WORK備忘録

メモ

ECM勉強

2016-07-26 18:54:48 | 日記
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引用--ECMポータルサイト

1. 文書情報マネジメントの概要

 文書情報(コンテンツ)には、請求書や明細書など紙に印刷されフォルダにファイルされたもの、スキャンされた紙やファックス、ビジネス上重要なEメール、教育用の音声・ビデオ、アニメーションやイメージを含んだ企業Webページ・など様々な形式があり、いずれも企業にとって重要な情報資産である。これらの文書情報(コンテンツ)にはビジネス上の課題が多く含まれている。増加する紙は迅速な情報の検索を阻害し、手作業による非効率的な業務処理は並列処理もできず、生産性の低下をもたらすことになる。訴訟を回避する法的要件を満たすEメールを正しく管理していないために誤って削除してしまうなどの弊害も想定される。また、企業ライブラリに保管されていないコンテンツは共用できないため、迅速にアクセスできず、対応が遅れるなど、重要な情報資産が有効に活用されていないケースが多く見られる。一般に労働時間の3割は、情報を探すことに費やされていると言われている。

 組織で必要な全ての情報資産(コンテンツ)をデジタル化し、簡単に利用・検索できるようにするために、ライブラリ(レポジトリともいい、文書情報マネジメントでは情報の貯蔵庫の意味で使われる)に統合的に保管し、全ての形式のコンテンツを最も効率的な手段で一元的に作成、処理、保管、保存、廃棄を管理して必要な時に必要な文書情報を取り出して活用できるようにするシステムを文書情報マネジメント・システムという。

1.1 エンタープライズ・コンテンツ・マネジメント(ECM)

 文書情報マネジメント・システムには目的に応じた機能を提供するドキュメント・マネジメント・システムやナレッジ・マネジメント・システム、レコード・マネジメント・システム、Eメール管理システムなどがあるが、組織の部門を越えた情報共有と運用・管理を実現する統合的な文書情報マネジメントを、ECM(エンタープライズ・コンテンツ・マネジメント)システムと呼んでいる。電子化文書(紙文書)や電子文書など全てのコンテンツを、文書情報(コンテンツ)の発生時点から保存、廃棄に至るコンテンツ・ライフサイクル管理と、組織内の全てのデジタル・コンテンツを一元的に管理する機能を提供する。また、コンテンツ単位の履歴管理など、組織の内部統制に対応したコンテンツ管理が可能である。
 文書情報マネジメント・システムでは、文書イメージを保存・管理するだけでなく、従来のペーパーワークをネットワーク上で実現するため、業務の流れ(業務プロセス)を管理するためのソフトウェアである「ワークフロー・ソフトウェア」が用意されている製品も多く提供されている。

1.1.1 文書情報の定義

 広義な文書情報とは、「人の意思を、文字その他の記号や信号でアナログ記録メディア(紙、フィルム、写真、ビデオ、録音テープ等)やデジタル記録メディア(磁気テープ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリー等)に記録したもの」をいう。JIIMAの定義では、「組織の構成員が職務上作成し、または取得した文書、図書及び電磁的記録(電子的方式、電磁的方式その他、人の知覚によっては認識することのできない方式で作られる記録)をいう。」と定義しており、情報公開法における「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図面及び電磁的記録」の定義とあわせて、従来の文書・書類、図面はもとよりPC等で作成した電子文書、表計算、イメージ情報、映像、音声やEメールなど、電子的に作成または取得した全ての情報(コンテンツ)が対象となる。

1.1.2 電子文書と電子化文書

 文書情報には、最初からPC等の装置で紙を介することなく作成される文書(電子文書)と紙の文書からスキャナ等で該当イメージを採取し、デジタル情報として管理するために作成されたイメージ情報(電子化文書)がある。

電子文書は、狭義の意味ではワープロ、PC上のソフトウェア等で作成されたコードデータで構成されたものを指し、広義の意味では電子化文書を含む。
電子化文書は、紙文書及びマイクロフィルム文書をコンピュータで取り扱えるようにしたもので、いわゆる「イメージ情報」を指す。

1.2 文書情報のライフサイクル・マネジメント

 文書情報には、作成(入手)、処理、保管、保存、廃棄のフェーズからなるライフサイクルがある。文書情報のライフサイクル・マネジメントとは、取り扱う組織、文書情報の目的や性質により文書管理規定や構成管理規定等に従って適切に管理することをいう。

 ライフサイクル・マネジメントを実施するためには、個々の文書情報に対し、プロパティ(属性)情報を持たせる必要がある。例えば、文書情報のタイトル、分類、キーワード、管理番号、管理者、作成日、保存期限、原本の所在等の文書情報の属性情報をプロパティ情報(メタデータ)という。一般的に、プロパティ情報は、作成フェーズで個々の文書情報を管理するためのユニークな情報を付与した後、その後の処理、保管、保存、廃棄の各フェーズで適時情報が追加されていくことになる。


