~菱形と楕円の混在を探して~
妥協の相手は、他人ではなく、自分の中のもう一人の自分だった。奴の名を、仮に「オウヴァラ」と名付けよう。こじつけることと幻想を抱くこと、この二つが奴の根の深い性癖だ。・・・
しかし、今は、こんなことを書いている場合ではない。
まず、次の写真を見よ。
このヒロミチナカノ氏によるデザインを見ると、菱形模様と楕円(ぶら下げている物)とが「混在」していると、言えなくもない。プロのデザイナーでも、この組み合わせは難しいか。菱形だけを、あるいは、楕円形だけを使うのならば、美しい模様を織り出すことができる。例えば、同じヒロミチナカノ氏による次の着物(中央の写真)を見よ。菱形の、有限の中の無限の繋がりだ。あるいは、無限の中の有限の連続性だ。酔ってしまうほどの深い陶酔感に引きずり込まれるではないか。
はっきりと日付の言える日だ。すなわち、きょう平成21年6月22日、帰宅途中の僕はJRO駅付近で、目を大きく開かせられた。目の前を歩く青年の背中に菱形模様が付いていた。昨夜、僕は蜜柑色の紙に「混在」の模様を描いていた。うまく描けずに、机の上に投げ捨てて、寝た。翌朝、すなわち、今朝22日、投げ捨てた模様を再度見直すと、「ありゃ、結構、いいんじゃないの。〈混在〉になってるじゃないか」と思った。僕は写真に撮った。破棄しないで良かった。そんな小さな物語を生きていた僕の目の前に、偶然、三個横に並んだ菱形模様が歩いていたのだ。
「すみません。その菱形模様、ちょっと写真に撮らせてくれませんか」
青年は正直そうな顔立ちに眼鏡をかけ、肩にバッグを掛けていた。許可を得た僕は彼の胸元のデザインを写した。
「ちょっと、そのバッグの紐、・・・。バッグを取ってくれる?」頼むと、すぐ、青年はバッグを取ってくれた。
「この菱形模様がいいんだ。このデザインをした人は、しっかりした人だ思うよ」と僕は半分本気で、半分出鱈目に言った。すると、青年は「ヒロミチナカノ、知ってますか。パルコで買ったんです。もっといい菱形模様がありますよ」と話し出した。
パルコのヒロミチナカノの売り場に行けば、菱形と楕円形とが混在したデザインを見付けることが出来るかも知れない。僕は大きな手がかりをつかんだような気がした。
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