あの人がズズズ……とメロンソーダを吸っていました。氷の狭間にも入り込んで、緑色に光って見えました。行儀悪いですか？最後まで飲み干そうとする姿勢は、ボクには好ましかったんですけれど。
◇monogataryえちぅど
信じるというのは最大の思考放棄だ。そしてそれが、弱い、俺みたいな人間には救いにもなり得る。
何を信じ、何を信じないか、それは理屈より論理より自論より、感情が優先されてしまうけれど。少しずつ私的感情も浚われて、剥き出しになったものを「一縷の望み」といって、縋りつく。蜘蛛の糸より細く頼りないものに、全力・全身で。
ニュース画面に映るのは見知った土地だった。
◇monogataryえちぅど
結婚をゴールに捉えがちで、実際は結婚した後も生活を維持する努力が必要なわけだ。
◇monogatary
わたし、地方の生まれなんだ。持ち家があって当たり前で、アパート暮らしは少数派なくらい。
大きな会社が2つあって、親の勤め先って大体そこで、そこで出会って結婚ってパターンだから、子供は同級生だけど、親は上司と部下なんてこともあるわけ。もう幼稚園、保育園の頃から。それでそのまま小学校に上がって、中学校でしょ、私立行くなんてなかなかないよ。9割は公立。高校まではほぼ同じ顔ぶれ。転校生があったりはするけれど。
で、高校も基本的には公立が主流だし、学校側も公立高校行かせたがる。私立高校行くのは、よっぽど意識が高いか、公立高校落ちたか。そういうところの生まれ。習い事は、ちょっとした学習塾と、スイミングか、女の子はまぁまぁピアノやってたりして、モテる男子はサッカーやってたな。
わたしの生まれたところって、そういう、すっごい田舎ってワケじゃないけど、都会でもなくて、都心部でもなくて、テレビは週遅れとかないし、でも電車やバスには頼れないような、ちょっとした田舎だったんだ。
都会はすごいよね。時代もあるのかも知れないけれど、詰め込み教育っていうかさ。一戸建てなんて建てちゃったから、家庭内でちゃんと経済的な一員にならないといけないんだろうな。わたしみたいに、公立の小中高って出て、私立のFラン大出てさ、新卒カードも上手く活かせられなかった女は……ダメだね。そのタフさっていうか、堅実さにはついていけないよ。
◇monogataryえちぅど
高校2年の夏といえば、受験勉強が始まる頃か。俺はまだ行きたい大学も決まっていなかったし、そのうち地元にある国公立大学を目指すことなるのだろうと漠然と考えていた。周りがそうだったし、学校は国公立に行かせたがっているのだし。
俺にとって大学は通過点で、こだわりはなかった。自我がないのかも知れない。自立心が。つまりここは進学校で、家庭の事情だとか譲れない夢があるだとかを除けば、中学時点で大学進学を目指していたのは前提になる。けれども俺の理由といえば、家から近い隣の市で、知り合いもいなく、見知った地域であるからだった。
クラスメイトたちは勉強漬けというわけではなかったけれど、遊ぶのは放課後といった具合で、朝のチャイムが鳴れば英単語帳だの、参考書だのを開いている。
そのなかで俺は読書をしていた。嫌味にならないようにカバーはかけておくけれど。
俺はロマンチストみたいだった。本の中にある青春というものは、実在しないファンタジーだけれども
◇monogataryえちぅど
俺たちは、というと括りが大きいかもしれないが、俺たちは、誰しも本当の自分だなんて知らなくて、何かしら、装っている
◇monogatary
彼女は"絵に描いたようなヒロイン"だった。
顔がかわいかった。声が可愛かった。華奢な体躯で、色が白くて、色素が薄い。頭も良くて、家もお金持ち。すれ違うといい匂いがした。
女の子が憧れる女の子って感じがした。アイドルみたいだった。
じゃあわたしは？わたしは平々凡々。内気で、人に合わせられなくて、譲れないところは譲れない。人が嫌いなわけじゃないけれど。
彼女は打算的だった。いかに異性を取り込むか知っている。
◇monogataryえちぅど
風の強い日だった。だから日差しが強くてもとんとんといった、過ごしやすい天気に思えた。
ドアが勝手に閉まることや、櫛を通したはずの髪がすぐに乱れてしまうことを除けば。薄手の長袖で、寒いということも暑いということもない。そしてまだ乾燥の季節というほどでもない。酷暑を耐えたボーナスステージということにしておこうか。
