2006年3月20日発行
屋久島・ヤクタネゴヨウ調査隊 代表 手塚賢至
yattaneyoca@ml.j-bee.com
郵便振替[口座番号:01700-4-9751・加入者名:屋久島・ヤクタネゴヨウ調査隊]
松くい虫被害対策専門家会議
・ヤクタネゴヨウを育む森林を後世に・
・住民と行政の連携による共生の森づくり・
2005年8月19日
主催:ヤクタネゴヨウ調査隊(屋久島・ヤク夕ネゴヨウ調査隊、種子島・ヤク夕ネゴヨウ保全の会)
:林野庁屋久島森林管理署
協力:森林総合研究所
午前9:00~マツ枯れ被害状況視察(中種子町砂中地区)
防除対策地見学(西之表市若狭公園)
午後1:00~西之表市市民会館にて会議
座長:吉良今朝芳(鹿児島国際大学 教授)
ヤクタネゴヨウ保全への着実な歩み
現在ヤクタネゴヨウの最大の脅威は松くい虫被害である。特に種子島での被害は甚大で早急な対策が迫られてきた。調査隊ではこの2年間、種子島最大の自生地木成国有林に発生した枯死木の伐倒・搬出作業を屋久島森林管理署と連携して行ってきた。しかし、当然民有林や県有林のヤククネゴヨウにも被害は及んでいる。被害を拡大するマツノマダラカミキリには人間社会の境界線は存在しない。あたり前のことだが、どこの管理エリアであろうとそこに松があればカミキリムシは飛びつくのだ。もちろん種子島に起こる事は屋久島にも起こりうる。現在沈静化しているとはいえ、同じ火種は屋久島にもある。このようなヤクタネゴヨウの現状に対峙している今、その保全のためには「官」・「民」・「学」の協働が不可欠であることから、三者が現状を正しく把握・理解し情報を共有して効果的な保全対策に取り組むべく、2005年8月「松くい虫被害対策専門家会議」を屋久島森林管理署との共同主催で開催するに至った。開催趣旨は以下の通りである。
〔開催趣旨:種子島と屋久島では、この地域にだけ自生する絶滅危惧種ヤクタネゴヨウの保全活動が官民学協働で取り組くまれてきた。主な取り組みは、自生状況の把握と増殖活動、環境学習などの情報提供、また松くい虫被害対策である。 2004 年には、種子島で140本が自生する新たな群落が発見されるなど、大きな成果を生み出している。一方、ヤクタネゴヨウの松くい虫(マツ材線虫病)による枯損被害が急増している。特に種子島において深刻で、このまま被害が拡大すると、地域集団の消失ひいては島全体での絶滅が懸念される。マツノザイセンチュウと媒介者のマツノマダラカミキリが原因とされるこの松くい虫被害は、地方自治体においても様々な対策が投じられてきたが、今その費用負担の維持など大きな課題を抱えている。特にヤクタネゴヨウ保全においては、具体的、かつ迅速な松くい虫対策の取り組みが重要であること、両島行政関係者や市民団体関係者が共通認識を持ち連携することなどが、今後の保全活動に必要不可欠である。このため、松くい虫被害対策の担当者専門家会議を開催し、これまでの効果的な事例報告、情報交換を行う。また本会議では、ヤクタネゴヨウの松くい虫被害対策を両島の連携した取り組みにむけて具体的な計画作成を目標とする。なお、このようなヤククネゴヨウの現地保全を目的とした現場レベルでの専門家会議は、行政関係者だけではなく市民団体関係者、さらに学識者が一同に会する初の試みである。〕――午前の現地観察を経て、午後の会議では、座長、吉良今朝芳氏の進行のもと様々なレベルでの発表がなされ、総合討論では両島における防除対策が議論され取り組みの核となる保全対策協議会の設立を目指す事が確認された。今年度活動の柱として位置付けたこの会議は今年1月の協議会発足へと引き維がれヤクタネゴヨウ保全への着実な一歩をしるすことになった。参加者偕様のご協力と熱意に深く感謝する。
手塚賢至
座 長:吉良今朝芳(鹿児島国際大学教授)
