日本語教師ブラジル奮闘記

ブラジル生活裏話

ズボンの裾上げ

2009年08月29日 10時45分47秒 | ブラジル事情
 僕はRENNERという店でズボンを買う。

 足が短いので、ズボンを買ったら必ず裾上げをしなければならない。基本的に、ブラジルの服飾店はそのお店で裾上げをしてくれない。だから、ジーパンなどを買っても、自分で裾上げをしてくれる人を個人的に探さなければならない。

 このRENNERという店は、裾上げ代はズボンの代金に既に含まれている。仕上がりに3日ほど待たされるが、便利なのでここでいつも買っている。

 買って間もない2本のズボンの片方の裾の縫い付けが取れてしまった。そのため、せっかく会社に履いていくズボンのレパートリーを増やしたのに、その2本が履けなくなってしまった。

 それではもったいないということで、今週ショッピングセンターの裾上げをしてくれるお店に持って行った。恐る恐る値段を聞くと、今日の仕上げで25へアイス!(1250円)、明日までの仕上げで20へアイス(1000円)と言われた。

 高い!高すぎる!!僕はこのズボンを29へアイスだか39へアイスで買ったのだ。ただズボンの片足の裾を直してもらうだけで、それだけの値段は払えない。なぜなら、新しいズボンを買うのとほぼ変わらなくなってしまうからである。

 顔を引きつらせながら、「ああ、じゃあやめます」と言って店を後にする。ショッピングセンターを歩き回りながら、ふと「25へアイスってズボン2本の値段なんじゃないか」という考えが頭をよぎり、恥ずかしながらも、再度お店を訪れた。

 「25へアイスって、ズボン2本分の裾上げの値段ですか?」

 女性の店員は、一呼吸置き、にやりとした笑いを口元に浮かべながら、「いいえ、1本の値段です」と答えた。 僕はその答えを聞くなり、逃走兵のようにその場から退散した。

 29へアイスのズボンに25へアイスの裾上げ料!!いやー、無理だ。絶対払えない。いくらショッピングの場所代が高くても、ここまで高い料金は受け入れられない。

 僕が会社に戻って、事の顛末を運転手に話し、誰か裾上げできるプロの人を知らないかと聞くと、僕は住人の多いアパートに住んでいるから、管理人に聞いたら、誰かしら紹介してくれるだろうとのアドバイスをくれた。

 なるほどと思い、その通り実行した。管理人さんは僕が住む棟の4階のおばさんを紹介してくれた。さっそく、そのアパートに行くと、私は結婚式の衣装とかを作るのが専門で、裾上げが専門ではないし、今は仕事が立て込んでいると言いつつも、可哀想だからと仕事を引き受けてくれた。
 
 裾上げ代は2本で10へアイス。翌日に取りに行った。ショッピングセンターで仕事を頼んだら2本で50へアイス。40へアイスの節約である。

 社会というのは助け合いで成り立っている。誰もが日常のすべてのことができる訳ではない。みんな自分が好きな事や才能があることを長く続け、専門性を極めていくのだ。そして、そのサービスを必要としている人に提供して社会に貢献する。当たり前の事だけど、実際にそういう場面に直面しないと分からないものである。

 「裾上げ」は僕の能力ではできない技術だが、おばさんにとっては容易い事。僕は自分ができないことをできる人を尊敬する。憧れもある。できたらいいなあって。でも、世の中を生きていく上で全部できる必要はない。何か好きな事に特化し、自分の価値を高めていけばそれでいいのである。

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