「左席」

印象に残るフライトを内面的に分析して小説風に書き綴ります

CRUSE(巡航)-2

2015-12-19 | 小説

那覇ー石垣便の巡航時間は飛行高度にもよるが標準高度では12分ほど。

長い路線ではコーヒーも入れてもらえるが短い路線ではそんな時間は無い。
巡航に入りほっと一息ついたら直ぐに着陸のために降りる準備をしなければならない。

石垣の天気情報、代替飛行場(宮古空港)の天気をもらった。
天気情報が入れば着陸のイメージが浮かぶ。
進入方式、MDA(mimimum descent altitude:最低降下高度)、ミストアプローチ方式(進入復行経路)、着陸できない場合の代替飛行場、着陸復航後のホールディング、その後の飛行について決めておく。

進入方式は一つの滑走路に対していくつかの方式が設定されている。
天気の状況、他機の動向、航空管制の都合上等など…、効率よく、また快適性を考慮し機長は決定する。
今日は総合的に判断してVOR Approachを行うことを決めた。

先ずFMCのセットをする。
「Set CDU VOR APP RWY04 Hi-station 4000ft」(Set CDU VOR APP RWY04(ブイオーアールアプローチ・ランウェイ04)、 ハイステーションは5,000フィート)とコーパイにオーダーする。

コーパイは直ぐに作業を完了して、「VOR APP RWY04 MODIFY」とコールした。

2人で確認して
「Excute]
FMCの準備を終えた。


台風接近のために予期せぬ天気の変化が有るので、だいたい下記のようなブリーフィングをした。
①VOR-RWY04アプローチ
 各ポイントについての確認、
②雲の状況を考慮してHigh-station(ハイステーション)は4000ftから行くこと(3000ftの最低高度が決められてはいるが)
 しかし、雲の状況を考慮して変える場合もあることを付け加えた。
  (Hi-stationとは空港の上空で進入するための最初の地点…無線施設の上空であり進入開始点)
③着陸に際してはStandard callout(標準的なコールアウト)が設定されてはいるが、特別に付け加えてコールアウトしてもらったほうがいいと思 われる事項(additional callout)
④着陸できない場合のミストアプローチ(着陸復行)の方法
 ミストアプローチ後の機長としてのインテンション(意向)…燃料を勘案してどのようなプランを持っているのか、Divert(ダイバート)について
 次の進入を継続する場合の注意点
⑤エコー(雨域)が散在するので、着陸間際に急に雨域に突っ込んで視界不良に陥る可能性があることに関しての注意点

以上のようなブリーフィングをしながら降下に備えた。

パイロットはどこから降下するのかについてはこだわりを持っている。
降下の方法は一つではなく、3つほどの方法からパイロットの選択によって降下していく。
次回は降下について記すことにする。


CRUISE(巡航)

2014-07-21 | 小説
ー注意事項ー
① 現役を離れて数年経った今、忘れかけた記憶を呼び戻して書いてあること
② 数値、名称等は、ほぼ近いにしろ正確ではないこと                
③ 訴えたいことは、分かりやすいように多少誇張して書く場合があること       
④ あくまでも私感であること

クルーズ(巡航)に入るとパイロットはやれやれとホット一息つけます。
ACARSからは目的地の天気、代替飛行場の天気、PIREP、その参考になるであろうインフォメーションが送られてくる。

ACARSとは
Automatic communications addressing and reporting system
Aのabbreviation(省略)はその他にAircraft、あるいはAIRLINK(会社名)ともいわれている。

PIREP:Pilot Report(パイロットレポート)気流の情報その他の情報



このシステムはFMSのCDUであり、マン・マシンインターフェイスを取り持つ。

つまり、パイロットとマシン(飛行機のオートシステム)との間にあって、パイロットがマシンに指示し、マシンはパイロットの指示を忠実に実行してその内容を表示してくれます。

忠実に実行するということは、パイロットが意図しないことをミスして打ち込んだ場合にはその通りに実行することになります。
よって、指示を実行する”EXCUTE Key"を押すときには十分な注意が必要になります。
必ずコーパイと二人で確認をします。

第4世代機のコクピットは、「Modify」(モディファイ・修正完了)、「Execute」(エクスキュート・実行させよ)と掛け合いミスを防いでいます。

26,000フィートの気流はTB1程度でシートベルトを切っていても何ら問題ない程度の軽い揺れが続いている。
TB1:ティービーワンと読むが揺れでは一番軽い揺れをいう
TB0は何ら揺れないスムースな状態でありTB5まである。