専門家発表
森林総合研究所: 金谷整一 「種子島・屋久島のヤクタネゴヨウ調査結果報告と松くい虫被害状況」
: 中村克典 「松くい虫被害の現状と対策」
事例発表 西之表市: 奈尾正友 「若狭公園における松くい虫対策」
鹿児島県: 川原敏郎 「鹿児島県における松くい虫被害状況と対策について」
樹木医(屋久島): 荒田洋一 「ヤクタネゴヨウに対する樹幹注入」
屋久島森林管理署: 宮川茂則 「国有林におけるヤククネゴヨウ保全の取り組み」
<出席・参加団体>
環境省自然環境局屋久島自然保護官事務所・鹿児島県林務水産部森林保全課・鹿児島県環境生活部環境保護課・鹿児島県林業試験場・鹿児島県熊毛支庁林務水産課・西之表市・中種子町・南種子町・上屋久町・屋久町・(独)森林総合研究所・種子島森林組合・林業関係者(種子島・屋久島)・荒田洋一(樹木医)・吉良今朝芳(鹿児島国際大学)・林野庁屋久島森林管理署・屋久島森林環境保全センター・屋久島森林管理署西之表森林管理官事務所・屋久島森林管理署南種子森林管理官事務所・ヤクタネゴヨウ調査隊(屋久島・ヤクタネゴヨウ調査隊・種子島・ヤクタネゴヨウ保全の会)他一般参加者
2006年1月13日「ヤクタネゴヨウ保全対策連絡協議会」設立(種子島西表市役所)
2005年8月19日に行った「松くい虫被害対策専門家会議」において設置が決議された「ヤクタネゴヨウ保全対策連絡協議会」がようやく立ち上がる。事務局役を担う屋久島調査隊、種子島保全の会と屋久島森林管理署により1月13日、会場を種子島、西之表市役所内会議室と設定し、下準備を終えたが、前日の天気予報が伝えたとおり、早朝より荒天となった。午後海上5mの高波となれば全ての航路の欠航が予想される事態である。種子島へと渡航する屋久島鹿児島からの出席予定者は会議終了後の日帰りの計画を取り止めざるを得ない。次々に欠席の報が入る。開催呼びかけの一員である調査隊と屋久島森林管理署の面々は辛うじて早朝便で種子島にたどりつきあわただしい対応となったが関係者総勢25名で協議会は無事開催された。会議では設立に至るこれまでの経緯、会則案、構成員、役員等についての説明提案が事務局から示され、意見集約を行い、会長、今村義之氏(西之表市農林水産課)、副会長泊 一勝氏(屋久町農林水産課)が選出され、協議会が正式に発足の運びとなった。後、以下の事項の協議を行った。
①木成国有林の植物群落保護林の設定と地元との関わり方
②種子島屋久島における松くい虫被害の現況調査報告
③マツ枯れ対策、特に種子島における1~3月までの計画案と協力体制作り
④今後の戦略的保全活動のあり方
又、全体としてはひとつの協議会体制ではあるが屋久島種子島個々の現状と対処は異なるので島ごとに支部会を設け、機能的に保全対策に臨む事が確認された。同時に具体的な検討・討論が交わされ、まずマツ枯れ被害が全島に広がる種子島においては防除対策地を絞り込み(ゾーニング)絶対にこの地域を守りたいとする核になる地域を設け、集中的に人と活動を投入する事とし、主に2地域をゾーニング地域とする。
①国有林:新たに植物群落保護林に指定される木成を中心とした周辺の中割、生姜山自生地(西之表市・中種子町)
②県有林:豊かな自然植生が残り、清流が流れる重要な水源の森でもある砂中県有林(中種子町)
いずれもヤクタネゴヨウの種の保全にとどまらず、種子島の貴重な森林生態系全体の保全を目指すことも大きな課題であるしその意味は大きい。この地域は、今年度マツ枯れしている枯損木は昨年同様伐倒・搬出を行い、生残木には調査隊、保全の会の活動資金を用いて薬剤注入を施し、これ以上一本も枯死させぬよう様々な手法による保全の対策が実施される。このように協議会の設立により関係者の共通理解を深めより迅速な計画、実行へと効果的な対応が可能となった。
