こんばんは。Aokiです。
路地裏の『名も無きBAR』では、様々な人間模様が垣間見えます。
☆☆☆
『交差点』
最近、何度かご来店の男女。カップルではないが、男性にはその気がムンムン。
かたや同僚と思しき女性はと言うと、残念ながらその男性との未来は描いていない模様。
おそらく、幾度ご来店いただいても、男性の努力は徒労に終わるのが目に見えている。
それよりも、二人でグラスを傾けるその時を純粋に愉しむのが粋というもの。
いつも“とりあえずのビール”と“お約束のハイボール”では、いずれ女性にも見放されるのでは?
あえて同じ酒にこだわるのと、“とりあえず”で済ます酒とでは、意味が異なる。
今日の二杯目は・・・
「マスター、次はハイボールね。」
角は置いていないのは学習済み。そして、いつもの台詞。
「マスターのお勧めのウィスキーでね。」
(何でもよろしいのですね。)
(ラフロイグでもブナハーブンでも。シーバスリーガルでも。)
何をお出ししても、反応は変わらず。
そうですよね、意識は隣の女性の攻略にあるわけですから。
“酒は時の行間を流れる血液なのですが、勿体ないことです。”
「マスター、私は今日、マンハッタンに挑戦したいです。」
前回、やはり二人でお越しの際に、ワイルドターキーにライがあることを発見した彼女。
・・・ 一週間前 ・・・
「ねえマスター、ウイスキーはカクテルにはならないですよね。」
「そうでもないのですよ。
ウイスキーは、カクテルにしても美味しいのです。」
「本当?あんなに個性的な味なのに?」
「はい、例えば、こちらのワイルドターキー・・・」
「あっ、知ってる。バーボンですよね。
学生時代に飲んだことがあるわ。」
「はい、ワイルドターキーはバーボンが一般的ですね。
しかし、これはライ麦を原料にしたものです。
これに、ヴェルモットと苦味のあるアンゴスチュラビターでつくる“マンハッタン”
というカクテルを好む方は多いですよ。」
「じゃあ、次回はそれをお願いしようっと。
今日は少し飲み過ぎてしまったみたいだから。」
カクテルも5杯飲むと、かなりのアルコール量。
ふと、隣の男性のトロンとした目がぎらつく。
どうやら、彼女の“少し飲み過ぎて・・・”に反応したようだ。
しかし、出番はないと思います。
・・・ 再び今宵 ・・・
カクテルグラスに佇む深い紅色のマンハッタン。
マラスキーノチェリーの艶やかな輝きが、彼女の瞳に宿る。
ダウンライトにかざし、無邪気に喜ぶ彼女の頬が、微かに赤らんでいる。
湯上りの女性と、少々酒の入った女性は、お気をつけくださいませ。
特に、ダウンライトの下では。
彼は彼女を見て、彼女は酒を見る。
一方通行でしかない道に、交差点はない。
非ユークリッド幾何学は、酔客には難し過ぎるから。
written by Z.Aoki
☆☆☆
BARを訪れる方の目的は、それぞれ。
お連れさまとご一緒の方につきましても、同様です。
BARのカウンターは川であり、バーテンダーは渡し舟の船頭さん。
此岸にあっては、浮世の戯れ事。
彼岸にあっては、心の置き場所。
彼女の心が渡し舟に乗っているのに、足元ばかり気にして此岸から離れられないと・・・
川は、渡ってみませんと、わからないものです。
此岸は、彼岸を知ることでわかる場所です。
BARのカウンターが川であるということは・・・
バックバーのボトルは、精霊流し・・・
それとも、水先案内の灯台でしょうか。
Z.Aoki
路地裏の『名も無きBAR』では、様々な人間模様が垣間見えます。
☆☆☆
『交差点』
最近、何度かご来店の男女。カップルではないが、男性にはその気がムンムン。
かたや同僚と思しき女性はと言うと、残念ながらその男性との未来は描いていない模様。
おそらく、幾度ご来店いただいても、男性の努力は徒労に終わるのが目に見えている。
それよりも、二人でグラスを傾けるその時を純粋に愉しむのが粋というもの。
いつも“とりあえずのビール”と“お約束のハイボール”では、いずれ女性にも見放されるのでは?
あえて同じ酒にこだわるのと、“とりあえず”で済ます酒とでは、意味が異なる。
今日の二杯目は・・・
「マスター、次はハイボールね。」
角は置いていないのは学習済み。そして、いつもの台詞。
「マスターのお勧めのウィスキーでね。」
(何でもよろしいのですね。)
(ラフロイグでもブナハーブンでも。シーバスリーガルでも。)
何をお出ししても、反応は変わらず。
そうですよね、意識は隣の女性の攻略にあるわけですから。
“酒は時の行間を流れる血液なのですが、勿体ないことです。”
「マスター、私は今日、マンハッタンに挑戦したいです。」
前回、やはり二人でお越しの際に、ワイルドターキーにライがあることを発見した彼女。
・・・ 一週間前 ・・・
「ねえマスター、ウイスキーはカクテルにはならないですよね。」
「そうでもないのですよ。
ウイスキーは、カクテルにしても美味しいのです。」
「本当?あんなに個性的な味なのに?」
「はい、例えば、こちらのワイルドターキー・・・」
「あっ、知ってる。バーボンですよね。
学生時代に飲んだことがあるわ。」
「はい、ワイルドターキーはバーボンが一般的ですね。
しかし、これはライ麦を原料にしたものです。
これに、ヴェルモットと苦味のあるアンゴスチュラビターでつくる“マンハッタン”
というカクテルを好む方は多いですよ。」
「じゃあ、次回はそれをお願いしようっと。
今日は少し飲み過ぎてしまったみたいだから。」
カクテルも5杯飲むと、かなりのアルコール量。
ふと、隣の男性のトロンとした目がぎらつく。
どうやら、彼女の“少し飲み過ぎて・・・”に反応したようだ。
しかし、出番はないと思います。
・・・ 再び今宵 ・・・
カクテルグラスに佇む深い紅色のマンハッタン。
マラスキーノチェリーの艶やかな輝きが、彼女の瞳に宿る。
ダウンライトにかざし、無邪気に喜ぶ彼女の頬が、微かに赤らんでいる。
湯上りの女性と、少々酒の入った女性は、お気をつけくださいませ。
特に、ダウンライトの下では。
彼は彼女を見て、彼女は酒を見る。
一方通行でしかない道に、交差点はない。
非ユークリッド幾何学は、酔客には難し過ぎるから。
written by Z.Aoki
☆☆☆
BARを訪れる方の目的は、それぞれ。
お連れさまとご一緒の方につきましても、同様です。
BARのカウンターは川であり、バーテンダーは渡し舟の船頭さん。
此岸にあっては、浮世の戯れ事。
彼岸にあっては、心の置き場所。
彼女の心が渡し舟に乗っているのに、足元ばかり気にして此岸から離れられないと・・・
川は、渡ってみませんと、わからないものです。
此岸は、彼岸を知ることでわかる場所です。
BARのカウンターが川であるということは・・・
バックバーのボトルは、精霊流し・・・
それとも、水先案内の灯台でしょうか。
Z.Aoki