獣医みならい留学記

オーストラリアで獣医を目指して頑張ってます!メルボルンの情報なんかもあるよ!

プロフェッショナルであると言う事。

2007年09月19日 | 獣医学科
一日目、二日目と朝8時~夜9時半、朝7時半~夜8時半で昼休憩5~10分
なんてなかなか忙しかったんですが、今日は思いの他早く帰って来れました。
前の時にも書きましたがオーストラリアにおいても相当有名な整形外科の先生の所で研修をしています。
基本的に去勢手術など簡単な手術はなくて、
他の獣医さんが手におえないようなケースばかりをやっている所です。
まぁ、折れた骨をプレートとネジで固定するだの骨を切って位置を変えてピンで固定するだの
去勢手術なんかとはかなり趣の異なることをやってます。
どうやら日本へも講演で行った事あるとか。
傍から見てても忙しすぎるのにそんなそぶりを見せず、凄いフレンドリーでいい先生です。

そんなわけでその先生によって救われたワンちゃん猫ちゃんも沢山いるわけで
ほんとに凄いなぁとおもう反面、やっぱり自分のしたい事はこれじゃないとも思ったりしてます。
何ていうか、獣医も流れとしては人間のように専門化が進んでいるんですが
僕が動物病院で働きたいのは飼い主さんと話がしたいからと言うのもとても大きいんです。
自分にとっての目標は人間と動物の距離を縮めて共存できる社会にすると言うことだから
その飼い主さんにとってそのペットがどんな存在でそれによってどんな風に人生が変わって
そしてそのペットが飼い主さんによってどのようになったのかと言うのを見て聞いてすると言うのは
本当に楽しいことなんです。
自分にとっての理想は病気を上手く治療できる事ではなく病気にしないことだから
日々、予防接種ばかりしていても構わないんですよ。
ずーと健康にいられればそれに越した事はないですから。

人間に比べてペットの一生は短いですから、出会いから永遠の別れまで見届ける事も多いです。
だから、その分自分は生まれた時から死ぬ時までをトータルでカバーして
ペットにとってもその飼い主さんにとっても掛け替えのない時を送る手助けがしたいんですよ。
難しい骨折が治せる獣医さんより、自分は骨折になりにくい丈夫な体を作る指導ができる方がいいし、
難しい病気が治せる獣医さんより、これまた病気にならない体を作る方がいいんです。
でも、絶対に難しい怪我や病気も起こるからそういうのが治せる獣医さんも絶対に必要なんです。
ただ、自分はペットを家族の一員として迎えた時から天国へ行くのを見送るまで
ずーと面倒を見させてもらって、
「先生に言われて色々やったけど、こんなに死ぬまで元気ならそんなにする必要なかったんじゃない?」
なんて冗談言われるぐらい元気な一生を送らせてやれたら最高だなって思ってるんです。
傍から見て難しい事できなくてもいいから。

そんな自分の観点からするとここの飼い主さんの多くはほんとにいい人ばかりで
みんな自分のペットを子供のように大事にしてるし、それによって人柄まで大らかな気がします。
本当にいい人ばかりなんですよ。
だから、みんな拙い英語をしゃべる僕に対しても優しく接してくれますし、
僕が獣医さんの代わりに検診で話を聞いていても嫌な顔せずに話してくれます。
でも、自分は日本語だったらもっとやれるんだよ!
前の研修先で獣医さんが自分に関して凄く評価してくれて
「人間の人柄は学校で教えられるものじゃないから」
って言ってくれたけれど、やっぱりお金を頂くプロフェッショナルとしての獣医が
言語で躓いているのは許されないんじゃないかって。
お金をもらう者が相手に気を使わせてどうするのか。
もしだけれども、自分がここで仕事先を見つけられたとしても
自分で自分がお金をもらって獣医としてやっているのは許せない気がします。
それは何より自分が重視しているのがコミュニケーションで、
その能力がまさに自分に大きく足りていないという事だから。