翌14日は南種子町に僅かに残るヤクタネゴヨウの生存木の現地調査を茎永・神山地区で行った。
屋久島支部第1回協議会開催
3月3日:屋久島森林管理署
1月の種子島での協議会発足を受け、屋久島での対策を検討する屋久島支部会が3月3日、屋久島森林管理署において、関係者15名の出席で行われた。詳細は右の新聞記事に要約されているがここ屋久島でのポイントを一点強調しておきたい。
・現在全島的には沈静化にある屋久島のマツ枯れ被害は発生地での確実な対応が成功すれば、屋久島での松くい虫被害を撲滅できる可能性が高く、将来に渡り多大なメリットとなり、全国的にも稀な事例となる。
種子島での枯死木の運びだしは3月4,5日協議会に基づいて官・民・学協働で行いました。これについては次号で報告します。
屋久島の生態系解明に取り組む2つの研究プロジェクトによるシンポジウムが開催されました
公開シンポジウム『屋久島の森林の過去・現在とこれから~ヤクスギとヤクタネゴヨウを中心として~』
――2005年10月7日屋久島環境文化村センター――
・新山馨(森林総合研究研植生管理研究室室長)「屋久島のスギ天然林の遷り変わりI」
・高島敦史(九州大学大学院博士課程)「屋久島のスギ天然林の遷り変わりⅡ」
・津村義彦(森林総合研究所ゲノム解析研究室室長)「ヤクスギとスギのなかま」
・永松大(鳥取大学地域環境学科講師)「ヤクタネゴヨウの生き様を読み解く」
・コメンテーター:田川日出夫(鹿児島大学名誉教授・屋久島環境文化財団)
湯本貴和(総合地球環境学研究所教授)
手塚賢至(屋久島ヤクタネゴヨウ調査隊)
・司会進行:吉丸博志(森林総合研究所生態遺伝研究室室長)
共同主催:独立行政法人森林総合研究所
財団法人屋久島環境文化財団
協力:ヤクタネゴヨウ調査隊
-「屋久島森林生態系」研究プロジェクトの紹介-
吉丸博志(森林総研・生態遺伝研究室)
森林総合研究所(茨城県つくば市)ではいくつかの大学と共同して、平成13年度から5年間の計画で、環境省からの受託による研究プロジェクト「屋久島森林生態系における固有樹種と遺伝子・多様性の保全に関する研究」を進めています。これは、主としてヤクスギとヤクタネゴヨウを中心とし、森林生態系の成り立ちや変化を解明してその良好な保全を図るという目的で、森林生態学や森林遺伝学の研究者が参加して、6個の課題に分かれて進めています。
ヤクスギに関しては、まず「1.ヤクスギ天然林の構造と動態の解析」で、吉田茂二郎さん(九州大学)と高嶋敦史さん(九大院生)が、約30年前に設定された1ha(100m×100m)サイズの5ヵ所の調査プロット(ヤクスギランドに近い小花山、二人だけの小径、天文の森と、さらに花山、白谷)で胸高直径5cm以上の全ての樹種の成木を対象にして再測定を行い、30年間の各樹種の成長や枯損などの変化を調査しています。また、新山馨さん(森林総研)が天文の森の調査プロットを4haに拡張して、1つの地域の中に尾根、斜面など地形の変化も含むようにし、成木に加えて稚樹の調査も行って成木層と稚樹層の比較を進めています。ここに平成16年度から木村勝彦さん(福島大学)が加わり、スギ切株や生木から年輪コアを抜いて年輪年代解析を行い、いま切株となっている個体がかつて成長していた時代や伐採された年代、その後の新しい個体が定着した年代など、過去の出来事のポイントとなる年代がいつなのかという推定を進めています。このような成果が総合されると、屋久島のスギ天然林がいつどのくらいの規模で伐採され、伐り残されたスギと新しく更新したスギがどのように成長していまの森林になったか、そして今後どのように推移していくのか(広葉樹が増えるのか)などという全体像が見えるようになってくるでしょう。「2.ヤクスギの遺伝構造の解析」では、津村義彦さん(森林総研)と高橋友和さん(新潟大院生)が、全国のスギ集団とヤクスギ集団との遺伝的違いや、屋久島の中での地域による遺伝的違い、さらに天文の森プロットにおける過去の集団(切株)と現在の集団との遺伝的違いの有無などを解析しています。