作成(入手): 文書情報の作成、入手するフェーズで、構成管理規定等による分類、作成(入手)日、作成者、キーワードなどのプロパティ情報が付与される。
処理: 文書情報の目的に応じた処理工程(承認決裁、公開、配布など)の流通過程を言う。 このフェーズで、文書のアクセス・コントロールに関する情報、改版履歴、処理履歴などのプロパティ情報が追加される。
保管: 文書情報を必要に応じて即座に参照できる状態を保持するフェーズである。処理フェーズ後、数ヶ月から1年間ぐらいの参照頻度が比較的多い期間が該当する。このフェーズでは、保管期間、保管場所、参照履歴などのプロパティ情報が追加される。
保存: 保管期間を終えた文書情報を文書管理規定等による長期保存をするフェーズをいう。 このフェーズでは、保存期間、保存場所、参照履歴などのプロパティ情報が追加される。
廃棄: 文書管理規定等で定められた保存期間、ルールに基づいて文書情報を廃棄することをいう。 文書情報には、電子データや電子化データに付与されたプロパティ情報などと原本となる文書情報(紙文書)が含まれるので、媒体によって廃棄方法が異なる。

1.3 文書情報マネジメント・システムの導入メリット

 文書情報マネジメント・システムの導入は、デジタル化されたビジネス環境の構築による検索性、生産効率の向上だけでなく、コンテンツのセキュリティ管理、履歴管理がシステムレベルで実現でき、組織のコンプライアンス向上を図ることが可能となる。特に、2008年度に施行が予定されている「金融商品取引法」(日本版SOX法。2006年6月7日、可決成立)の内部統制における業務プロセスの適正化、事業継続計画(BCP)対応など、企業の根幹をなす文書情報の適切な管理体系を企業レベルで実現することができるシステムが、統合文書情報マネジメント・システムである。


コンプライアンス(Compliance) 規制遵守や内部の情報セキュリティ方針を遵守することが可能となる。ドキュメントの所在とセキュリティを保証することにより、内部統制で求められる高信頼性の監査要件に対応できる。
コラボレーション(Collaboration) 業務処理のために部門内のワークフローや情報の共有や協業作業などから、情報を必要とする組織内の全てのビジネスユニットに協業モデルを提供できる。ますます分散するオフィス環境でも、高い組織連携と生産性を維持することが可能となる。
費用対効果(Cost) ドキュメントの作成、保存、配布のコストが削減できる。処理時間の短縮や情報の即時検索、業務プロセスの効率化により人材の再配置や業務プロセスを効率的・効果的な業務に活用でき、高い導入効果が実現できる。
継続性(Continuity) BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)など、24時間365日の企業活動を維持するために重要不可欠な情報資産をデジタル化して管理、活用することは、ミッションクリティカルな業務遂行上、重要な課題である。文書情報マネジメント・システムは、迅速なディザスタリカバリの実現など企業活動の継続を支援するシステムといえる。
顧客関係(Customer Relationship) 顧客の要求に対してリアルタイムに応えることができる環境を構築することで、顧客満足度を高めると同時に、顧客との良好な関係維持のためのハイレベルな顧客サービスが実現できる。

2.文書情報の保存と検索

2.1 インデックス情報とは

コンピュータが情報を検索する際に利用する索引のこと。データに含まれる要素によって情報を再構成し、特定の要素からそれが含まれる元のデータを高速検索できるようにするための情報のことを指す。ファイルやデータベースなど、大量のデータを検索する場合には、そのデータの所在を高速に調べることができるように、このインデックス情報を利用する。例えば、文書中のキーワードとして登録された単語がこのインデクス情報に相当する。

2.2 インデックス情報の生成、帳票の識別、文字認識(OCR)、その他の入力手段

 文書情報にはPCなどで作成される電子文書(オフィス文書ともいう)と紙文書をイメージ化した電子化文書に分類されるが、文書情報の検索キーとなるのがインデックス情報である。
PC等で作成されたワード、エクセル、パワーポイントなどの電子文書には、メタデータとしてPC保有者のデータ、作成日時等が文書プロパティとして作成時に文書に付加されている。また、組織の文書管理規定に基づいた電子文書のファイル名が設定され、これらの情報と文書本体の情報(テキスト情報)を用いて全文検索が可能である。

 一方、電子化文書(イメージ情報)はそのままでは文書イメージの検索を行なうことができないため、何の帳票をイメージ化したのかを電子化文書に付加するインデックス作業が必要となる。オフィスで散発的にスキャンニングする一般文書は個別にファイル名を設定することも可能だか、大量に発生する各種申込書のイメージ入力などでは、高速大量イメージ処理に適したインデック作成手法を考慮する必要がある。

2.2.1 OCRの活用

 OCR(光学式文字読取り装置)には定型の帳票や伝票の決められた場所を読取る「伝票OCR」と、契約書や一般紙文書など非定型の文書イメージの情報を全てテキスト化する「文書OCR」に大別される。
大量な申込書など単一帳票のイメージ入力では、「伝票OCR」を利用したインデックス情報の入力が効果的である。例えば申込番号など帳票上の定められた位置に記入されたり、印刷された帳票を特定できる情報をOCRで認識し、インデックス情報として出力すれば、高速に大量の紙文書のイメージ化が可能である。申込書の住所、氏名やその他の属性情報もOCR処理すれば、紙文書に記載された必要情報を全てデータ化でき、メインフレームへのデータ入力などに威力を発揮する。

 現在のOCR技術は3千文字以上の手書き漢字の認識や字体に影響を受けない印刷文字の認識(オムニフォント読取りという)を高い認識率で実現しており、金融業界や保険業界などで利用されている。
OCRを利用したインデックス・データ入力の場合は、一般的に連続番号のファイル名を持つイメージ・ファイルと読取られたデータで構成されたインデックス(データ)・ファイルが生成され、文書情報マネジメント・システム上で、イメージとインデックス情報が紐付けられる。