揺れの強さについての基準があるが、
TB2はキャビンアテンダントのお客様へのサービスが困難
TB3は立って歩けない
TB4は操縦困難
TB5はシビア・タービュランスといい飛行機の構造体が破損する恐れがあると記憶しているが定かではない。

(TBとはTurbulenceのことをいい、数字はその程度を表す)

パイロットは乗客の快適性のため揺れない高度を探し、また迂回するとかして揺れを最小限に抑えるようにします。
しかし、上空全体が気流の擾乱が激しくお手上げの日もまれに経験します。
そんな日の雲の様子ははっきりと分かります。
上空から薄い雲が不規則に乱れて垂れ下がり、見ただけで”これは揺れるぞ”と思わされます。
そんな日は特にPIREPが多く入りますが、よその飛行機も同じように揺れています。
揺れを抑えるためにスピードを絞り、自然の強さに脱帽し、その空域を通過していくのを待ちます。

続く

CLIMB(上昇)-2

2014-07-18 | 小説

ー注意事項ー
① 現役を離れて数年経った今、忘れかけた記憶を呼び戻して書いてあること
② 数値、名称等は、ほぼ近いにしろ正確ではないこと                
③ 訴えたいことは、分かりやすいように多少誇張して書く場合があること       
④ あくまでも私感であること


機首を宮古島の方に向けて直行経路を飛ぶ。

ここで少し専門的になるが、機首方位が宮古島に向いているわけではない。
機種は上空の風に影響されて右からの上層風ならば宮古島よりも右に向いている。
左からの上層風ならば左に向いていることになる。



コンベンショナル(伝統的な以前の)の飛行機はヘッディング(方位)で飛行機をコントロールしていた。
つまり、風に流されることを考慮し何度の方位で飛ぶのかを考えていた。

グラスコクピット、つまり第4世代の飛行機は方位ではなくTRACK(航跡)を指示してくれる。
(通常はTRUCK UPであるが、HEADING UPにもデザイン変更できるようだが多分にHEADING UPの飛行機はないだろう)
コンベンショナルなパイロットは常に風に流されることを計算し偏流角をとって修正していた。
巡航中ならのんびりと計算できるが、飛行場に近づいてくるとそうは行かない。
風を読んでコースを真っ直ぐに飛ぶためのヘッディング(方位)を計算している。
その計算の出来、不出来が飛行機をうまくコントロールできるのかの差につながる。

レーダーでは台風の影響によるエコーも観測されるが、ダイレクトコース上には幸いにもエコーは写ってない。
私はCAのコールボタンを押して、「しばらく揺れないからシートベルトを切ります。サービスは手短に行ってください」というような内容を連絡してベルトサインを切った。

上昇中は外を見て雲の状況をよく観察する。
揺れる雲、揺れない雲、近くの雲ばかりではなく遠くの雲も観察しなければ良い判断はできない。
気流の乱れのある雲かどうかを見極めるには、常々学習してきた経験が活かされる。

28000フィートに上昇中ではあるが27000フィートを過ぎた頃から雲に入りそうであった。
雲底が凸凹しており気流が良い雲ではないと予想される。

雲の中を飛ぶことを避けるために、
26000フィートで飛ぶことをコーパイと申し合わせてACC(Area Control Center 航空交通管制部)にリクエストした。

「NAHA CONTROL ***601 Reqest Altitude Change FL260」

「Roger ***601 Maintain FL260」

26000フィートの巡航高度で石垣に向かうことが決まった。

巡航高度の選定についてはパイロットは夫々考えを持っている。

私の考えは、”天気は結果論”であること。
ディスパッチでいろいろと理論をこねても役に立たない。
もちろん予想するが、予想したことが正しかったにせよ自分は正しい予想をしたとは思わない。
たまたま予想が当たったまでのことで、自然は常に変化している。

短い路線の宮古とか石垣へ行くには、先ず高い巡航高度を要求する。
今の巡航高度が揺れているからといって、目的空港に近づいてくるにつれ高い高度に上昇するのは難しくなってくる。
高い高度から低い高度に降りることは容易いことなので、上昇中に雲、気流の状況をみて、計画の高い高度まで行くか、それとも行くのは止すのかの判断をする。

巡航高度が高いほどジェット機は燃料節約になるが、短い路線はお客様へのサービスタイムも考慮しなければならないので上昇できる高度は限られる。
原則的に、石垣便は28000フィートの巡航高度が精一杯であろう。