ヤクタネゴヨウに関しては、「3.分布および枯損状況の解析」で金谷整一さん(森林総研)が、屋久島ヤクタネゴヨウ調査隊と共同で、ヤクタネゴヨウの詳細な分布位置図の作成と枯損モニタリングを進めています。枯損木が出ると中村克典さん(森林総研東北支所)、そして秋庭満輝さん(森林総研九州支所)に応援を頼んで、マツノザイセンチュウの有無を検査しています。最近の種子島での急激な枯損の実態や、屋久島への侵入が危惧される状態などが明らかとなりつつあります。「4.天然更新を阻害する遺伝的要因の解析」では、金指あや子さんと金谷整一さん(森林総研)とで、ヤクタネゴヨウの種子の結実率、充実率、自殖率などを解析し、健全な他殖種子が少ない原因を探っています。「5.現存個体を救うクローン増殖技術の開発」では、石井克明さんと細井佳久さん(森林総研)が、現存個体の組織の一部からクローン個体を育てる技術の開発を進めています。さらに、「6.ヤクタネゴヨウの更新に対する他樹種の影響の解析」では、永松大さん(鳥取大学)、小南陽亮さん(静岡大学)、斉藤哲さん(森林総研九州支所)が、西部林道地区でヤクタネゴヨウと混交する照葉樹との林分構造を調査して、ヤクタネゴヨウが更新する条件と他樹種との関係を解析しています。このように、枯損モニタリングのような緊急対応から、種子生産の向上さらに自然条件下での生育条件の推定のような憂いスパンヘの対応まで、幅広く進めています。
さて、このような研究も今年で5年目となり、いろいろな事実がわかるようになってきました。詳しいとりまとめには、まだまだ時間がかかりますが、いくつかの成果の概略をわかりやすくご紹介できる機会を作りたいと考え、宮之浦の環境文化村センターにおいて、公開シンポジウムを開催いたしました。最後になりましたが、これらの調査・研究は、ヤクタネゴヨウ調査隊や関係者の皆様の協力なしには、成し得なかったことでしょう。研究プロジェクトの代表として感謝申し上げますとともに、今後ともお付き合いいただくよう、よろしくお願いいたします。
屋久島の雑誌「生命の島」63号から73号に屋久島生態系プロジェクトメンバーが研究成果を連載しています
公開シンポジウム『屋久島生態系の保全~希少植物とヤクシカの動態を中心として~』
――2005年10月8日屋久島環境文化村センター――
・矢原徹一(九州大学大学院理学研究院教授)「屋久島の希少植物に迫る絶滅の危機」
・千葉かおり(自然環境研究センター主任研究員)「屋久島の林床植生の減少とヤクシカ摂食の関連」
・立澤史郎(北海道大学大学院文学研究科助手)「ヤクシカの増加傾向と個体群管理のための課題」
・松田裕之(横浜国立大学大学院教授)「ニホンジカ管理のあり方―知床から屋久島まで」
・パネル討論『屋久島におけるニホンジカ管理・植生管理のあり方』
パネリスト:矢原徹一・立澤史郎・松田裕之・荒田洋一(現YOCA会長)・牧瀬一郎(現YOCA副会長)
・司会進行:湯本貴和(総合地球環境学研究所教授)
共同主催:矢原プロジェクト(地域生態系の保全・再生に関する合意形成とそれを支えるモニタリング技術の開発)
:財団法人屋久島環境文化財団
協力:ヤクタネゴヨウ調査隊
―矢原プロジェクト公開シンポジウム開催にあたって―
矢原徹一(プロジェクト代表者・九州大学大学院理学研究院生物科学部門)
屋久島には、世界でも屋久島にしか分布していない動物がたくさん暮らしています。ヤクシカもそのひとつです。また、約80種類の植物が屋久島固有です。これらの動植物は、長い進化の歴史を通じて、屋久島の生態系の中でバランスを保って生きのびてきました。