2.2.2 文書OCRによる全文テキスト化

 契約書、手順書などのマニュアル類、重要な過去の書類などのイメージ化では、「文書OCR」による全文テキスト化が有効である。読取られたテキスト情報をデータベース化すれば、一般の検索エンジンを利用した文書の全文検索が可能となり、ナレッジ・マネジメント等の情報共有が可能となる。
イメージ化した文書をPDFに変換して活用する場合には、文書OCRによる文字認識結果を文書イメージ上の該当文字の位置に表示するテキスト・レイヤーを利用でき、文書イメージとテキスト情報を一体化して管理でき、オフィス文書と同様の全文検索が可能となる。

2.2.3 帳票の識別

 生損保業界などで使用されている帳票は1000種類を超えるといわれている。
従来のOCR技術では帳票種類ごとに設計された読取り用定義ファイルにより、それぞれの読取りフィールドから文字を認識していた。このため、帳票種別ごとに処理を行なう必要があり、複数種類の帳票を混在で処理することが難しかったが、フォーム・プロセッシング技術によりOCR処理を行なう前に、スキャンされたイメージがどの帳票であるかをシステムで判断することができるようになり、数百種に及び帳票の混在処理が可能となった。
  これにより、イメージ化の前作業の軽減が可能となっただけでなく、後方処理の自動化をより推進することができるようになった。帳票を識別する技術は、罫線の形状や印刷の特徴など帳票の持つ固有の情報を学習してデータベース化することで可能としている。

2.2.4 バーコード情報などの活用

 帳票の管理番号や申込書番号などをバーコードで印刷しておけば、バーコード認識によりスキャニングと同時に瞬時にインデックス情報を得ることができる。バーコードはスキャニング中に帳票の傾きや上下逆転が発生しても正確に認識可能であり、また、読取装置自体も安価なことから単一的なインデックス情報の入力に最適な入力手法の一つといえる。二次元バーコードなどを利用すれば、より多い情報量のインデックス情報を入力することも可能となる。
 ミッドレンジのスキャナでは、OCRは対応していないがバーコード読取り機能を持つものが一般的なため、紙しか残っていない文書などのイメージ化もバーコード印刷された管理番号シールを添付して、スキャンすることで、帳票固有のインデックス情報を付けることができる。

2.3 インデックス情報による文書情報の検索方法

 大量のデータから検索する場合、インデックス情報を使うことにより、早く確実に検索が可能となる。ここでは文書情報の検索に向いている検索方法について説明する。
  検索とは、広義の意味で文書の作成・入手段階から処理(決裁・回覧・配布)・保管・保存・廃棄までのライフサイクルの中で、文書情報や管理記録の抽出を統合的に行える仕組みであり、特に大量の文書情報・メタデータを正確で、かつ高速に検索するためにはデータベース・ソフトによる検索システムが必要となる。

2.3.1 キーワード検索

 文書情報に固有な項目(文書名、管理番号、作成者、作成日など)をキーワードとして登録し、このメタデータをキーワード領域として指定して検索を実行する方法をいう。必要な情報をインデックス化するため、データ容量が比較的小さく、検索速度を高速化できる。また、「○○以上」、「○○以下」、「○○含む」、「○○含まない」などの検索条件の設定やAND・OR検索などの論理検索を組合せることも可能である。

2.3.2 ディレクトリ検索

 あらかじめ分類・階層化されている情報を項目化(定数化)してデータベースに保存し、検索時にその分類項目を選択するだけで結果を抽出する方法。分類項目を選択するだけで検索できるため、分類項目を比較的簡単に検索することが可能である。

2.3.3 全文検索

 入力されているコード情報すべてを検索する方法。キーワード検索・ディレクトリ検索は、あらかじめキーワード・コード等の検索項目を作成しておく必要があるが、全文検索ではすべてのデータが直接的に検索の対象となる。電子化文書(文書イメージ)の場合は、イメージ化と同時に全文を対象としたOCR処理を行い、全文検索用テキストファイルを事前に作成しておく必要がある。

2.3.4 自然語検索

 キーワードではなくて、自然語を入力して検索する方法で、あいまい検索とも呼ばれる。入力した情報の類似情報、関連情報を検索してくることが可能。

2.3.5 シソーラス検索

 同義語と思われる単語等を類推し、その該当情報を検索してくる方法。

2.4 リテンション(保存期間)

 日常よく使用していた文書情報も時間の経過とともに活用頻度が低下し、一般的な文書では、作成して1年後にはその利用頻度は数%程度に落ちると言われている。文書情報は日々増加しており、活用度の低下した文書情報をそのまま保管しておけば、物理的な保管スペース(書庫)の圧迫や電子的記録エリアの追加投資などの問題が発生する。このため、廃棄時期(保存期間満了時)に到達していない文書情報は、ファイルを集中的に保存し、文書情報に定められた保存期間を管理する必要がある。

 リテンションとは保有・保存・抑留を意味する用語であるが、文書情報管理では文書データなどのデータの保存期間の事を指す。一般的に、企業や行政の文書または文書データの保存期間は法律や各企業の文書管理規定で決めらており、例えば、1年、5年、10年、30年、永久保存など、この規定に沿ったスケジュール管理がなされる。このスケジュール管理は、改定履歴等を含む版管理や保存期間、不要情報をためない仕組みとしての廃棄の管理で、これらはリテンション管理とも呼ばれ、IT統制やコンプライアンスの観点で重要視されている。これを「リテンション・スケジュール」といい、文書の保存期間を定めて、活用期間(保管)と保存期間、廃棄を計画的に行なう。 活用頻度の低い文書情報の保存や廃棄が円滑に実施されるよう文書情報のライフサイクルを定めたリテンション・スケジュールにより、文書情報マネジメント・システムにより文書情報のライフサイクルをコントロールすることが必要となる。