「自分の努力が足りなかった。」
そう言ってしまえばそうなのかも知れないけれど、
ホントに馬鹿みたいに簡単な単語が聞き取れない事もあるんだよ。
泣き言を言えばそこで成長が止まる気がするから言いたくないけれど、
こんな言葉が違うだけで自分の思い通りにならないのは本当に悔しい。
とりあえず、言葉を抜きにしたら一人前の獣医になれるように頑張ろう。
今はまだ全てが言い訳に過ぎないから。
でも、やっぱり卒業しても自分がここでお金をもらって獣医としてやる事を許せない気がする。
プロフェッショナルとして・・・

あとたった1年しかない・・・

2007年09月16日 | 獣医学科
明日から2週間、外科の権威のような先生のところで研修です。
時間的にも精神的にもイマイチ余裕をもてない今日この頃なので
ほんとブログもほったらかしですが、頑張ってきます。
期待と不安で半々ですが・・・

獣医師として独り立ちするのにあと一年しかない。
その事に関しては獣医学の知識、技術もそうですが、
プロフェッショナルとしてあるべき自分の拙い英語力も相当悩みの元です。
お金を取って患者を診る立場のものが英語が完璧でなくてどうするのか?
飼い主さんの仰る事を全て聞き取れなくてどうするのか?
近い将来日本に帰るのですが、日本の獣医国家試験の日程上
卒業後すぐの帰国しても1年半は獣医師として何もできない空白期間になります。
当然国家試験は日本語ですから勉強は相当必要ですし、
その期間日本にいたとしても他にも有意義な過ごし方は色々あるでしょう。
ただ、もしこちらに数年残って獣医師として働けるなら
今後獣医師としてやっていく上でそれに越した事はないと思うんです。

色んな意味で悩みが多いです。
あとたった一年しかない・・・

えぇ!あれもこれも麻薬なの!?

2007年09月07日 | 獣医学科
ニュースでマークパンサーの奥さんが麻薬所持で捕まったと知ってちょっと動揺しています。
正直、マークパンサーの奥さんが捕まったのはどうでもいいんですが(失礼!)
問題は捕まった原因となる麻薬です。

「ケタミン」

この薬はとても麻酔薬として有用で犬猫だけでなく馬や野生動物向けに至るまで
オーストラリアでは大変よく使われています。
効果としては

・鎮痛作用
・筋肉を弛緩させない
・心拍数を上げる
・心拍出量を上げる
・血圧を上げる
・呼吸抑制作用が弱い

と言うような効果が挙げられ、特に一般的な麻酔薬が心拍数や心拍出量を下げ
低血圧も伴って血液の巡りが悪くなるのとは対照的ですし、
これまた呼吸抑制作用が弱いというのも特徴的で大変有用です。
代わりのものが効かないようなタイプの麻酔薬なんですよ。
馬の獣医さんも「ケタミンが出てきて麻酔が全く変わった。」と言うぐらい。

ただ、同時に解離性麻酔薬と呼ばれ感覚が切り離されるものの無意識ではない
と言うような特徴から今回のように麻薬として使われる事もあったようです。
ほんとに一部の頭の悪い連中のせいで有用な麻酔薬が使えなくなるわけですから
迷惑極まりないですよ!
獣医師にとってもその恩恵に預かる患者さんにとっても・・・

「まぁ、そうは言ってもモルヒネだって使いすぎたら人間失格になるんだしなー」

と思っていたら、日本では既に麻薬指定でした。orz
何というかこっちで普通に使っている麻酔薬が日本では麻薬指定だったりするのを見ると
如何に危険と隣り合わせの薬を使ってるかって事を感じます。
まぁ、言ってしまえば
「大麻に酔う」という状態をそもそも「麻酔」と呼んだのですからね。
つまりは如何に有用な物でも使う人によって薬にもなれば毒にもなるって事ですよ。
結局、使う者の次第なんですよね。
改めて、こりゃ日本に帰ったら色々ギャップがあるだろうなーって感じた事件でした。

