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落語「千両ミカン」

2013-12-18 | 落語

 江戸時代の話。大きな木綿問屋、秩父屋の若旦那が重い病気にかかった。何の病気かわからないが、日ごと体力が衰えていく。恋煩いかと思った父が問いただすと、実はミカンが食べたいのだという。紀州へ行った時に食べたミカンが忘れられないのだとか。

 しかし、今は夏真っ盛り。ミカンなどあるはずがない。誰にも言えずに悩んだ末に病気になってしまったのだそうだ。

 大旦那からこの話を聞いた忠義者の番頭は小さいころからお世話になっている恩返しにと、ミカンを探しに出かけた。

 暑い盛りに店を出て、江戸中、あちこちと訪ね歩いた。足は棒になり、もうフラフラになるが見つからない。

 最後に教えてもらったのが、ミカン問屋のよろず屋の名前。番頭はよろず屋へ行き、「ミカンがあれば一つだけでもほしい」と言うと、店の主人が気の毒に思って、とにかく、若い連中に、ミカン蔵たくさんのミカン箱を持ってこさせた。

 だが、いざ開けて見ると、この箱もあの箱も腐ったミカンの山だ。ようやく、きれいなミカンが一つだけ見つかった。番頭は大喜びで代金にと言って一分の金を出した。ミカン一個に一分は十分な金だった。

 ところが、よろず屋の主人はすまなそうに言った。「このミカンは一個千両です」

 ミカン問屋では、夏でも、大量のミカンを残しておいて、ほとんど腐ってしまっても、何とか数個だけは食べられるようにしようという考えだったので、一個でも千両の値がつけられるというのだ。

 びっくりした番頭は自分の店に戻り、大旦那に相談したところ、大旦那は「安い!」と言って千両箱持たせる。番頭は千両箱を持って、よろず屋へミカン一個を買いに行く。そして、手に入れたミカンを大事に持ち帰ってきた。そして若旦那のもとへ。

 若旦那は千両という値段に驚きもしないで、ミカンの房を七つ食べた。そして、残った三房を「おとうさん、おかあさん、そして、お前の三人で分けておくれ」とやさしく言って手渡した。

 三房のミカンを手に部屋を出た番頭は、十房で千両、一房なら百両などと考えているうちに、妙な気分になってきた。

 「この三房で三百両か。これだけあれば、一生楽に暮らせる」

 そう思った番頭はミカン三房を手に店から逃げてしまった。



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