3.文書情報マネジメントのための関連システム

3.1 紙文書ファイリングと電子ファイリング

 ファイリングとは、「文書を整理して利用し易いように保管する」ことであり、紙文書として保管する場合や電子化文書・電子文書として保管する場合においても、効果的なファイリング・システムの構築により、以下のようなメリットを得ることができる。

文書検索時間の短縮
大量の文書の中から必要な文書をスピーディに探すことができる。
保管スペースの削減
保管期間を過ぎた文書や重複保管している文書を廃棄し、スペースを削減することができる。
情報の共有化
文書をファイリングすることにより、情報の共有化を図ることができる。
文書管理ルールの標準化
文書のファイリングに際し、文書の分類基準,保管期間・廃棄基準,アクセス権限等、管理ルールを明確にすることにより業務の標準化を図ることができる。
3.1.1 紙文書のファイリング

 文書を紙で保管する場合、文書管理台帳として“インデックス情報と保管場所”を台帳管理する。この文書管理台帳は検索容易性の面から電子化する場合が多い。
一般的な文書管理台帳は以下のような項目をもつ。

文書分類
文書名
文書保管ロケーション
文書キャビネット名
文書フォルダ名
作成者(部門)
作成日
保管期間
保管期間満了日
保管期間満了時の措置
管理担当部門
備考
 紙文書のファイリングにおけるキャビネット名やフォルダ名の設定方法など、大分類、中分類、小分類の考え方は、電子ファイリング・システムにおける文書イメージ保管でも、引き継がれており、文書情報を検索性、効率性から考えた分類方法をとる電子ファイリング・システムも多くある。

3.1.2 電子ファイリング・システム

 電子化文書および電子文書をサーバに登録し、インデックス情報をデータベースで管理する。電子ファイリング・システムの導入により、更に以下のようなメリットを得ることができる。

ネットワークにより、遠隔地でも即座に文書を検索できる。
アクセス権限の設定とログ情報により、セキュアな環境を構築できる。
紙文書の廃棄により保管スペースを大幅に削減できる(e文書法等への適切な対応は必要)。
廃棄基準に従い、システムで自動的な廃棄処理を行うことができる。
 なお、紙文書と電子化文書、電子文書が混在する場合は原票ファイリングと電子ファイリング機能をあわせ持つファイリング・システムを構築することとなる。

3.2 ナレッジ・マネジメント・システム

 ナレッジ・マネジメントとは企業などの組織で、その共有資産としての“知識”の発見、蓄積、交換、共有、創造、活用を行うプロセスを体系的な形でマネジメントすること、又は、そうした知識の創造・活用の仕組みを業務プロセスの中に組み込み、生み出された知識を製品やサービス、ビジネス・プロセスの革新に具現化することで組織全体の競争力強化を目指す手法のことをいう。

 ナレッジ・マネジメント(KM: Knowledge Management)は、データ化された種々の情報の集合体から、ビジネスや学術に役立つ知識を抽出するための管理プロセスや、それを実現するアプリケーションを指している。ナレッジマネジメント(KM)では、知識を「暗黙知」と「形式知」という2種類に分類する。

 暗黙知とは、いわゆる「職人のノウハウ」と呼ばれるもので個人の中に蓄積された知識や専門的ノウハウで、形式知は誰もが知っている、又は参照できるマニュアルなどに体系化された知識のことを示す。暗黙知と形式知を相互に関連付け、専門的で高度な情報活用に利活用するための管理プロセスを提供するシステムがナレッジ・マネジメント・システムである。ナレッジ・マネジメント・システムは組織の共有資産としての知識(暗黙知と形式知)の発見、蓄積、交換、共有、創造、活用を行うプロセスを体系的にマネジメントすることを目的としたシステムである。

3.3 コンテンツ・マネジメント・システム(コンテンツ管理システム)

 オフィス文書などのテキストや文書イメージ、グラフィックや音声などのさまざまなデジタル・コンテンツを収集、登録して統合的に管理し、更新・配信する仕組み、またはそれを実現するソフトウェアを総称して、コンテンツ・マネジメント・システム(コンテンツ管理システム)という。 企業内のビジネス文書の管理を行うドキュメント・マネジメント・システム、企業の情報ポータル、CRM、EC(電子商取引)サイトなどと連携するシステム、インターネット経由で広く情報発信するためのWEBサイトのコンテンツを管理するWEBコンテンツ・マネジメント・システム、情報資産を管理するアセット・マネジメント・システムなども含まれる。

3.4 ドキュメント・マネジメント・システム

 ドキュメント・マネジメント・システムとは、狭義では紙ベースの文書・書類をドキュメント・スキャナによりイメージ入力し、検索用インデックス情報の入力、最適なストレージ装置への記録、文書のライフサイクル管理などを行い、必要なときに迅速に該当文書イメージを検索・表示することのできるシステムである。

