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屋久島・ヤクタネゴヨウ調査隊

絶滅危惧種ヤクタネゴヨウの全個体分布調査と保全活動

ヤッタネ!通信17号

2007-02-05 15:00:00 | インポート

ヤッタネ!君 ヤッタネ!通信タイトルロゴ

2007年2月5日発行
屋久島・ヤクタネゴヨウ調査隊 代表 手塚賢至
yattaneyoca@ml.j-bee.com
郵便振替[口座番号:01700-4-9751・加入者名:屋久島・ヤクタネゴヨウ調査隊]

忘れられた巨樹 ヤクタネゴヨウシンポジウム

2006年10月28日(土)鹿児島県民交流センター
29日(日)黎明館の丸木舟・仙巖園のヤクタネゴヨウ見学

ヤクタネゴヨウの過去・現在・未来 そして 生態系保全の取り組み

1999年調査隊発足以来、活動も8年間に及び、この間、自生木の調査と同時に啓発活動として屋久島、種子島の両島で様々な講演会やシンポジウムを開催してきました。こうした地元での活動を足がかりとして、今回初めてはるばる海を渡り、鹿児島市でのシンポジウムを開催しました。講演者、パネリストの方々はこれまでヤクタネゴヨウの保全活動を共にしたり、調査隊の取り組みに理解と支援をしていただている方々です。副題を―鹿児島県に残る貴重な自然遺産を守ろう―とし、ヤクタネゴヨウの保全を通して、県内の貴重な自然環境を守る動きとも少しでも連動したいとの想いもこめました。2日目は鹿児島市内で観られる身近なヤクタネゴヨウの見学会として、黎明館と仙巌園を回りました。たくさんの人にお世話になりご協力いただいたおかげで開催できた、大きな街での小さな催しではありましたが、ヤクタネゴヨウの存在をいくらかでも伝えることが出来たと思います。

講演
①金谷 整一(森林総合研究所生態遺伝研究室)
「忘れられた巨樹、絶滅危惧種ヤクタネゴヨウ」
②青山 潤三(屋久島自然研究会写真家)
「台湾・中国大陸におけるPinus armandiiの観察メモ」
③手塚 賢至(屋久島・ヤクタネゴヨウ調査隊)
「調査隊の足跡から未来へ」
④寺田 仁志(鹿児島県立博物館主任学芸主事)
「天然記念物の保護について」
パネルディスカッション:司会:湯本 貴和(総合地球環境学研究所教授)
パネリスト:堀田 満(西南日本植物情報研究所)・田川 日出夫(屋久島環境文化村センター館長)・長野 広美(種子島・ヤクタネゴヨウ保全の会)・金谷 整一・寺田 仁志・青山潤三・手塚 賢至

後援:林野庁屋久島森林管理署・上屋久町・屋久町・上屋久町教育委員会・屋久町教育委員会・種子島・ヤクタネゴヨウ保全の会

黎明館でヤクタネゴヨウ製丸木舟の見学Img26
この丸木舟は1969年種子島の鍋割(西之表市)に自生していたヤクタネゴヨウから作られ、伐採から船おろしまで儀礼もふくめ製造工程は記録されている。川野和昭氏(学芸課長)の説明を聞く。話はアジア文化の深遠さへと広く果てなく続き立ち去りがたかった。

仙巖園〈磯庭園〉のヤクタネゴヨウ見学Img25
仙巖園は江戸時代1958年に造営された島津家代々の藩士の別邸。錦江湾と桜島を借景にした雄大な庭園にヤクタネゴヨウの大木が映える。重留尚雄氏(庭園管理部)の案内で永年取り組まれた松枯れ対策等の管理方法を聞く。

■ヤクタネゴヨウin鹿児島市 レポート■Img27

田脇総徳(通称ダンさん、調査隊員、屋久町在住)

1) 10月28日、朝7:00。安房発トッピー
始発便は我々ヤッタネ調査隊の一団を乗せて走り出した。いつもながら濃い顔ぶれだ。今回は調査隊にとって初めての鹿児島本土進出ということで、どんな展開になるか楽しみだ。おにぎりを食べて一眠りすると、もう鹿児島港だった。鹿児島港からはそれぞれ会場での展示物の入った紙袋や段ボールを抱えぞろぞろと県民交流センターに向かった。

2) すでに前日鹿児島入りしていたメンバーと、早速シンポジウムの準備に取りかかる。日ごろ、調査隊が体を張って調査した成果が、こんなピカピカのビルで発表されるとは、何ともうれしい。でもどのくらいの人が、このヤクタネゴヨウというあまり聞き慣れない木に関するシンポジウムに足を運んでくれるのだろう。少なくとも以前の自分であれば気にもとめなかったのではないだろうか?

