北海道の旭川空港、この空港では苦い思い出があります。
海外から国際線で旭川空港へ飛んでいる便は結構あります。海外の航空会社で海外から旭川空港へのフライトの事例です。
旭川空港の滑走路の長さは 2,500m です。この長さを長いと感じるか、短いと感じるかは飛行機の大きさと重量、性能によってイメージは変わります。
私はその時はまだ副操縦士、ある冬の日、会社に早めに出頭して旭川空港行きの Flight Plan (飛行計画書) を見ていました。その日の旭川の天気予報は雪だったのでそれが気がかりだったからです。
そしたらベテラン女性 Dispatcher (運航管理者) がニコニコしながらテーブルに近づいてきて、
「今日の旭川行きの便は旭川の天気予報が雪だからたっぷり燃料搭載を計画してあるからね。」
といつもの愛想を振りまきながら話してくれました。彼女はいつも信頼に足る優秀な人です。
旭川空港が一時的に除雪作業などで着陸ができない場合を想定して空中で Holding (待機) する燃料が沢山搭載が予定されています。加えてそこで天候が回復しないことを想定して出発飛行場まで引き返す分まで燃料搭載を計画してくれています。
燃料は多ければよいというものではありません。燃料を積みすぎると重量のために着陸の滑走距離が延びます。
旭川空港は天候が悪くなると滑走路34を使います。実はこの滑走路34は下り坂になってます。滑走路が雪に覆われて滑りやすく、しかも下り坂、ひょっとしたら背風 (風が後方から吹く状態) だと機体重量が重いと滑走路上では停止できないかもしれません。
その状態で滑走路で停止できるかは事前に Dispatcher が計算してくれています。しかしその計算根拠が大切です。滑走路状態がどのような状態で計算したのか彼女に確認したら滑走路が Wet (湿潤) だと返事が返ってきました。それでは現状に即していないから Poor/Ice (一番滑りやすい滑走路状態) と背風の両方を想定して再計算してくれるようにお願いしました。
結果、彼女は苦笑いしながら,
「それでは滑走路上では止まれないわね、もっと搭載燃料を減らす?」
と回答してくれました。
そこで私は「機長が出頭してから話してみます。」といったん会話は中断、
その内に機長が出頭してきました。彼は最近、機長に昇格したばかりで旭川へ飛ぶのは初めてだと自己申告してくれました。機長にそれまでの状況を説明して搭載燃料を減らすこととを進言しました。彼は私の意見を受け入れてくれて搭載燃料を減らしました。
その日の旭川空港は断続的に雪が降っていたみたいで滑走路が見えた時は真っ白の銀世界でした。接地後に Full Reverse (最大逆噴射) で滑走路端で何とか止まりました。冷汗...
あの時もし搭載燃料を減らしていなければ、滑走路を逸脱していたかもしれなかった。もし滑走路上で止まれなかったら滑走路端を過ぎると稲荷川へ向けて断崖になっています。
これも CRM が有効に効いた一例です。決して Dispatcher を責めません。誰でも間違い勘違いはあるのです。大切なのは、
「お互いに思ったこと意見を口に出そう!」
「人は信用しても、その行為は信用するな!」
という教訓です。
また Pilot はチキン(臆病者)であることが大切です。