 いわゆる電子化文書(紙文書をイメージ化した文書)を管理するための文書管理システムから、それらの紙の流れを管理し、ビジネス・プロセスをネットワーク上で実現する大規模なワークフロー・システムまでを含んでいる。
 近年は、PCによる文書作成、WEBサイトからの情報など、文書情報と呼ばれる各種デジタル・コンテンツを管理するコンテンツ・マネジメント・システムの中の一形態としてシステム又はソリューションが提供されおり、数十万円程度のPCベースのファイリング機能を提供する安価なシステムから、総数20億枚にいたる膨大なドキュメントを管理できる大規模なエンタープライズ・レベルのソリューションまで数多くの製品がリリースされている。

3.5 レコード・マネジメント・システム

 一般に情報を可視可能な文書形式で記述した内容や帳票イメージを「文書(Documents)」と呼ぶ。一方「記録(Records)」は、ホスト・コンピュータに記録された数値や文書情報のメタデータ(タイトル、作成者、入手先、改訂履歴、開示制限、分類・キーワード、保存場所、保存形態、保存期間、廃棄時期等の管理情報)等をいう。

 レコード・マネジメントでは、業務遂行上で発生又は入手した情報を様々な記録媒体(紙・ハードディスク・フロッピーディスク・マイクロフィルム・テープ等)に記録し、その作成・入手から処理、配布、保管、保存、廃棄にいたるライフサイクル毎に、一定のルールや規則に基づいてトータルに管理・運用する仕組みをいう。このため、広義の意味ではドキュメント・マネジメント・システムやコンテンツ・マネジメント・システムもレコード・マネジメントの概念に含まれる。

3.6 COLD

 旧来はストックフォームにラインプリンタで出力していたホスト・コンピュータの処理データを、用紙の代わりにマイクロフィルム上にプリント(撮影)し、同時に帳票枠(フォーム)をオーバーレイする形式でアーカイブするCOM(Computer Output Microfilm)は、1970年代よりレコード・マネジメントの一形態として世界的なレベルで普及した。1980年代後半になり、マイクロフィルムの代わりに光磁気メディアを出力媒体として利用して、ホスト・コンピュータで処理された顧客情報や取引履歴などの情報を記録し、PC等で利用できる可能としたCOLD(Computer Output to Laser Disc = 電子帳票) 製品が台頭してきた。日本では電子帳票又は電子帳簿と呼ばれ、米国では現在もCOLDと称されている。
 1990年代後半には、ストレージメディアの多様化・低価格化とイントラネット及びインターネットの飛躍的な普及、さらに1998年7月から施行された電子帳簿保存法制定の追い風により金融機関など大量のホスト情報を管理する企業では、情報の電子帳票化が進んでいる。

3.7 ウェブ・コンテンツ・マネジメント

 インターネットの爆発的な普及により、WEBサイトは情報発信型からインターラクティブ型へと進化し、2000年代に入ってからは、企業にとってビジネスプロセスの要素となり、マーケットプレース(市場)として進化を続けている。WEBサイトが企業活動にとって重要な位置を占めるに伴い、WEBコンテンツの管理プロセス改善のためのコンテンツ管理ソリューションとしてWEBコンテンツ管理システム(WCM:WEB Contents Management)製品を導入する事例が増加している。
 WEBサイトの作成では、WEBコンテンツ作成プロセスの簡素化・迅速化が求められている。WEBサイトの管理では、コンテンツ自体を作成・保有するユーザとデザイン・制作を行なうWEBデザイナーとの協業作業の迅速化、公開情報としてあらゆるミスの回避、アップロードするコンテンツの承認プロセスの迅速化などが求められている、WEBサイトを構成するために必要な煩雑な運用プロセスをワークフロー機能を利用して、煩雑さと負荷を軽減するWEBコンテンツ管理システム(WCM)は、独立したソリューションとして成長を続けている。

WEBマスター(管理者)の管理負担を軽減する機能
プロジェクト管理、ユーザ管理、アクセス管理、協調してコンテンツ作成/更新する機能など
コンテンツ管理機能
一元管理/再利用/チェックイン・アウト/登録/履歴管理/スケジューラ(配信、公開)など
情報公開する迄の承認プロセス
ワークフローによる管理機能
データ破壊やヒューマンエラーを防止する機能、ロールバック機能
テンプレート
他システムとの連携機能
これらのWCM機能を導入することにより、大規模なコンテンツ管理業務の迅速化、厳密化が高まり、WEBサイトの運営コストが大幅に軽減される。

3.8 Eメール管理システム

 Eメールは既にビジネス文書として認知されており、商取引などの企業活動に欠かせないツールとなっている。米国におけるSOX法(米国企業再生法)では、オフバランス取引(簿外取引)などで契約書を明確にする目的や購入依頼書を作成する目的で交換されたEメールは、取引レポートとして保存することが求められており、会計監査に関するドキュメントとして最低7年間の保存が求められている。
 Eメール管理システムは、これらの要求に応えるため、Eメールに特化した文書情報マネジメントとして開発され、一般にEメール・アーカイブ・システム(E-Mail Archive System)と呼ばれている。Eメール管理システムは、メールサーバに蓄積される全てのEメールを保存することで、内部統制等のコンプライアンスに対応しているため、スパムメール対策等はメールサーバに格納される前にメールフィルタリングソフトウェア等により駆除しておく必要がある。