3) 昼を過ぎると人が集まり始めた。展示の前は混雑し始め通り抜けるのもやっとだ。ヤクタネゴヨウやクロマツのサンプル、マツノマダラカミキリの標本や資料、本など興味深く見ている。正直こんなに多くの人が来るとは思っていなかった。展示の中で目を引いていたのが枯れたヤクタネゴヨウを伐採して薪にして焼いた種子島焼だ。素朴な感じの湯飲みで Yattane!マークが入っている!Img28
松食い虫の被害にあった木は焼くか薫蒸するかして処理をしなければならないのだが、それを焼き物に使うとはヤッタネらしくて素敵だ。

4) 埋め尽くされた会場がいったん静かになり、ヤッタネ!調査隊長の手塚さんが会場を和ませる軽いタッチの挨拶をして講演が始まった。
トップバッターの森林総研の金谷さんは、ヤクタネゴヨウの生態や生息数など基本的な知識の他に、遺伝的な多様性についての研究報告など全般的なお話で、とても理路整然としていて自分のようなシロートにもよく理解できた。

5) 二番手の屋久島自然研究会の青山さんは自ら台湾や中国の奥地まで分け入り、ヤクタネゴヨウの近縁種の植生状況などを調査されてきたそうだ。崖っぷちの厳しい環境で生きているのは屋久島と共通しているが、中国の方はもっと高地にしか生えていないそうだ。この辺りの話しが、後の討論会で種子島のヤクタネを揺るがす興味深い話しに発展していった。写真家である青山さんの撮ってきた写真は美しく、貴重な物だそうだ。(青山さんは長旅で資金が尽きていたらしく、屋久島までの渡航費をその写真のCD-ROMを販売して賄おうとしていたのだが、無事屋久島にたどり着いたのだろうか?)

6) 三番手はヤッタネ!調査隊長の手塚さんだ。実際の調査内容やその方法などの活動報告である。足を使った機動力のある探検隊、いや調査隊だ。枯損木を人力で搬出、処理したり、急斜面に立つヤクタネゴヨウを一本一本測定したりとハードな仕事だ。ヤクタネゴヨウ保全を底から支えている。

7) 講演のトリを飾るのは県立博物館の寺田さんだ。ヤクタネゴヨウの今後の保護方法で天然記念物指定というのも視野に入れているので、天然記念物について全般的にお話をされ理解が深まった。

8) いったん休憩を挟んで討論会に移った。前半の講演者に堀田さん、田川さん、長野さんの御三方を迎え湯本さんの司会進行で行われた。

9) まずはじめの議題は、現在保全活動と同時に植林をして増やしていく可能性のあるヤクタネゴヨウを今後どのような形で資源として利用していくか?ということだったのだが、西南植物研究所の堀田さんの答えに度肝を抜かれた。「食料・・・」本気か冗談か分からなかったのだが、青山さんの話では中国では松の実をたくさん集めて食べているらしい。その他建築材や民芸加工品、環境教育の題材等々将来的な有用材としての価値にまで話が及んだ。

10) 話しは移り変わり、種子島のヤクタネゴヨウに焦点が当たった。その生え方、場所に不自然な感じがする事から人的に持ち込まれたものではないかということが議論された。会場からも丸木船についての話しや、実際に種子島で植林や伐採作業に関わっていた人の話などが次々に出てきた。その時に気づいたのだが、この会場に集まった人の中には以前生活の中でヤクタネゴヨウと接してきた人たち、もしくはもっと身近な存在として共に生きてきた人たちも多数参加されていたようだ。
話は尽きないまま終わりの時間が来た。

11) 打ち上げの席にはたくさんの人が集まり、ヤクタネゴヨウという一本の木から森、空気、水、地球の話しまで広がり・・・話題は尽きなかった。みんな自然が好きで、そのために自分のやれることをしている。いろんな人がそれぞれの立場で頑張っている。
酔っぱらった手塚さんの「私はずっとヤクタネゴヨウと共に生きていこうと思うんです。」という言葉がずっと耳に残った。
おわり

■展示林・採種林・見本林での協働作業■

Img29 2006年11月18日
名称はそれぞれだが、いずれも島内の国有林内に造成され、ヤクタネゴヨウの苗が育っている。これまで林野庁が取り組んできた実生苗と接木苗だ。展示林は白谷雲水峡に程近い所。採種林と見本林は船行地区。どちらも次代のヤクタネゴヨウが生育している。調査隊と屋久島森林管理署との間に覚書が交わされて、協力して維持管理に努めている。しかし両方ともにシカの食害による故損木も多いことから、今回被害対策として展示林の苗にシカネットの取り付けと両方の苗のモニタリング調査が行われた。当日雨の中、署員、調査隊、ボランティア参加者、総勢27名が参加し協働作業が行われた。同じように種子島にも採種林が造成されており、いずれも次代を担う大切な苗だ。ヤクタネゴヨウの未来を見据えた活用・管理計画を立てる時期にきている。