巡航高度に着いて、お互いに高度を確認し合った。

「Flight Level 260」

「Flight Level 260」

CLIMB(上昇)

2014-07-13 | 小説
上昇

飛び上がったら、上昇、巡航、降下、進入、着陸というフェーズがあるが進入までクリーン状態で飛ぶことになる。
Clean Configuration(離着陸に使用するシステムが収まって突起物がなくクリーン状態である)になると飛行機は身軽になり、パイロットは気持ちが楽になる。

理由は、”スピードの制約”から開放されるのだ。
離着陸時には、車輪を降ろすタイミングと最高スピード、収めるタイミングとスピード、高揚力装置(FLAP)を使うタイミングとスピード、上げなければならないスピード等がある。

全てがLimitation(運用限界)で縛られる。
この運用限界を超えて運航することは許されない。
パイロットが最低限覚えておかなければならない事項であり、試験、審査の場合は徹底的に質問される。
答えられないと試験、審査は受からない。

仮に運用限界を超えて運航したら、機体あるいはシステムにダメージを与えてしまう。
当該機は決められた整備作業を終えない限り飛ぶことは許されない。
よって先々の定期便に迷惑がかかり欠航が発生する。

パイロットが飛行機を飛ばすには2つのキーワードがある。
1つは「NEED to KNOW」
絶対的に知らなければならない事項。
先ほどの運用限界は最低限度の話であり、その他OM、AOM、SYSTEM、Route Manual、航空法・・・等
専門的になるので詳細は省くが、分厚いマニュアルを幅広く勉強して憶えなければならない。

全て覚えることができればそれに越したことはないが、「NEED to KNOW」に関わる項目は覚えなければ機長として、また副操縦士として安全を担保することはできない。

2つ目の「NICE to KNOW」
飛行機を飛ばすことは当たり前として、さらにスマートに飛行機を飛ばす
このセンスよくスマートに飛ばせるかどうかがパイロットの総合能力と言うのだろう。
何か、ハード的あるいはソフト的にトラブルがあったとしても、持ち合わせの知識・技量でうまく対処して何事もなかった如くそのフライトを終えることができる。
つまり、
より知識・技量レベルの高いパイロットは、他のそれほど知識・技量レベルの高くないパイロットに比べて全体的な運航を遂行するに当たり表面に出るトラブルが少ない。

”何かトラブルがあったかも知れないが、何事もなかったのごとくそのフライトを終える”
客観的に見て普通にフライトを終えて何事もなかったかのごとく装うが、実は機長と副操縦士との巧みなコーディネーションで飛ばしていた。
これは実に素晴らしいことで、パイロットの評価はこの辺りかも知れないと常々思っている。


話はそれてしまったが、
オートパイロットをエンゲージ(つないでいる)しているので、この先はオーパイという第3のパイロットをうまく使いこなして飛ぶことになる。
頭脳には学習機能が備わっているが、ことFMS(フライト・マネージメント・システム)に関しては学習機能はなく、いつまでも新米パイロットである。
しかし、成長することはないが人間と比べて新米から素晴らしい能力を持っている。
指示したことは忠実にその通りに完ぺきにこなしてもらえる。

上昇中は、”L NAV”と”V NAV”をつないでいる。
”L NAV”(Lateral Navigation)は横方向、表面上のルートつまり方位に関わる。
”V NAV”(Vertical Navigation)は縦方向、高度に関わる。
オートパイロットで放っておいたら、プリフライトの時にFMSに入力した通りに目的地の飛行場に降りようとする。

しかし、安全に快適に飛ばすにはオートパイロットに任せっぱなしはできない。
ルート上には雲があったり、積乱雲があったり、Turbulence(揺れ)があったり、他の飛行機が飛んでいたりといろいろと障害が待ち受ける。
どうしてもパイロットの判断を仰がなければならないのだ。

しかし、東京には”ゆりかもめ”、関空にも無人の電車が走っている。
無人偵察機とか飛んでいるが、その気になって開発すれば無人の旅客機も飛ぶのかな?
パイロットが乗ってない旅客機に乗る気にはならないが・・・


DepartureコントロールからNAHA ACC(那覇航空路管制所)にコンタクトするように指示が来た

「NAHA CONTROL ***601 Climbing to Flight Level 280」

コーパイはコンタクトした。
すぐさま応答が有り
「Roger ***601 Radar Contact、 Clear Direct Miyakojima VORTAC」