3.8.1 Eメール・アーカイブ・システムの一般的な機能

ジャーナル・アーカイブ
内部統制などコンプライアンスに対応し、組織で交換された全てのEメール本体(Eメール・アーカイブ・システムではジャーナルという)を保存し、監査時に添付ファイルを含む全文検索が行なえるよう、テキストを抽出してインデックスを作成する
メール・ボックス・アーカイブ
個々のメールボックスを対象とした保存とEメールのライフサイクル管理をポリシーに基づいて行なう。これをメールボックス・アーカイブといい、例えば退社した担当者の交換したメールを参照し、ビジネス案件の継続性を保つ等の目的で利用される。メールボックス・アーカイブは文書情報マネジメントに近く、個人別メールのライフサイクル管理が一元的に行なえる。
メールサーバー容量の開放
メールサーバの容量を開放する。日々増大するメールサーバからアーカイブサーバに移行し、メールサーバ自体のファイル容量を最適に保つ。クライアントからはメールサーバ上の個人のメールボックスとアーカイブされたメールボックスの内容を区別する必要がない。
シングル・インスタンス
ジャーナル・アーカイブ(添付ファイルを含むEメール本体のアーカイブ)を行なう場合に、複数の同一メールが存在したときは一通のみアーカイブする機能をシングル・インスタンスという。これにより重複するメールの保管を行なわないため、ファイル容量を削減することが可能となる。

3.9 バックアップとアーカイブ

3.9.1 情報のライフサイクルとアーカイブ

 典型的な情報のライフサイクルは、「発生(作成)」、「処理」、「保管」、「保存」、「廃棄」のフェーズからなる。


 「処理」フェーズでは、情報の追加、変更などが行われ、正式な情報になった時点で「管理台帳」に登録され、「保管」フェーズに移行する。「保管」フェーズでは、活用を目的とし、参照速度を速くするため、通常ビット単価よりもアクセス速度を優先してストレージを選択する。「保存」フェーズでは、参照頻度は少なくなるので、参照速度の要求も緩やかになる。一方、定められた期間、情報を保持することが必要となる「保管」フェーズから「保存」フェーズへの移行では、情報をアクセス速度の速いストレージからより低価格ではあるがアクセス速度の遅いストレージに移行することを「アーカイブ」すると称している。この場合、移行元のストレージには元の情報は残らない。

3.9.2 バックアップとアーカイブ

 「バックアップ」とは、情報を無くさないこと、すなわち、「データ保全」を目的とし、現状情報を保管しているストレージから情報を別のストレージにコピーすることを指す。通常、コピー元のストレージよりも低価格なストレージを利用するが、同程度のストレージを用いてもよい。したがって、バックアップを行っても情報は元のストレージに残ったままである。
  アーカイブとバックアップの一番大きな差異は、情報を元のストレージに残すかどうかであり、バックアップは「データ保全」を目的とするのに対し、アーカイブは「保存コストの低減」を目的とする。したがって、アーカイブしたストレージに対しても、「データ保全」を行う場合は、バックアップが必要となる。

3.9.3 バックアップ&アーカイブ・システム・モデル

 典型的な情報システムを例に、図-9の「モデル1」、「モデル2」でバックアップ、アーカイブについて解説する。

 モデル1は、メタデータをDBで、そのコンテンツをファイル毎に管理する方式であり、モデル2メタデータ、コンテンツともにDB内で管理する方式である。モデル1の場合は、メタデータ、コンテンツ、操作ログのバックアップが必要であり、モデル2の場合は、メタデータ、コンテンツを含むDB、操作ログのバックアップが必要である。いずれの場合もアーカイブシステムは保管コスト低減のためのオプションとなる。


 通常のDBではオンラインバックアップ機能が備わっているため、バックアップの取得の際、システムを停止する必要がない。このため、モデル2はバックアップに際し、システム停止をする必要はないが、モデル1ではメータデータ(DB)とコンテンツ(ファイル)の同期を取るためにバックアップ時システムを一時的に停止する必要がある。

 バックアップ機器、媒体としては、磁気テープ装置/媒体が使かわれるケースが多いが、最近では磁気ディスクアレイが使用させるケースも増えている。アーカイブ機器/媒体については、光ディスク装置/媒体が多かったが、最近では低価格の磁気ディスクアレイを使用するケースも増えてきている。大量に情報がある場合は磁気テープ装置/媒体を使用することもある。

3.9.4 バックアップに関する留意点

 バックアップ・システムの導入検討、運用開始、運用にあたっては、以下の点に留意する必要がある。

リストアテストの実施
リストアテストを実施しないままシステム運用に入った場合、障害発生時、バックアップテープはあってもデータは戻せないという事態をまねくため、リストアテストは必ず実施する。これまでもさまざまな原因で、せっかく取得したバックアップテープが利用できなかった事例は多い。
バックアップ運用時間の確保
データ量が増えて行くにしたがって、バックアップに要する時間も増大してくる。最大保管容量、ファイル件数からバックアップ運用時間を割り出し、これを確保する必要がある。特に、ファイル件数が多かったり、多量のファイルを不適切なフォルダ構造で格納した場合にバックアップ時間が非常に増大するので、注意を要する。
システム障害回復時間
障害発生時にシステムを回復させるためにはリストアが必要となる。大量にデータがある場合、リストア時間も多くかかることになる。許容されるシステム障害回復許容時間をもとにリストアに許容される時間からバックアップ機器/媒体、方式などを選定していく。
リストア対象期間と運用環境の確認
バックアップテープ運用では通常、曜日毎に別々のテープにバックアップを行なう。 テープ異常が発生しても当該媒体を交換するだけで、運用は継続できるため、忘れられがちなのが、リストア対象期間となる。中には、週次、月次のバックアップデータを長期に保存し、何かあったら、このバックアップテープから過去のデータを回復しようとするケースがある。このような場合は、バックアップソフトを使用し、運用としてはバックアップを取ってはいるが、保管期間的にはアーカイブしていることと同等となるため、長期保存環境の確認が必要となる。
3.9.5 アーカイブにおける考慮点