ところが、屋久島の生態系にいま、異変が生じています。ヤクシカが急激に増え、昔はあまり食べなかったシダ類などを好んで食べるようになりました。その結果、森林の下層植物が減少し、一部の希少植物は絶滅してしまいました。屋久島固有種のヤクシマタニイヌワラビは絶滅寸前の状態に至り、中国から隔離分布していたコモチイヌワラビは、絶滅してしまったようです。
なぜヤクシカは増えたのでしょうか。屋久島の生態系のバランスはなぜ崩れたのでしょうか。どうすれば生態系のバランスを回復させることができるのでしょうか。これらの問題に答えるために、私たちは環境省環境改善技術開発推進費(2003-2005年)の補助を受けて、調査を進めています。この公開シンポジウムでは最新の調査結果をご報告し屋久島の生態系を守るためにはどうすればよいのか、みなさんと一緒に考えたいと思います。
屋久島の雑誌「生命の島」73号に矢原徹一「ヤクシカが増え,植物が滅ぶ 屋久島生態系の異変にどう取り組むべきか」を掲載しています。ご参照ください。
ヤッタネ!調査隊主催の公開シンポジウム「ヤクタネゴヨウと熊毛の自然」(2003年11月9日屋久島)において、矢原徹一氏は「数百万年の気候変動を生き抜いた屋久島の植物たちに今迫る危機」と題した基調講演を行いました。矢原氏は20年前の屋久島調査体験から現在の屋久島の生態系の危機を感じ、「環境省環境技術開発推進プロジェクト『地球生態系の保全・再生に関する合意形成とそれを支えるモニタリング技術の開発』」通称「矢原プロジェクト」を立ち上げ、調査を開始しました。ヤッタネ!調査隊はこれに協力し、2004年6月屋久島宮之浦公民館において「矢原プロジェクト現地説明会」を開催し、地元有志による「現地加勢人会」が生まれました。「現地加勢人会」は2004年8月日本生態学会(釧路)、11月、シンポジウム「シカと森の今を確かめる」(主催:森林再生支援センター・海上:奈良教育大学)において「屋久島報告」を行い、2005年10月のこの矢原プロジェクトの公開シンポジウムにも参加・協力しました。そして「現地加勢人会」が発展的に拡大し、地元で主体的に活動するグループとして屋久島まるごと保全協会 Yakushima Overall Conserving Association 通称YOCA(よか)が発足しました。YOCAについてはそのめざすものを次号に掲載する予定です。
2005年11月14,15日大分舞鶴高校屋久島研修
11月14日、文部科学省の指定によるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業の一環として、SSH体験研修(屋久島・種子島)に訪れた大分舞鶴高校の1年生81名の皆さんに手塚代表がヤクタネゴヨウの講義をしました。翌日15日は10名の生徒が現地調査に挑戦、強い北西風に吹かれながら西部地域の0尾根を測量し、大径木にたどり着きました。急斜面の慣れない山歩きは大変だった様です。それでも健脚の4人はさらに別の尾根に挑戦して新しいヤクタネゴヨウを発見!《舞鶴ゴーゴーマツ(大分舞鶴高校55回生なので)》と名づけました。実は、このSSH推進担当の川野智美先生は学生時代屋久島でヤクタネゴヨウの調査をし、ヤッタネ調査に何度も参加した隊員でもあります。今回の研修で生徒たちにヤクタネゴヨウ調査隊の活動をとおして、絶滅危惧種の保全や屋久島の自然をより、リアルに実感して欲しいと、ヤッタネ!調査隊に協力要請がありました。
10月23日環境NGOと市民の集い「地域と育つNGO、地域に生きる企業」