空にはクモの巣が張ったように航空路があるが、レーダーカバレージの範囲では航空路にとらわれずに飛ぶことができる。
初便であり飛行機も少ないので、最短距離で行けるようにと宮古島へ直行せよとの指示が来た。

私は、
「Set CDU Direct Miyakojima」
コーパイはラージャーと言い、CDUをセットして、
「Modify」
私はコーパイがセットしてあるのを確認して
「Execute」

"Execute Key"を押したと同時にオートパイロットはバンクを取り宮古島方向に針路を変えた。






TAKEOFF (離陸)

2014-07-01 | 小説

ー注意事項ー
① 現役を離れて数年経った今、忘れかけた記憶を呼び戻して書いてあること
② 数値、名称等は、ほぼ近いにしろ正確ではないこと                
③ 訴えたいことは、分かりやすいように多少誇張して書く場合があること       
④ あくまでも私感であること



「***601 Runway36 Line up Wait」

先行機のジャンボが離陸したので管制官から”滑走路に入り待機せよ”との指示が来た。

着陸態勢の飛行機が近づいてこないかどうかを確かめながら、「ファイナル クリア、ランウェイ クリア」とコーパイと声を出し合って滑走路に入っていく。
ブレーキを外してスラストレバーを自機が動き出す程度に進めてゆっくりと滑走路に入っていった。

離陸許可が来るのを待ちつつセンターラインにアラインしようとノーズステアリング(前輪操作)を右に切っている時に離陸許可が来た。

「***601 Wind 050/19 Clear for Takeoff Contact Deperture after Airborne」

「Roger ***601 Cleared for Takeoff」


とコーパイは管制官に離陸許可をRead Back(応答)した。

私はランウェイセンターラインに機軸を合わせブレーキを踏むこと無く

「TAKEOFF(離陸)」

とコールしスラストレバーに付いている”TO/GA”スイッチを押した。

MODE Annunciator(モード表示)に”TO/GA"が表示されたのを確認して2人共お互いに「トガー」とコールした。

スラストレバーが自動的に立ち上がってきてエンジン回転が唸りながら上がってくる。
そのまま放っといても離陸推力に合うようにオートスロットルが自動的に調節してくれるが、合っているのかチェックする意味でも

「Set Takeoff Thrust」

とコールした。

コーパイは、ほとんど合わす必要のないThrust Leverに手を添えて所望の離陸推力に合っていることを確認する。
そして、エンジン計器のモニター業務に専念する。

右横風20ktも吹いている状況では風の息である突風は更に強く30kt位は吹く。
横風の場合はランウェイセンターラインのキープ(保持)が難しくなるが、ずらすことなく真っ直ぐに離陸滑走しなければならない。
右にエルロンを当てて、左方向舵を踏み込み風にあおられないようにする。

中心線上には夜間の照明施設としてセンターラインライトが設置されている。
センターラインライトは若干盛り上がっているので、前輪がセンターラインライトを踏みつけてガタガタと機体を振動させないように、2つあるタイヤの間に挟み込むように方向舵でコントロールする。
正面から吹く風とか弱い風の場合には方向保持は難しくはないが、今日のように横風が強い時には困難だ。
現役の役職で知ったことではあるが、多くのパイロットは困難な時にこそすばらしい力を発揮するのを見てきた。

前方滑走路を見て、スピード計を見て、エンジン計器もチラッとは見るがエンジンモニターはコーパイに任せてある。
コーパイはエンジン計器をモニターしながらフライト計器もモニターしなければならない。

スピードが上がってきて、

「80 (エイティー)」

と、コーパイからコールがあった。

自分のスピード計も”80kt”あることをチェックして、お互いのスピード計に誤差がないことを確認した。
離陸続行問題なし!

この辺りの加速はすごいので、直ぐに離陸決定速度である”V-one”がくる。

「V-one」 (ブイワン)

のコールがあったが、自機の全てが正常なので離陸中止はない。
直ぐに、

「ROTATE」(引き起こせ)

のコールがあった。

私はWing-Level(機体の水平状態)を保ちつつ操縦桿に力を加えて引き起こした。
横風の場合は突風にあおられやすいので、飛行機が地上から離れて空中に浮かぶ境目の操縦は特に気をつけなければならない。
あおられることなくウィングレベルになるように3蛇をコントロールして引き起こす。
急ぐこと無く、スローになること無く1秒間に3°のPitch Up(機種上げ)のレイト(割合)で15°までスムースに引き起こす。

