眼鏡をかけたオタクっぽい男で、まだ20代である。
「この仕事が終わったら、○○を××して」「あそこのは、この人たちに○○の指示を出してやって」と責任者に指示を受けると、得意気に私たちに指示を出した。
この男も口のききかたを知らず、ため口でああして、こうして、と言うので気分のいいものではない。
こういうところで水を得た魚になるのは、世間で友達ができないタイプか、他人の上に立って偉そうにふるまいたいタイプなのだろう。
次々と新しい日雇いが入ってくる世界に身をおいて先輩面をしたいのだ。だが、A運送にいた古い日雇いたちは、彼よりも年齢が上のせいか、そのむなしさに気づいていた。
日雇いは人生のエアーポケットに落ちたようなものだ。
そこから這い上がったら、その穴にはもうだれも用がない。多くの人にとって、ここは通過点でしかないのだ。だが、やりつづけると決めた者は、穴と知りつつ、生きていく。
会社のいいなりとなり、いつのまにか、自尊心は奪われていく。この若いオタク男は、「他人に命令する」おもしろさを楽しんでいる最中で、落とし穴にいることさえ、気づいていない。
仕事は7時におわった。更衣室で8500円をうけとり、私は帰りのバスに乗った。
「この仕事が終わったら、○○を××して」「あそこのは、この人たちに○○の指示を出してやって」と責任者に指示を受けると、得意気に私たちに指示を出した。
この男も口のききかたを知らず、ため口でああして、こうして、と言うので気分のいいものではない。
こういうところで水を得た魚になるのは、世間で友達ができないタイプか、他人の上に立って偉そうにふるまいたいタイプなのだろう。
次々と新しい日雇いが入ってくる世界に身をおいて先輩面をしたいのだ。だが、A運送にいた古い日雇いたちは、彼よりも年齢が上のせいか、そのむなしさに気づいていた。
日雇いは人生のエアーポケットに落ちたようなものだ。
そこから這い上がったら、その穴にはもうだれも用がない。多くの人にとって、ここは通過点でしかないのだ。だが、やりつづけると決めた者は、穴と知りつつ、生きていく。
会社のいいなりとなり、いつのまにか、自尊心は奪われていく。この若いオタク男は、「他人に命令する」おもしろさを楽しんでいる最中で、落とし穴にいることさえ、気づいていない。
仕事は7時におわった。更衣室で8500円をうけとり、私は帰りのバスに乗った。