今年度の(独)環境再生保全機構地球環境基金主催の集いは北九州市小倉(西日本総合展示場新館)で開かれ、調査隊から3名が参加しました。ヤッタネ!調査隊が助成を受けている地球環境基金は国内外の民間団体(NGO)が行う環境保全活動に対し、資金助成や、その他の支援を行っています。この集いでは、九州・沖縄を拠点に国内外で活躍する環境NGOと企業が連携する事例を発表し、新たな地域パートナーとしての協働のあり方を考える場となりました。 特別講演の後、
第1分科会:公害防止・技術協力
第2分科会:地域コミュニティ・環境教育
第3分科会:自然保護
に別れ、調査隊は第3分科会に参加し海洋や森林をはじめとする自然環境保護のため、様々な活動を進める5団体が活動発表・ディスカッションを行いました。・・第3分科会参加団体・・・・・
〇NPO法人沖縄県ダイビング安全対策協議会
〇NPO法人おきなわ環境クラブ
〇NPO法人エコシステム
〇(財)阿蘇グリーンストック
この集いに参加することにより、様々な分野との交流・情報交換が視野を広め、今後の調査隊の活動を考える上でも大いに参考になりました。
種子島ヤクタネゴヨウ保全の会屋久島研修
2005年11月26,27日種子島のヤクタネゴヨウ保全の会14名が屋久島研修を行いました。26日11時40分宮之浦港着、屋久島の調査隊と合流し種子島を望む小瀬田の海岸でお弁当を食べた後、自生地見学装へ。高平と平内では県道から遠望し、西部では標高400mのひずくし峰に登り山頂に群生するヤクタネゴヨウを観察しました。夕方一湊にある上屋久町青少年研修センターに到着夕食後、屋久島森林管理署の浜田辰広さん、宮川茂則さんを交えて、森林管理署と調査隊の行ってきた保全活動について、学習しました。
屋久島森林管理署宮川茂則さんと調査隊代表手塚賢至がプロジェクターを使い「ヤクタネゴヨウの保全とヤクタネゴヨウ調査隊の活動を発表しました。
採取林見本林下草刈2005年11月27日
27日屋久島森林管理署とヤッタネ!調査隊の共同主催で行った見本林・採種林の下草刈りは好天に恵まれ保全の会16名を含む調査隊、一般参加者、管理署職員、計約40名、が参加し、暑い中での下草刈り作業でした。一本ずつ苗の周りを丁寧に刈っていきました。この見本林・採種林は九州森林管理局の「ヤクタネゴヨウ増殖復元緊急対策事業」により接木苗を育苗し、星矢島と種子島にそれぞれ、植栽されています。この採種林は今後種子の生産に取り組む大切な資源となります。慎重な育苗と有効な利用の方向性を合わせて考慮しヤクタネゴヨウを未来へとつなぐ計画的な運用が望まれます。
~保全の会の皆さんの感想~
・種子島と違い、条件の悪い場所(岩場)等に自生しているのはすごいと思う。
・ヤクタネゴヨウを身近に感じられた。特に西部林道の登山が今回のメインで、ヤクタネゴヨウと同じ空気のところに行けた事、急峻な岩場に立つ姿を見られたこと、よかったと思います。
険しい岩峰に岩を割るようにして立っているヤクタネゴヨウの姿に感動しました。
・限られた時間で、各地の観察、研修、下草刈り等、とても有意義で内容のつまった1泊2日でした。企画・運営してくださった皆様、ありがとうございます。屋久島を訪ねるのは初めてで、車の中から見る海の景色が種子島と違うことに驚き、深い山に感動しました。充実した観察会だったと思います。
「平成17年度森林の流域管理システム推進発表大会」≪日本森林技術協会理事長賞受賞≫
2005年11月16、17日九州森林管理局大会議室(熊本市)