塵埃の多い場所で使用しないこと
防塵タイプの装置も販売されているが、それでも塵埃の粒子が細かいもの、粘着性をもつものなどについてはトラブルを起こす原因となるので、それらの発生源の近くに情報マネジメントシステムを設置しないことが望ましい。粒子の細かい塵埃の卑近な例としてはプリンターのトナーがある。また、医療機関で使用のバリュームも細かい塵埃となって飛散し、媒体・機器に付着すると空気中の湿度で粘着性を持つことから要注意である。時に、磁気テープの中に塵埃が巻きこまれると光ディスクのようにクリーニングはできないので、塵埃環境には注意を要する。
データ移行時に向けての配慮
使用中のアーカイブ機器/媒体が販売打ち切り、保守打ち切りになる事態も想定して、データ移行計画を立てておく必要がある。一番の課題は新システムへのデータ移行時間であるが、新システムへの移行時は新データの登録は新システムのみとし、旧システムは参照のみとすることで、データ移行に割り当てられる時間は大きくなる。
データの保全性の向上
重要なデータの保全性を高めるには、複数の種類の媒体を使用することが推奨される。磁気ディスク、テープ、光ディスクの3種の媒体に同一データを保管している事例もある。

3.10 ビジネス・プロセス管理

 ビジネス・プロセス管理(BPM: Business Process Management)は、ビジネス・プロセスに対して「分析」「設計」「実行」「モニタリング」「改善・再構築」というマネジメント・サイクルを適応し、継続的なプロセス改善を遂行しようという経営・業務改善コンセプトのことで、IT用語としては、前述のコンセプトを実行するために複数の業務プロセスや業務システムを統合・制御・自動化し、業務フロー全体を最適化するための技術やツールをいう。
  ビジネス・プロセス管理では、BPMエンジン、BPM基盤システムと呼ばれるシステムが利用されるが、業務プロセスや承認、意思決定を含めたビジネス・プロセスを管理・自動化する「ヒューマン・セントリック」と、システム同士を連携させる「システム・セントリック」に分類されるが、文書情報マネジメントでは、業務プロセス管理としてワークフロー・マネジメント・システム(WfM)が一般的である。
ワークフロー(Workflow)のコンセプトは、1980年代に帳票イメージを管理するためのドキュメント・イメージ・マネジメント・システムの機能として開発され、「仕事の流れ」「業務プロセス」を管理する概念として重要な要素となった。
  ドキュメント・スキャナで読み取った帳票イメージ(電子化文書)を帳票の業務プロセスに従って、担当者から担当者へ順次流していく、いわゆるペーパーフローを管理するソリューションとして膨大な情報資産を持つ米国国防総省やFBI、銀行・クレジット会社・生損保業界などの金融機関などが採用した。
  1990年代には帳票処理の生産性を高め、業務プロセスの改善を可能とするBPR(Business Process Re-engineering)に貢献できるソリューションとして注目された。

4.ワークフロー

4.1 ワークフローとは

 ワークフロー管理連合(WfMC)の定義では、「ビジネス・プロセス全体あるいはその一部の自動化であり、これによってドキュメント・情報・タスクが、手続き規則に従って、担当者から担当者に引き継がれる」機能であるとしている。ビジネス・プロセスとは、言い換えれば「業務プロセス」であり、ドキュメント・イメージとしての文書の流れと保管を管理するドキュメント・マネジメント・システムの重要な機能のひとつといえる。
ワークフローは、いわゆるグループウェアにも簡単なワークフロー管理が搭載されており、出張申請や稟議申請など組織内の電子的な申請ルート設定などが上げられる。だたし、グループウェアでは、例えば文書の流れを電子メッセージ(社内メール・電子メール)の流れに代え、必要なルートに従ったメッセージの配信、メッセージの配信過程の管理などの簡単なワークフロー機能が提供されているが、業務プロセス自体を管理するためには、業務系で必要とされる大量の業務プロセスをワークフロー管理することが可能なエンタープライズ・レベルの製品が主流となる。

4.2 ワークフロー・システムの活用

 現在、ワークフローが最も利用される業務処理は、組織の基幹業務に直結した業務、例えば生損保における保険申込と審査、支払い査定業務、クレジットカードの申込審査や金融機関における融資審査などの基幹業務系で、定型的なビジネス・プロセスを行なうためプロダクティブ型と呼ばれている。
  また、多くのドキュメント・マネジメント・ソフトウェアでは事務処理系(出張清算、交通費清算、購入申請など)で社内承認ルートが設定されているような業務処理をネットワーク上で行えるワークフロー(アドミニストレーティブ型)や資料回覧などの非定型的な業務系のワークフロー・ルートを設定できるアドホック型の処理機能を提供している。今後は、システム設計、プログラム開発、マニュアル製作や各種デザインなど複数の作業者が協力してひとつの業務を実行できる環境を提供するコラボレーティブ型のワークフローに分類できる。


