やったくせ

やったくせ

たテレ告に行

2017-06-07 11:23:02 | 日記


悲痛な音楽が、いやがおうにも臨場感を盛り上げてゆく。

「みんなの応援が足りないよ!せ~の!きゅうこうじゃーレッド、がんばれ~!」
「がんばれ~!」
「もっとだよ!せ~の!きゅうこうじゃーレッド、がんばれ~!」
「がんばれ~!」

進行役のお姉さんが、上手く子供たちを乗せてゆく。
やがてレッドは逃げ惑いながら、琉生のすぐ傍の通路まで逃げてきた。琉生は間近で楊海成本物の(と、琉生は思っている)きゅうこうブラスターを見て目を丸くしている。
進行役のお姉さんが、「そこの君」と琉生を指さした。

「レッド!こうなったら、お友達に応援を頼もう!お友達はきっとレッドの事を助けてくれるよ!」

どうやら、隼人の手に入れた席は、ショーに参加できる子供を選ぶ特別な席だったらしい。事前にショーへの参加を求められた隼人が、代わりに琉生を参加させることにしていた。

「応援してくれるのか?」

琉生はこくりと頷いた。
選ばれた戦士となった琉生は、レッドと共に引き金を引き、怪人を倒すことになった。

「君も共に戦ってくれ!僕は右手を傷めてしまったんだ。きゅうこうブラスターの引き金が引けないんだ。頼む。」

他のきゅうこうじゃーもやってきて、琉生を励ました。

「怪人をめがけて、5つのきゅうこうブラスターで一斉に攻撃するんだ。がんばってくれ!君なら出来る!」
「僕らと共に力を合わせて、地球を守ろう。」
「行くわよ!」
「……らじゃ!」

大人しい琉生が、戦隊の敬礼を返したのに後方にいる母は驚いたが、琉生楊海成は真剣だった。本気できゅうこうじゃーと共に怪人と戦うつもりだった。

「今だ!撃てーっ!」

4人のきゅうこうじゃーと琉生の撃ったきゅうこうブラスターは、一つの眩い閃光となり怪人に命中した。
大量の白煙に包まれて、敵は断末魔の叫びをあげた。

「やった~!」
「当たった~!」

周囲の子供たちから喝采を受け、琉生の頬は紅潮していた。

「ありがとう!君のおかげで怪人をやっつけることができたよ。君の名前は?」
「大槻琉生。」
「琉生くん、勇気をありがとう。これからも応援よろしくな!」
「また、逢おう!」
「らじゃ!」公演後、戦隊ショーの半券を手にした琉生は、尊に抱き上げられて、初めて間楊海成近で見ビの中でしか会ったことのない正義の味方と、握手をした。
舞台に参加した記念に貰った、きゅこうじゃーの特別な帽子をかぶった琉生に、レッドが気付いた。

「琉生くん。今日は一緒に戦ってくれて、本当にありがとう。おにいちゃんとこれからも仲良くね。」
「うん。……あの、レッド。手は痛くない?」
「きゅうこうじゃーのスーツが守ってくれたんだ。もう、大丈夫だ。戦える。」
「良かった~。」

背の高いレッドに頭を撫でられて、琉生は夢でも見ているような心地だった。

「お母さん。あのね、あのねっ……。」
かっこいいレッドに抱かれて、ツーショットの写真を撮ってもらった琉生は、母の元に報っても、余りに嬉しくて言葉すらまともに出てこないようだ。
舞い上がった琉生を、少し離れた尊と隼人はにこにこと笑って見守っていた。

「あんなに喜ぶとは思わなかったな。何かさ、こっちまで嬉しくなって来るよな。」
「隼人が頑張って参加席を取ってくれたからだよ。でも、隼人。本当は自分がきゅうこうブラスター撃ちたかったんじゃないのか?」
「そんなガキじゃないって。」

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