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音楽大好き男の徒然なる日記

平和憲法と「戦争の影」/「国民を守る」を貫くためには(朝日新聞社説)

2024-05-03 | 日記
朝日新聞 2024年5月3日付
「平和憲法と「戦争の影」 「国民を守る」を貫くためには」
  https://digital.asahi.com/articles/DA3S15926228.html?iref=pc_rensai_long_16_article


「台湾有事」をにらんだ自衛隊の南西シフト、
戦闘機をはじめとする殺傷兵器の輸出解禁、
指揮統制の連携を含む日米のさらなる一体化――。

一昨年末の安保3文書の改定で、敵基地攻撃能力の保有を認め、
平和憲法に基づく「専守防衛」の原則を空洞化させた岸田政権が、
国民への十分な説明を欠いたまま、急ピッチで防衛力の強化を進めている。

それは今、人々の生活や意識の中に、安心というより、
「戦争の影」を落とし始めている。


■全島避難は「不可能」

沖縄本島の那覇より、台湾の方がずっと近い石垣島。
市街地の向こうに青く輝くサンゴ礁の海を望む南部の高台に、
比屋根和史さん(48)の牧場はある。

島内で2万頭以上が飼育される肉用牛は「石垣牛」として知られる主要産業だ。
比屋根さんは母牛や子牛約80頭を飼い、
生産農家でつくる組合の組合長も務める。

生まれ育った島に陸上自衛隊の駐屯地ができて1年が過ぎた。
台湾有事が差し迫れば、政府は全島民約5万人を九州などに避難させる計画だが、
「この子たち(牛)は家族と同じ。
 避難すれば見殺しにすることになる。
 そんな決断ができるだろうか」。

石垣市議会は、全国でも異例の特別委員会を設置し、
有事の際の住民の避難について議論してきた。

特別委員長の花谷史郎市議(41)は
「市民生活の現実に即して議論するほど、
 全島民の避難を求める今の計画は不可能に近い」と話す。

仮にできたとしても、島は元に戻らないと思う。
「戦争のリスクがあって全員が避難した場所に、どれだけ観光客が戻るか。
 牛が死ねば、主要産業の大部分が失われる。
 戦争が回避されても、島の形は相当変わってしまう」


■住民の理解が不可欠
戦火の下では、憲法が掲げる個人の尊厳も、自由や人権も、守り通すのは難しい。

極端な国家主義や軍国主義が招いた戦争への深い反省から
制定されたのが、今の憲法である。戦前の
「国家のために個人がある」から、
「個人のために国家がある」へと転換した意義に、改めて深く思いを致すべきだ。

防衛力の抜本的強化の影響は、南西諸島など沖縄だけにとどまらない。

自衛隊や海上保安庁が平時から円滑に利用できるよう整備する
「特定利用空港・港湾」の第一弾には、石垣港、那覇空港に加え、
九州5、四国4、北海道5の計16カ所が指定された。
地域住民の間には、有事の際、標的にされかねないという不安もある。

外国からの武力攻撃を想定したシェルター(避難施設)の整備も本格化する。
まずは、石垣市など沖縄の先島諸島の5市町村が対象だが、
政治経済の中枢を含む都市部への拡大も念頭にある。
予算の制約もあり、カバーできる範囲は限られる。
住民を残らず確実に守れるわけではない。

地域住民や自治体の理解なくして、計画が進まないのは、
陸自が沖縄県うるま市につくろうとした新たな訓練場が、
地元の強い反対で白紙撤回に追い込まれた顛末(てんまつ)をみれば、よくわかる。

ただ、政府は沖縄県の米軍普天間飛行場の移設については、
自治体の権限を奪う異例の「代執行」を使って辺野古の埋め立てを強行している。
今の憲法が、民主主義の基盤として、
明治憲法にはなかった「地方自治」を保障した意義を損なう行為だ。

「安全保障は国の専権事項」とも言われるが、
民主主義国家において、民意と乖離(かいり)した政策を安定的に続けられるわけがない。



■有事起こさぬ努力を
自国の安全を高めようと軍備を増強したら、相手国も軍事力の強化で応じ、
かえって安全が低下することを「安全保障のジレンマ」と呼ぶ。

専守防衛は、他国の脅威にはならないという宣言であり、
対決のエスカレートを防ぐうえで、一定の役割を果たしてきた。

その矩(のり)をこえて、防衛力の整備を急ぐ岸田政権は、
外交においても、日米同盟の強化と、中国に対抗するような多国間の連携の枠組みづくりや、
「同志国」との安保協力の深化に余念がない。

一方で、緊張緩和や信頼醸成をめざす努力は、
後回しになっているようにみえる。

中国と覇権を争う米国は、バイデン大統領が昨年11月、
習近平(シーチンピン)国家主席と会談。
この4月にはイエレン財務長官、ブリンケン国務長官が相次いで訪中するなど、
高いレベルの対話を重ねている。

ひるがえって日本は、首相が同じ11月に習氏と会談し、
「戦略的互恵関係」を確認した後は、首脳・閣僚級の対話は途絶えたままだ。

国を守るとは「国民を守る」ことだ。
備えは大切だが、憲法の掲げる自由や人権といった諸価値を守り抜くためにも、
戦争を起こさせないことが第一である。

政府は力一辺倒ではなく、
外交を含む重層的な取り組みに全力を注ぐべきだ。

平和国家の内実が今ほど問われる時はない。


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「77回目の憲法記念日。
 「改憲急ぐ必要がないが65%(共同)。」
 ウクライナ、ガザ…
 正義の名の下に、殺されていい命は、一人もいなかったのではないのか。
 憲法9条守り、戦火を呼び込む国には、絶対にさせない! 」
  伊藤岳さん(日本共産党)のツイートより。








 バナー提供:滑稽新聞@民主主義の出発 さん


2024年5月3日付訪問者数:192名様
お付き合いいただき、ありがとうございました。

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