処理時間の短縮
紙によるオフィスワークでは処理時間の大半が担当者同士の紙の受け渡しに費やされるといわれている。極端な場合、伝票決裁では起票者、決裁権者と事務部門の全てが異なる建物にいることもあり、伝票の送付だけで数日を要すことになるが、ワークフロー・マネジメントでは伝票をデジタルイメージで受け渡すため、次の作業者に瞬時に送付することや、並行処理、適切なタイミングでの作業の催促が可能となるため、業務処理時間を大幅に短縮できる。特に、ワークフローの各ポイントで業務処理の滞留状況、作業者の処理状況が把握できるため入力ミスや判断ミスによる対応時間や、同様の書類を複数の担当者が繰り返し入力するなどの業務処理上の無駄を防止でき、全体的な処理時間の短縮が可能となる。
業務管理の効率化
ワークフロー・マネジメントにより、担当者が注意しなくても業務プロセスに沿った手順で業務処理が行えるため、業務プロセスの間違い生じることがなく、かつ管理工数を削減することができる。また、同じ役割の担当者が複数いる場合、それらの担当者間での作業負荷の平準化や進捗状況の把握が行なえるため、全体の業務量、個々の担当者の業務量や処理能力が把握・記録でき、業務管理の効率化を実現できる。文書情報マネジメント・システムにおける文書情報の受け渡しはネットワーク上で確実に行なわれ、着信した情報はワークリスト(キュー)に一覧表示されるため、手渡しによる資料の紛失や置忘れなどの事態を避けることができることも業務管理の効率化につながる。
BPR(Business Process Re-engineering)に結び付く
ワークフロー・マネジメントは業務プロセスを明確にシステム化できるプロセス定義ツールであり、また、業務量や処理時間の正確な記録による業務の定量分析が可能なため、業務プロセスの見直し、革新的なプロセスの定義など、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の推進上重要な機能といえる。

4.3 ワークフローによる業務改善の具体例

 文書情報マネジメント・システムにおけるワークフローの事例として、企業の物品購買管理システムを例に解説する。

ワークフローを導入する前の処理の流れ


物品の購入申請を行なう。
物品購買では、最初に購入申請者または依頼を受けた購買担当者が、発注先より購入品目の見積りを入手し、上長に対して購入を申請する。
上長の承認を得た申請書は、審査部門で審査承認が行なわれる。
申請を受けると、申請書、見積書、場合によっては発注先の企業情報などを元に、審査担当者が審査を行い、買い与信の確認や購買承認などを書類ベースで審査する。
購買担当部署で発注手続きが行なう。
購買担当者は、申請書、見積書、与信情報等のその他の情報をもとに、注文書を作成し、発注先に送付する。場合により、発注先から注文請書等の確認書類を入手することもある。
注文した物品が納品される。
納品された物品と納品書の確認を行い、受領書を発行する。発注先では、受領書をもとに請求書を発行する。申請書や注文書をファイルから抽出して納品書と見比べる場合もある。
支払処理を行なう。
請求書を受け取ると、申請書、見積書、発注書、注文請書、納品書を元に、物品が正しく納品されていることを確認し、支払処理を行ない、物品購入のビジネス・プロセスが完結する。
 全てが紙の情報を元に処理されるため、案件ごとのファイリング、資料検索の方法、納期の管理などの事務作業が必要となる。又、案件処理完了後は監査に耐えられる状態で、全ての資料をファイルし、管理する必要がある。

 これに対し、ドキュメント・マネジメント・システムを導入し、ワークフローによる管理を行なった場合は、イメージの活用とワークフロー機能により、速やかな処理が実現する。



見積書をスキャンし、PC上で作成した購入申請に添付して上長に申請する。
上長の承認が行なわれると、ワークフローにより申請書は審査担当者に回付される。 審査担当者は、発注先会社名から与信情報を入手し、殆どの場合自動与信で許可を与える。
ワークフロー・システムは承認された申請から自動的に発注書を作成することができる。また、全ての必要情報は案件単位にシステム内で管理され、閲覧、検索が可能となる。
発注先に対し注文書を発行し、納期管理を行なう。システム内で管理された期間内に納品されない場合は、督促または納期確認指示を購買担当者に対し行なう。
物品が納品されると、注文番号を元に注文書と物品の確認を行ない、受領書を発行する。納品書はスキャナで入力され、イメージ管理される。
支払担当者は請求書を受領すると、正しく納品されているかを請求書に記載された注文番号を元に、申請書、注文書、納品書等の書類イメージで確認し、支払処理を行なう。
 購買部門の責任者は、ワークフローとしてデザインされた各処理のキュー(作業単位)を確認することで、滞留案件や全体の処理の進捗状況をいつでも確認することができ、バックオフィス系業務の生産性と正確性を大幅に向上させることが可能となる。

 下図は物品購入管理として実際にデザインされたワークフローの連携図で、各アイコンがひとつの処理を表しており、アイコン右上の数値は各処理で待機または処理中のキューの数を示している。一般にワークフローの連携図は、アイコンを用いて判りやすくデザインされており、業務プロセスの可視化を可能としている。


 これらのアイコンはドキュメント・マネジメント・システムで行なうひとつの処理(作業)を示している。ワークフロー・システムでは、業務全体のワークフロー・デザイン、各処理(作業)の確定、各処理を連携した業務プロセスの構築、実行と見直しにより業務処理のボトルネックを解決するようなワークフロー・デザインの変更、業務の見直しをPDSC(Plan-Do-See-Check)サイクルで改善していくことが可能となる。