なぜ自動車窃盗団が「軽トラ」を狙うようになったのか…日本ではタダ同然の車両が100万円以上で売れるワケ構造がシンプルなので盗みやすく、海外では高値で売れる
<加藤 久美子様抜粋記事
車両盗難のランキングには2種類ある
日本国内における自動車盗難認知件数は、年間約6万台が盗まれていた2000年前後をピークに、この20年で激減している。コロナ禍の影響もあり、2021年には5182台とピーク時の1割以下になった。しかし、その後は2022年5734台、そして2023年は5762台とじわじわと増え始めている。
ところで、日本国内で毎年発表されている自動車本体の盗難台数ランキングには2種類あることをご存じだろうか?
日本損害保険協会(以下、損保協会)が発表している「車名別盗難状況-車両本体盗難」と、警察庁生活安全課による「車名別盗難台数の状況」(未遂を含まない盗難認知件数)である。両者のランキングは同じ車名でも大きな違いがある。
アルファードとランクルが順位逆転
分かりやすくするために2023年のランキングを合体してみた。カッコ内の数字が損保協会発表の台数である。車名別ランキングや盗難台数に大きな違いがあることがお分かりいただけるだろうか?
2位 ランドクルーザー 643台(383台)
3位 プリウス 428台(307台)
4位 レクサスLX 261台(120台)
5位 ハイエース 187台(60台)
6位 キャリイ115台(――)
7位 ハイゼット 107台(――)
8位 レクサスRX 88台(42台)
9位 クラウン81台(53台)
10位 レクサスLS/スカイライン 71台(――)
というのも、損保協会のデータは「車両保険を支払った台数」であり、警察庁のほうは車両本体盗難で被害届が出された件数(=認知件数)だからだ。なお、未遂は含まれていない。
認知件数では軽トラが上位に入っている
アルファードは2023年には700台が盗まれたが、そのうち盗難と認められて車両保険が支払われた台数は約半数となる364台、同じくランドクルーザーでは643台のうち383台が支払われている。
任意保険(自動車保険)を契約している車のうち、車両保険が付保されている割合は全国平均で7割弱だが、アルファードやレクサスLXなど高級車の車両保険付保率は8割以上とみられる。それにしてはずいぶんと盗難で保険が出るケースが少ないと感じるので大手損保に聞いたところ、「盗難の事実が認められない事案もありますので……」という返事だった。これはつまり、不正請求されるケースもほどほどにあるということらしい。
注目すべきは警察庁のランキングに軽トラックが入っていることである。
6位 キャリイ115台
7位 ハイゼット107台 ※ハイゼットは軽バンも含まれる
スズキ・キャリイもダイハツ・ハイゼットも車両保険の支払いランキングには入っていない。軽トラックに車両保険を付ける人がごくわずかということだろう。
警察庁のランキングでは「隠れていた」
軽トラックの盗難が増えている事実に筆者が気づいたのには、確固たる理由がある。
筆者が自動車盗難の取材を本格的に始めたきっかけは、2020年5月に日本で盗まれたスポーツカー十数台のパーツやエンジンが、アメリカの日本車専門店で販売されていた事件だ。軽トラックがアメリカで人気という記事も、自動車メディアに書いて多くの反響があった。しかし、軽トラックの盗難が増えているという事実を知る機会はなかった。
というのも、警察庁のランキングは長い間、「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」の公式サイト(2022年12月末で閉鎖)で1~5位のみ公開されていたからだ。1~5位となると、例年トヨタやレクサスが独占することになり、最近増えているスカイラインなどの国産旧車スポーツカーにおいては、どれくらい盗まれているのか不明だったのである。<続く
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