九州林政連絡協議会が主催するこの発表大会は毎年九州・沖縄各県の森林・林学関係者が参加し流域林業の活性化や林業技術の向上に関する情報や技術の交流を図り行われている。 11 回目の今大会には林業コースを有する高校生を含め約150人の参加があり、全24課題が発表された。大会への参加は屋久島森林管理署より春に打診があり、「ヤクタネゴヨウの現状と保全活動の実践報告」というテーマで署の宮川茂則さんと調査隊の手塚の二人で発表を行う事に決まった。発表時間15分、その内応答が3分あるので実質は12分である。内容や写真の選定等の打合せを経て、事前にリハーサルは1度やったきりで、後は本番出たとこ勝負となった。発表の壇上に登ると最前列に審査員がずらりと並ぶ。なにしろたくさんの写真映像による説明を時間内で終わらさなければならぬ。速攻で制限時間いっぱい、なんとか完了。賞をとろうなどという欲はさらさらなかったが、「日本森林技術協会理事長賞」3題のひとつに選ばれた。九州森林管理局指導普及課が発行する「みどりと技術だより」誌24号に載った受賞課題の紹介には以下が記されている。
『ヤクタネゴヨウの現状と保護活動の実践報告』
絶滅の危機にあるヤクタネゴヨウを守るための『松くい虫被害対策専門家会議』を開催。国・県・地元自治体などの枠を超えた協議会を設立し、保護増殖のみでなく松くい虫被害対策の確立、保護林や採種林等の活用など、総合的な保護活動がスタートした。特に全木調査をめざす調査隊の活動は地道だが着実に成果を上げており、関係者のスクラムで完遂をめざして頑張りたいとの抱負が伝わってくる発表。
■定例調査報告
月日 | 調査地 | 参加人数 |
---|---|---|
2005年3月20日 | K尾根 | 3 |
4月17日 | K尾根 | 13 |
5月15日 | K尾根 | 17 |
8月23日 | K尾根 | 9 |
9月18日 | K尾根 | 10 |
10月16日 | K尾根 | 4 |
11月20日 | K尾根 | 5 |
12月20日 | 川原1号沢 | 6 |
2006年2月21日 | 川原1号沢 | 6 |
3月19日 | 川原1号沢 | 8 |
ヤッタネ!調査隊2005年度の活動です
月日 | 活動内容 |
---|---|
2005.8.19 | 松くい虫被害対策専門家会議(種子島、西之表市民会館) |
2005.10.7 | 森林総研現地報告会(屋久島森林環境センター)、シンポジウム(屋久島環境文化村センター) |
2005.10.8 | 矢原プロジェクト・シンポジウム(屋久島環境文化村センター) |
2005.10.23 | 環境NGOの集い小倉 |
2005.11.14 | 大分舞鶴高校屋久島研修(講演会:宿泊ホテル) |
2005.11.15 | 大分舞鶴高校屋久島研修(ヤクタネゴヨウ現地調査:西部地域) |
2005.11.16-17 | 林野庁九州森林管理局「森林の流域管理システム推進大会」 |
2005.11.26-27 | 保全の会屋久島研修(自生地観察会・研修会) |
2005.11.27 | 採種林見本林下草刈合同作業(屋久島 船行) |
2005.12.3-4 | 種子島ヤクタネゴヨウ枝葉サンプリング(薬効試験用) |
2005.12.19 | 屋久島高平岳ヤクタネゴヨウ枝葉サンプリング(薬効試験用) |
2006.1.12 | 種子島調査生姜山・大川田川 |
2006.1.14 | ヤクタネゴヨウ保全対策連絡協議会設立総会(西之表市役所) |
2006.1.19-21 | 地球環境基金ヤッタネ!担当の西谷綾子さん事務局訪問 |
2006.2.11-12 | 種子島樹幹注入(中割国有林・砂中県有林・鴻峰小学校) |
2006.2.13-17 | 種子島枯死木伐倒及び搬出準備 |
2006.3.3 | ヤクタネゴヨウ保全対策連絡協議会屋久島支部会 |
2006.3.4-5 | 種子島松くい虫被害対策運び出し(木成国有林・砂中県有林) |
2006.3.10-13 | 種子島樹幹注入(種子島全域) |
調査に参加しませんか!
