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面白い本が読みたくて

『告発者』上下 ジョン・グリシャム

  誰もかれが逃げねばならず

『告発者』上下 ジョン・グリシャム 白石朗訳 新潮文庫 2024年 各900円 上354ページ 下367ページ

 司法審査会という判事の不正を調べるという機関に勤めるレイシーとヒューゴ。冒頭から様々な人、人間関係が書かれていて、内容を把握するのに時間がかかったが、要は判事の不正を審査するというこの機関の性質に則って2人は調査していく。

 場所はフロリダ州。ミックス(のちに違う名前が判明する)という男が弁護士ながら身を隠しつつ、依頼人のために内部告発を行なおうとしている。対象となるのはマクドーヴァーという判事で、豪奢なマンションに住み、他にも不動産を所有し、豪勢な暮らしを送っている。ポイントはこの判事が、犯罪組織とカジノを所有する先住民と手を組み不正を働いているというものだ。

 フロリダ州内で先住民経営のカジノが合計で年間40億ドルを稼いでおり、そこに皆が群がっている。しかしカジノ反対派の男が他の妻と寝室に全裸でいるところを殺され、その犯人はその女性の夫とされて収監され、死刑囚として服役中だ。この死刑囚は冤罪を訴え続けており情報提供者によると無実の可能性が高いらしい。

 カジノは先住民にとっても豊かな生活を保証してくれ、働き口のみならず、18歳になれば毎月、終身年金が支給される。そのため認定部族になりたい先住民族は150あるが、政府はカジノビジネスに参入したいがために彼らは認定されたいのだと踏んで、なかなか正式認定は出さない。

 判事はカジノの利益の分け前をもらい続けて11年。証拠は表には出ず安泰だ。しかし告発者は重要な証拠をつかんでいるらしい。

 レイシーたちは、刑務所を訪れ、死刑囚に聞き取りをするが、2人の組織は犯罪を捜査することが目的ではないので、真実を暴く取り組みは行えないし、武装もできない。唯一の武器は罰則付き文書提出令状があるのみ。

 話の筋が分かったところで、思わぬ出来事があり、調査は難航する。2冊あるうちの1冊分に近い分量は、そのことについてで、なかなか調査は進まず、ようやく動き出してから結末に行くまでが非常に紙面が少ない。凝縮すれば1冊で収まりそうだが、相手が手ごわいということを思い知るのに2冊が有効なのかもしれない。その割に、結末までは気が抜けないと思ったら、あっさり進むので拍子抜けがする。

 レイシーに近づく人間も怪しいのではとか疑心暗鬼になってしまう・・・。
証人保護プログラムなど、お馴染みの制度が登場するが、敵側に対して策を講じることもないのがちょっと惜しい。
★★★

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