カメラを持って出掛けよう

仕事と音楽の合間に一眼レフとコンデジで撮った写真を掲載しています。

こんな時こそ

2020年12月06日 | 自然・季節
先日、所属しておりますアマチュアオーケストラで今年になって最初で最後のコンサートを行いました。
演目は例年よりも少なくして人気の指揮者体験コーナーも無しにしてのコンサートでした。
練習時には、おそらくコロナの影響もあって観客は少なくオーケストラメンバーの方が多いだろうと想定していました。
少ないながらも聴きに来て下さった方々に楽しんでいただこうと申し合わせておりましたが、実際当日になると例年に変わりく大勢のお客様が来て下さいました。
もちろん客席はソーシャルディスタンスを考慮して一定間隔を空けておりましたが、設置された客席は全て埋まっていました。



考えてみれば日常生活の中でテレビやラジオで朝から晩まで飽きもせず感染者情報を否応なしに浴びせられてい昨今。
一方的に恐怖心を煽られ潤いのない生活を強いられているのではないでしょうか?
「こんな時こそ」心に届く音楽が必要でないのかと痛感しました。



コロナに関しては言いたいことは山ほどありますが、音楽は心の栄養で免疫力向上にも充分効能はあると思っています。




小説「Obralmの風」




朝陽が部屋を明るく照らし昨夜の恐怖に対する悶絶が嘘のように夜は明けた。
何事も起きなかったことに感謝しながら浴室で洗面を行ったが、もう声は聞こえては来なかった。
(あれは一体何だったのだろう・・・)
朝の日差しを感じた時から岳の小心な恐怖感は消えていた。
恐怖とは己の心が暗闇に対して変化する影の部分かも知れない。
朝食のためダイニングへ行くとコーヒーを煎じるいい香りが漂っている。
主人は愛想よく挨拶をしてパン篭を手にテーブルへやって来た。
「いかがです今朝焼き立てのパンですよ。昨夜はゆっくり休まれましたか」
岳は彼の問いの裏にあの怪奇現象とも思える出来事に対して岳がどう反応するかを観察しているように思えた。
「ああ、床が変わったせいか寝付は悪かったけどよく眠りましたよ」
でも主人の表情には翳りがなかった。
「そうですかそれはよろしゅうございました。今日はどちらにお出かけですか?」
「米子市内へ行くつもりです」
主人はバス停の所在を丁寧に教えてくれた。
(やはり主人はあのことを知らなかったのだろうか・・・)
岳は彼に話そうか、それともこのまま黙っておこうか躊躇した。
岳は昨夜の女性客が朝食に現れないかと心のどこかで待っていた。
もし彼女が来れば昨夜の怪奇な話をきっかけに会話が出来るのではないかと期待していたが、残念ながら会うことは出来なかった。
岳はチェックオフの時思い切って主人に問いかけた。
「昨夜、そこのテーブルに座っていた若い女性はあれから夕食を食べたのですか」
「お客様に余計なご心配をかけて申し訳ありませんでした。彼女の待ち人は結局来なくて、たいそう気落ちした様子で料理を口にしておられましたが、殆ど召し上がらず部屋に戻られました。そして夜半突然に米子へ戻りたいからタクシーを呼んでくれとおっしゃいました」
「へえ、夜中にねえ」
「とにかく今夜は泊まられ、明日早朝じゃいけませんかと説得したのですが聞き入れてはもらえませんでした。今の若い人はこうだと思えば他の意見の入る隙間はお持ちじゃないようで」
主人は眉をひそめながら笑った。
彼女に一体何が起きたのだろうか、もしや彼女もあの奇怪な声を聞いて恐怖に耐えかねたのではないか。
そんな岳の憶測を知らずに主人は笑顔で岳を見ている。
(実は、と切り出して昨夜のことを話そうか・・・)
岳は迷ったが、見送りにやって来た奥さんの笑顔を見て思い止まった。

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