柔らかいシルクだからこそ、その洗い上がりも抜群です。パールのようなツルッと感に仕上がります。そんな垢すりに使えるタオルは、月に2回くらいを目安にお肌を磨けばよいとのことです。

 

前置きが長くなりました。それではシルクの世界をご紹介します。

 

シルク(絹)は4大天然繊維(絹、麻、木綿、羊毛)の一つで、幼虫である蚕(かいこ)が作る繭(まゆ)から取り出した動物繊維です。

 

蚕から生まれる繭糸は、断面中央部の「フィブロイン」(約70~80%)と、その外側を包み込む潤滑性のある「セリシン」(約20~30%)の2種類のタンパク質で構成されています。

 

繭から紡いだばかりの繭糸は表面に付着しているセリシンによってシルクの布のような独特な光沢はなく、手触りもゴワゴワしています。それを絹織物にする際に精練という工程において余分なセリシンを落として絹独特の光沢や手触り感を出すのです。ですから、皆さんが知っているシルクとは実はフィブロインのことなんです。

 

繭糸を精練すると、フィブロインが抽出され、絹糸がつくられます。このとき取れたセリシンは、天然保湿因子に似たアミノ酸組成をもち、肌のうるおいを保持する効果が期待されており、クリームや美容液などに活用されています。

 

したがって、シルクの主な成分は、18種類のアミノ酸から成るタンパク質「フィブロイン」です。人間の肌にもっとも近い繊維と言われ、肌に優しい繊維として昔から大切にされてきました。


ここで、「生糸」と「絹糸」の関係を少しだけご紹介。

蚕の繭糸を何本か抱合させて1本の糸条にしたものを「生糸」と呼び、加撚や精練などを施してないものをいいます。絹糸は生糸を含めず、精練した糸のみをいうことが多いのです。

 

蚕が自分の口から吐き出したタンパク質の糸(生糸)を自分の身体に覆い、繭が出来上がります。

繭は全て「生糸」で出来ています。繭は通常外側の方から作られて行き、段々と内側に形を作っていきます。

 

その生糸をアルカリ性の薬品(石けん・灰汁等)で、「精錬」という作業をし、生糸の外周部を覆っている「セリシン」というタンパク質を取り除いたものが「絹糸」なのです。

 

ちなみに1個の繭からとれる繭糸を1本1本つなげると、約9000メートルの長さになるそうです。凄いですよね。健康な蚕は、糸を切断することなく2日から3日にわたり、1500メートルにも及ぶ糸を吐き続け繭を作っていきます。その1本1本の分子の繊維は4億本が束になっているとのことです。絹の繊維がいかに極細なのか、分かっていただけたでしょうか。

 

1本の繭糸は、10kmの長さが3グラム位、非常に細い糸ですので、何本かが束ねられて織物の原糸、生糸が作られています。そういう生糸が1着の着物を作るのに、300km 以上の長さが必要です。道具のなかった古代の糸繰りは大変な根気仕事だったと思います。繭作り、糸作り、織り、染め、そういった手仕事が、今から3,500年程前、既に行われていたのです。

 

蚕の大好物は桑の葉ですが、桑の葉には、タンパク質や炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラルなど蚕の成長に必要な栄養素がたっぷり含まれています。そして、桑の葉の種類によって繭の品質が違ってくるということでした。

 

余談ですが、桑の木に実る濃い紅色の実はマルベリーとも呼ばれ、中国では漢方薬として使われています。ラズベリーのような甘みと酸味で美味しい果実ですが、色素が濃いので衣服や手につくと、なかなか落ちないとのことです。

 

繭内の蚕は脱皮してサナギとなり、約10日間その中で過ごしたのち、繭を破り出てきて成虫となります。蚕は一生の間に、卵⇒蚕⇒蛹(さなぎ)⇒成虫へとその姿を変え、2ヶ月以内で蚕の一生は終わりとなります。

 

このあとは、第2話「シルク繊維の特長」へ続きます。

 

---owari---

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 未来は変えることができる | トップ | シルクの世界 (シルクは繊維... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日本」カテゴリの最新記事