『古道具 中野商店』 川上弘美著 新潮社刊
「わたし」であるヒトミは中野春夫の下で、アルバイトをしている。
もう一人の同僚タケオとはぎこちない恋人同士。
春夫は西洋古道具店主のサキ子が恋人。
春夫の姉のマサヨは丸山が恋人。
それぞれの恋愛模様が率直に描かれてるのに、やらしくないのは何故だろう。
斜(はす)にならないで、正面から向き合っているからだろうか。
ヒトミとタケオに小さな声援を送っている自分に気づく。
この二人は、二つのカップルを思い出させた。
かわいそうって事はほれたって事よ、の名文句の夏目漱石著 『三四郎』の三四郎と美禰子(みねこ)。
吉田修一著 『横道世之介』 毎日新聞社刊の世之介と祥子ちゃん。
最終ページの世之介が生きていることを強く願ったことは久しくない。
『古道具 中野商店』の読後ほど、すっきりした、ことは最近無い。