6月、一月雨、7月は西部林道通行止めのため調査は出来ませんでしたが、今年度は9回調査できました。だんだん生息地域が狭まり、険しいところになっています。どなたでも気軽に参加してくださいとはいえませんが足に自身のある方、ヤクタネゴヨウの自生地や調査に関心のある方是非ご参加下さい。参加できる方は事前に事務局まで連絡してください。
今後の調査予定
4月23日(日)・5月28日(日)
以後第3日曜日に実施する予定です。
編集後悔記
「後悔腹を立たす」と言った人がいる。今の私の心境だ。もっと着実に通信制作に励んでいれば、又そうせねばと思いつつも成せずに切羽詰って悔やむ気持ちはなんともやりきれぬものである。節操というものがなくて、あれこれ収拾のつかぬ生活と人生にまみれ、引きずるものだから一事に集中できずこんな有様になってしまう。いくらボランティア活動だとはいえ、賛助して年会費やカンパを送っていただいている方々には活動報告を年4回通信発行すると謳っているのであるからここはやはり冷や汗かきつつ改めてお詫び申し上げるしかない。さて、そんなこんなで今号は苦肉の策、合併号とした。昨年夏の専門家会議あたりから今月に至るまで詰めに詰め込んである。お詫びの中でも早々に原稿をいただいた森林総合研究所の吉丸さんには平身低頭、ゴメンナサイ。
上記風媒花伝に示すとおり調査自体は確実に進捗している。もっと調査隊の調査そのものも取り上げたいのだが、今年度はやはり専門家会議から協議会設立、そしてマツ枯れへの対応、と、緊急な保全対策が山となり、それも屋久島と種子島を股にかけた活動に精力を傾ける必要に迫られてきた。そしてある程度の達成は果たされたといささか自負する。ここでは特に一連の動きに際し、会議の座長を務めていただいた上、多方面で尽力下さった吉良今朝芳さんに特筆してお礼申し上げたい。会議から協議会の設立へと進展させていく重要な道筋を示していただいた。又、顧みればこの三年間、地球環境基金の助成が無ければここまで行き着くことは不可能であった。ヤクタネゴヨウの保全をテーマにあるいはそれを超えた熊毛地域の自然環境保全についての様々なシンポジウムの開催や専門家会議、ヤクタネゴヨウ保全対策連絡協議会、それらを種子島の保全の会と両島間の協働で成し得たのは基金の後立てが常にあったからである。環境再生保全機構のご理解にも感謝する。そして最後に心臓に毛生してお願い。これまでヤッタネ!調査隊の
活動資金は皆さんの年会費やカンパを基盤に公的助成機関からの助成金を受けてまかなってきた。ここ三年間は地球環境基金の助成が大きかったが、この三月末をもって助成は終了となった。今のところ次の助成金の見通しは立っていない。ここに至ってこの四月からの新年度に当り、こうして年会費(年1000円)やカンパをお願いする振替用紙を同封させていただく。“まったくもって通信もまともに届かぬのにお金の無心かよ“とお叱りうけるのは覚悟のうえで、それでも活動資金への援助下さる方あれば心底有難いことである。
この通信は独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けています
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