機種がゆっくりと上がってきて主車輪が滑走路から離れていく浮遊感覚を感じとる。
機械的に操作するのではなく、感覚を研ぎ澄まして全体的な自機の状況を体で受け止める感性を大事にする。
(他社で搭載燃料量を少なく入力したために、Rotation速度を低く設定してしまい飛行機が浮いてこないまま引き起こしを機械的に継続したためにTAILをこすった事例がある)

浮き上がってくる頃に

「V-two」 (V1以降にエンジン不作動になった場合の保持すべき速度)

のコールがあった。
通常通りの離陸を継続し、

「Positive Rate、Gear Up」

浮き上がっているので、当たり前に正の上昇率になってはいるが、正の上昇率を確認していることをコールして車輪を上げる指示をする。

コーパイは「ラージャー」と言い、ギアレバーのダウン・ディテントを外すためにレバーを手前に引きながらアップする。
ギアレバーはカチッと今度はアップ・ディテントに収まった。

3000psiの高圧のハイドロオイル(作動油)が複雑な配管を通って重たい車輪を上げるググーというような音が聞こえる。
上がりきったら、車輪が降りている時に点灯している3つのグリーンライトが消えるので

「Up No Light」

とコーパイはコールした。

最も神経が張り詰めるPhase(過程)をこなしたがやれやれと感じる余裕など無い。
飛行機はグングンと高度を上げていく。
直ぐに400フィートになるので

「L NAV](エルナブ)
(Lateral navigation):水平方向の航法指示)

   

と私はコールして"L NAV"のスイッチを入れるようにオーダーした。

Mode Annunciator(モード表示)が”L NAV"モードになったことを確認してオーム返しに「L NAV」とコールする。

"L NAV"が機能すると、後はフライトディレクター(航法指示器)の指示に従って操縦すれば、事前に設定したルート(出発経路・航空路及び侵入経路)を正確に飛行することができる。

   

「Contact Departure」 (出発管制所にコンタクトせよ)

コーパイは
「Okinawa Departure ***601 Airborne NAHA」 (那覇空港を離陸した)

Departure Controlから
「***601 Turn Left 210 Cancel 1000 restriction Climb Maintain 6000 due to Traffic」 (機首方位を210°に向けて一旦6000フィートまで上昇せよ、他の飛行機がいる)

那覇空港は嘉手納飛行場との関係で出発方式では離陸したら1000フィートで抑えられる。
今日は7000フィートに他の飛行機が飛んでいるだけのようで1000フィートの制限はキャンセルされて6000フィートで抑えられた。

すでに”ALT Capture”して1000フィートレベルオフしているので、
CMD A」 (Command A:コマンドA オートパイロットを入れる)

HDG SELノブを210°に回して、1000フィートにセットされているALT SELを6000フィートにセットした。
(オートパイロットが入っているとキャプテンがセットするが、オートパイロットが入ってない場合はコーパイがセットする)

「LVL CHG」 (Flight Level change)
V NAV」 (Vertical Navigation:垂直方向の航法指示)
を入れ、フッと一呼吸して一息ついた。
この先は自分の意志をオートパイロットという第3のパイロットにオーダーすることになる。
うまく使ってあげるととてもいい働きをするパイロットの強い味方である。

天気が良い日は「Left Side Clear」とコールしてヘディングをセットするが、今日は雲高が低くすでに雲の中に入っていたのでコールする必要はない、

徐々に加速してスピードが210ktを超えると
FLAP 1」 (高揚力装置であるフラップを”1”のディテントにせよ)

230ktを超えると
FLAP UP 0」 (フラップを上げて0ディテントにせよ)

ギアもフラップも上がりクリーンな状態になった。
正に、”水を得た魚のごとく”飛行機本来の状態に戻り、性能をフルに発揮できグングンと上昇していく。
空気を得た飛行機と言おうか、空を得た飛行機とでも形容できる。
飛行機が飛行機らしく最も安定した状態だ。

この辺りのジェット推力の凄さを実感したのは、プロップ機であるYS11から移行した時だった。
(上昇率がYS11は500フィート~1000フィートなのに対して、ジェットは3000フィート~4000フィート)
その圧倒的なパワーを実感できるのは非力なYSを経験したからに他ならない。
しかし、YSはYSなりにしっかりと作られた純国産機であり、今思えば非力さが可愛く思える今日この頃だ。
整備の話によると、沖縄は塩害が多いがYSの機体は塩害にもびくともしない頑丈な作りだと話していた。

1500フィートを超えているので離陸フェーズは終わったことになる。