緊急病棟は戦場なり

2007年09月05日 | 獣医学科
今週は緊急病棟です。
みんな週4回のシフトで朝シフトは7時から13時、夜シフトは18時から0時な感じになってます。
ちなみに14時から17時は通常通り講義です。
朝シフトは起きるのが早いので辛いのと、夜シフトは他の動物病院が開いてないという事で
急患の飛込みが多く時に戦場と化します・・・

昨日は僕は夜シフト。
以前、緊急病棟担当だった時に初日に右も左もよくわからない状態で

「よし、急患だから診察に行って来い!」

「まじで?!!!(´ロ`ノ)ノェェエエ」

ってな勢いで2回も診察に行かされ、飼い主さんから事情を聞き患者を一通り診察して
その後他の患者の治療に忙しい獣医さんの所へ報告に行くというような事をやりました。
やはり緊急病棟にいるような子は常に気を配ってないといけないので24時間交代ですし、
4時間ごとに体温や脈、呼吸のぐあいなどをチェックします。
大抵何かしら薬もあげる事になりますし、頻繁に採血もします。
という事で何かやる事がある分楽しい反面、ちょっと緊張するとこもある所なのです。

で、昨日もどうかなーと思っていたんですが、ビックリするほど暇で
やる事ないので急遽あるケースに関してディスカッションをしてたぐらいです。
緊張もするのですが、さすがに数回こなして少しずつ慣れてきたので
ちょっと診察するのも楽しみだったんですが今回は機会に恵まれませんでした。
まぁ、そうは言っても23時半とかから帝王切開のオペが入ったりして帰ったのは
夜中の1時半だったんですけど・・・

それよりずっと前にある猫の検診を獣医さんとしていました。
その猫は甲状腺機能亢進症と言って甲状腺ホルモンが沢山出てしまう病気だったんですが、
その病気にかかると簡単に言えば新陳代謝が良くなり過ぎて問題が出る病気です。
猫ちゃんには珍しくない病気なんですが、1つ特徴を挙げるとすると代謝が良くなる為痩せます。
「えー、それならなりたい!」
と思う人ももしかするといるかも知れませんが(笑)、実際にはそんな悠長なものではなくて
その猫ちゃんもガリ痩せで背骨の一つ一つががハッキリわかるほど。
加えてこの猫ちゃんはガリ痩せなのにポンポンのお腹をしてまして
膀胱が膨らんでるのかもという事で尿道を通して膀胱までカテーテルを通す事になりました。
明らかに健康とは程遠い体をしてるので一番安全で即効性の麻酔をほんの少し使って落ち着かせ
カテーテルを獣医さんが通しにかかりました。
で、僕は猫ちゃんを押さえてたわけなんですが、突然猫ちゃんがビクッビクッとし始めたんですね。
それで

「えらく反応してんだねぇ。」

とか初め言っていたんですが、一端カテーテルを通すのをやめたのにまだビクビクしてる。

「ヤバイ!!!心臓動いてない!!!!!」>獣医さん

「嘘だろ!!!!!Σ( ̄ロ ̄lll)」>僕

ってなわけで、その後は他の獣医さんも飛んできて急いで蘇生措置。
何とか、その猫ちゃんは三途の川の向こうから戻ってきてくれました・・・
結局、その後また安楽死させる事になったんですけれども。。。

確かに、多分皆が見た事ないぐらい痩せこけて明らかにやばそうな猫ちゃんだったんですが
僕からすると一番安全だって言われてる麻酔でほんの少ししか使ってないのに
時には死に至るんだなぁって改めて知ってちょっと衝撃でした。
あと、動いてるのに心臓止まってるとか・・・
確かに先日レントゲンを撮っていた時も1頭の重病なワンちゃんが手術の前に
麻酔をかけられた状態で来たんですが、自分で息してない!という事で
人工呼吸器を使って呼吸させたりしていて頑張っていました。
両方ともかなりの重病患者だったのは間違いないですけど、
こう考えると麻酔って難しいし怖いなって思います。
人間でも麻酔科医というのがいますし、ここメルボルン大学の獣医学科でも
麻酔の先生っているんですが、今は専門分野にする理由がよくわかります。