第70回名古屋大学防災アカデミー
平成23年6月6日(月)18:00~19:30 環境総合館1階レクチャーホール
「東北地方太平洋沖地震による津波災害と、これからの備え」
(独)港湾空港技術研究所 アジア・太平洋沿岸防災研究センター
上席研究官 冨田孝史 氏
1.東北地方太平洋沖地震と津波について
2.地震調査委員会による地震発生領域区分の関係
3.津波の痕跡の高さ
4.「津波の高さ」 浸水高・溯上高・浸水深
・岩手県 リアス式海岸 高い
・仙台 平野 机の上に水をこぼす感じ
5.PARI/NILIMの調査結果
岩手県 死者4520人 行方不明者2842人 全壊20945戸
宮城県 死者9166人 行方不明者5058人 全壊70035戸
福島県 死者1590人 行方不明者394人 全壊14788戸
警察庁(6月3日時点)
明治三陸津波より大きい 規模広範囲 常磐津波?
6.津波の発生の仕組み
普通の波(数10m~数100m)と津波(数㎞~数10㎞)の違い(動画で)
7.これまでの津波の発生個所
8.東北地方太平洋沖地震による津波被害
・津波防波堤の被災
・一般防波堤の被災
・護岸の被災
・浸水
・漂流物
・洗掘
・港湾の施設の被害
・オイルタンク
・火災
8.防波堤の被災
・防護計画:湾口防波堤と防潮壁
・明治三陸地震津波対応
9.釜石湾口防波堤
「東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ」によるデータ
・両石湾 溯上32.6m箇所、29.7m箇所 →17~19m
・釜石湾 溯上30.4m箇所、22.0~28.3m →7~11m
・唐丹湾 →11~19m
防波堤の効果 5分の3に軽減
10.八戸港およびその周辺の津波痕跡高
11.津波と波の違い(実験を動画で)
波:10秒 波長92m 速さ 時速33㎞(水深10mで)
津波:20分 波長12㎞ 速さ 時速36㎞(水深10mで)
木造家屋は2mの津波で全壊
12.漂流物
13.「洗掘」 防波堤の間 護岸、埋立地の角(偶角部)
挟められたりしたことにより津波の速度が増し、掘れて陸地が欠損
14.これまでの津波被害(人的被害について)
海外の事例
15.2010年2月チリ地震津波避難実態
・津波警報は、第一波来襲後に解除ー多くの住民は、警報の発表知らず
・揺れからの避難ー1960年の体験
・避暑客などが多く被災ー避難場所が分からない
・車で逃げ、渋滞にー車ごと流される人
・警報解除で居住地に戻った人が被災ー4波目が最大(地震から約4時間後)
・多くの人は少なくとも3~4時間は丘の上
16.2010年10月ムンタワイ諸島津波避難実態
死者・行方不明者:500人以上
・マラコパでは
1.4~5.5mの浸水深を生じた津波が襲ったが、死者数はゼロ。
これは、津波の来襲に先立って「ゴー」という津波の来襲音を聞いた人が、
「津波だ」と叫びながら集落の中を通って集落背後の丘陵地に逃げたため、
他の人に津波来襲がわかり、集落全員が避難したことによる。
・ムンタイバルでは
4.5mの浸水深に達する津波が海と川の両方から来襲し、100人が流された。
これは、避難方向に川があり、その川にかかる橋が流されたため、逃げ遅れて
被害が増大した。
2004年インドシナ津波 マレーシアの海岸(1mの津波が到達した動画)
17.流れの中の人の安全性/危険性
・20㎝の津波でも速度が速ければ逃げられない。
・70㎝の津波だと安全避難が困難な領域。
18.防災の考え方 人命損失を抑えるために!
・地震が起これば、避難!
一般には大きな揺れ→大津波
しかし、揺れが小さくても大津波が来襲したこともある(津波地震)
・近くの避難場所
できればより上に逃げられる場所
19.避難対策
・被害想定ーハザードマップ
リアルタイムハザードマップ(現在、計測に15分程度かかる)
防災体制の強化
地震、津波・高潮に関する情報を収集
水門や陸扉を一元的な遠隔操作で閉鎖
地域の脆弱性評価
・意識向上ー防災教育
・情報伝達ー警報など
GPS波浪計による沖合津波観測(国土交通省港湾局)
・避難施設ー緊急避難場所
20.被害予測技術
建物などを考慮/漂流物などの考慮
ユーザーに分かりやすい結果表示
21.まとめ
・設計津波を上回る津波
一般の防波堤や津波防波堤が被災
・計画対象津波を上回る津波
防潮ラインの内側にも津波が侵入し被災
船舶 コンテナ 車両などの漂流物
一方で
・構造物の効果
・標高が高い所では被害は少なめ
特に
・人の命を守るために
まちづくり、防護施設、防災体制を合わせる
22.名古屋における沿岸防災
津波の想定
中央防災会議 想定M8.7 → 名古屋1~2m
伊勢湾台風 345㎝
*福和名古屋大学教授団*
名古屋大学 想定M9 → 名古屋3~4m
・自分の住んでいる場所の標高を確認する
(揺れ、浸水、液状化は、河川部、沿岸部ほど大きくなる)
名古屋の昔は遠浅だったが、現在、しゅんせつにより海底が変わり、予測不能
仙台市は平野部で人口多く、人的被害は多い。
三陸部は平野が少なく人口少なく人的被害が少ない。
名古屋は濃尾平野地なので、人口は更に多く、被害は東北の5倍を予想
23.防災対策
・相手を知る!
既住の津波、高潮など、起こりうる津波、高潮を想定
・自分を知る!
地域の弱いところ、要援助者など
質問
・1波、2波、3波、4波の違い
陸地、海底域の山などに当たった波が返ってくる違いから、
大きさ、時間が変わるので予測は不可能。
・防波堤の違い
一般防波堤→荷役の積み下ろしに安全に。
高潮防波堤→台風などの高潮に備えて
湾口防波堤→津波、荷役の両方
防潮堤→津波は想定していない。津波の引き潮に備えていない。
次回:
第71回名古屋大学防災アカデミー
「東日本大震災の発生予測をめぐる諸問題」
講師:東京大学名誉教授・地震予知連絡会会長 島崎邦彦氏
平成23年7月4日(月)18:00~19:30 環境総合館1階レクチャーホール
告知
名古屋大学 震災関連シンポジウム
「東日本大震災から学ぶ」
平成23年6月11日(土)13:00~17:20
名古屋大学 豊田講堂
対象:一般市民 参加:無料 申し込み:不要
名古屋大学災害対策室
http://www.seis.nagoya-u.ac.jp/taisaku/
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