大分舞鶴高校SSH体験研修

Img30 11月14~16日
<SSHとは(Super Sience Highschool)文部科学省の科学力向上重点高校>
理数科1年生39名が来島。西部地域を学習フィールドとして4つの研修テーマが設けられ、ヤッタネ!調査隊による屋久島の生態系保全活動の体験もそのひとつ。昨年に続き2回目の依頼。14日宿舎での講義の後、15日が研修日。生徒10名、先生2名、調査隊から3名が講師役で付き、計15名で 実際に山中で自生木調査を行い、コンパス測量による位置と生木の計測データを取った。この日は20本確認。この日の調査地は瀬切左岸でSS尾根と名付ける。今回の体験研修全体のレポートは季刊生命の島次号に掲載される。SSH担当教員の川野智美さんは大学卒論のテーマがヤクタネゴヨウで屋久島への想いは熱い。

ヤッタネ!調査隊二つの受賞

Img31

≪林野弘済会会長賞≫

2005年、九州森林管理局(熊本市)での「森林の流域管理システム推進発表大会」で「森林技術協会理事長賞」を受賞した。今年はこれを受けて九州大会から全国大会への出場となった。11月28日「平成18年度国有林野事業業務研究発表大会」舞台は東京・霞ヶ関の林野庁舎である。発表テーマは昨年と同じく「ヤクタネゴヨウの現状と保全活動の実践報告」今年は屋久島森林管理署の久保木哲郎さんとコンビを組んで〈森林ふれあい部門〉での発表だ。全国から12課題の発表が行われ、その結果≪林野弘済会会長賞≫受賞。これは林野庁長官賞に次ぐ二等賞というところか。

さすが全国大会だけあっていずれも充実した発表で学ぶことが多かった。長官賞は北海道の日高から「小学生が捉えた地域の自然環境」という総合的な学習を支援する内容の濃い発表で、他にも「赤谷プロジェクト(生物多様性復元計画)における環境教育について」といった先進的な生態系保全と環境教育をあわせた興味深い発表などが印象に残った。 表彰式の後、意見交換会という立食パーティに出席し林野庁長官とも屋久島の話を交わした。今回の上京では発表前日、元屋久島森林管理署長の稲本さんや森林官をされていた山口さん、下村さんとも会い歓談し励ましを受けた。種子島木成国有林の松くい虫被害発生の折、素早く対応されたのが稲本さんでここの保護林申請書も署長室で稲本さんに手渡した。山口さん、下村さんも枯死木の運び出しや樹幹注入作業を共に行った。庁舎の廊下で古川さんにバッタリ会ったのには驚いた。この人は大学時代鹿児島から毎月フェリー2でやってきて手塚家に宿泊し、調査に参加した初期のヤッタネ!調査隊員だ。その人が今や林野庁勤め。森林総合研究所の金谷さん、吉丸さんもつくばから駆けつけて応援してくれた。そこに居てくれるだけで心強い仲間だ。皆さん、ヤクタネゴヨウの縁でつながっている。ヤクタネゴヨウが取り持つネットワークは、東京霞ヶ関のビル街にもしっかりと張られているようであった。

≪林木育種功労賞≫

(社)林木育種協会の≪第14回林木育種功労賞≫が決まり、2006年5月18日、東京四谷の主婦会館での授賞式に出席し、記念講演を行った。林木育種協会は現在両島に造成されている採種林・見本林(上記参照)の接木苗育成事業を手がけた団体。この事業を牽引された塩崎元理事長もこの採種林の行く末を注視されている。今回の功労賞受賞は3名。いずれもこの道のプロの方々。民間からの受賞は初めてらしい。
東京ヤッタネ!会上記授賞式の日、普段は会うことの出来ない東京在住のヤッタネ!会員の方々にお集まりいただいた。まずは持参したヤッタネ!カップで乾杯し、記念講演夜の部として皆さんに調査隊の活動報告をした。通信を読んで応援して下さる方、定例調査に参加した人、研究者、お互いに初対面でもヤッタネ!を通じての仲間だ。会場は屋久島に縁の深い山尾さんの「やまき」。店主の心づくしの料理と皆さんの熱いおしゃべりにあっという間に時間は経ち、名残は尽きねど終電が・・。次の東京ヤッタネ!会をいつの日かまたと思いつつ千鳥足。

