実家に犬はいたけれど、それはあくまで妹の犬で。今まで自分でペットを飼ったことがなかった私は、自分に1番に懐いてくる生き物がこんなに可愛いことなんて全然知らなかった。
夫婦2人の生活が、まめるのお陰で笑いに溢れる日々に変わっていった。
全力でおもちゃにじゃれる姿、ご飯を食べるカリカリの音。何回ダメって言ってもこたつの上でくつろぐどや顔。帰ってくるとお腹をなでてって寝転ぶ姿。膝の上のふみふみ。
家に帰るのが本当に楽しみになって、朝から晩まで仕事ばかりだった私達は心の安息をやっと見つけたみたいだった。
不思議だな。そうすると仕事も楽しく思えるし、自然と優しい言葉が出るようになる。
きっとそんな私達の変化を神様が認めてくれたのだろう。
まめるが家にきてたったの2ヶ月。1年半に及んだ不妊治療にピリオドを打つ日が来た。
念願の、妊娠。
まめる。まめるが運んでくれたんだね。
私達を癒して元気にして、母性をくれた。
だから神様はやっと赤ちゃんを授けてくれたんだ。
ありがとう。まめる。
君がうちの長男。これからもずっと一緒だよ。
…
……
今日は定休日なので面会に行ってきた。
コロナで5分しか会えないって言うけど。
たった1日でこんなに弱ってしまうんだっていうくらいぐったりしていた。
人工透析をしているって。
頭を撫でて名前を呼んだ。少し目を開くけど辛そうだった。
まめる。痛いよね。辛いよね。
でもまだ生きられるよ。早くお家に帰ろう。
何も出来ずに病院を後にした。
帰ってからは何も連絡がない。
大丈夫なのかな。
ふとすると涙が出てくる。
まめるがいない部屋は、こんなに広い。