風媒花伝ロゴ

≪定例調査2006年4月~12月≫

月日調査地参加人数
4月28日 M尾根 6
5月28日 K・M尾根 5
6月19日 白谷展示林下見 2
7月16日 K尾根 7
9月24日 G尾根 9
10月15日 DH尾根 5
11月14日 SS尾根下見 2
11月15日 SS尾根 15
12月17日 SS尾根 8

≪そのほかの活動≫

7月23日エコキッズ自然観察会(西部地域)
10月4日全国の大学演習林の技官研修にて講演(安房)
11月25日南の風交流会熊毛大会で発表 (屋久島環境文化研修センター)
12月4,5日種子島モニタリング調査(森林総合研究所と合同)

ヤクタネゴヨウの国の天然記念物指定に関する学習会

2007年2月7日屋久島、2月8日種子島
主催:屋久島・ヤクタネゴヨウ調査隊、種子島・ヤクタネゴヨウ保全の会
ヤクタネゴヨウは屋久島。・種子島の地域固有な、そして絶滅が危惧される「種」としての貴重性と共に古来丸木舟製造の有用材等伝統的な文化を伝え、人の暮らしと密着してきた歴史的な「文化財」としての貴重性を併せ持つ。私達はこうしたヤクタネゴヨウの価値に新たな観点から光をあてて国の天然記念物指定へ向けた取り組みを提案したい。2005年来ヤッタネ!調査隊は種子島の保全の会と話し合いを重ね、この度両島において「ヤクタネゴヨウの国の天然記念物指定に関する学習会」企画開催する。今回は文化庁・鹿児島県の天然記念物に関する専門家、ヤクタネゴヨウの研究者等を招く。2月7日は屋久島の自生地見学、8日は種子島へ渡り自生地、博物館等を見学の後、両島の関係者を交えた学習会を計画している。新たな価値観の確立を求め、指定へ向けた可能性を探る場となればうれしい。次号にて詳細はお伝えしたい。
《出席予定者》文化庁記念物課・鹿児島県立博物館・森林総合研究所・総合地球環境学研究所、屋久島まるごと保全協会・・熊毛1市4町の教育委員会文化財担当者、農林水産課、環境省屋久島事務所、屋久島森林管理署、等

ヤクタネゴヨウ保全対策連絡協議会(西之表市役所)・運び出し(木成国有林) 

2007年2月9日
◎松くい虫被害の現状や実行された被害対策とその効果等を報告し、新年度の対策について話し合い、協議会メンバーの共通理解を深める
◎昨年春に林野庁の群落保護林となった木成国有林は多数の自生木が残るものの、松くい虫被害が発生している種子島の保全対策の核となる場所だ。2004~2006年と3年間、枯死木の運び出しを行い、確実に被害が減少している。2月9日は協議会と平行して運び出し作業を民・官・学の協働で実施する。

【編集後悔記】

1999年9月、第1回の調査で西部の山中に分け入ってから私達の活動も足掛け8年目となった。正直こんな長期にかかわることになろうとは思ってもいなかった。ともあれここまでひたすら歩んでこられたのも多くの方々の参加と支援があればこそである。
時折息切れしへたばりそうになるが、まだまだ旗は降ろせそうにない。生木調査は第4コーナーにさしかかったあたりだし、松枯れ対策や天然記念物指定への取り組みは始まったばかりの重要課題である。昨年10月には念願としてきた鹿児島市内でのヤクタネゴヨウのシンポジウムを開催できた。勝手の分からぬ県都で右往左往してやっと開催にこぎつけたのだが、本当に多勢の人にお力添えいただき有難かった。熊毛地域はともかく「ヤクタネゴヨウ」はマイナーな存在だからどれだけの人に関心を持ってもらえるのやら、心細い状態にあって、南日本新聞(2006年10月25日)の南風録には力付けられた。私達の小さな試み、そこに注がれる眼差しがうれしかった。今年度はシンポジウムと2月の天然記念物学習会が活動の大きな柱である。こうした流れを通して少しづつ新しい展開の扉が広がる予感がある。今年度の活動助成は皆さんからの年会費やカンパを基盤にセブン‐イレブンみどりの基金助成を受けてまかなってきたが、この助成も3月で終了する。新年度にあたり、今号には年会費(1,000円)やカンパをお願いする振込み用紙を同封させていただく。ご援助いただける方あれば有り難い。手塚賢至

今年度のヤッタネ!調査隊の活動はゼブン‐イレブンみどりの基金の助成を受けています

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