初めての海外旅行は貧乏旅行 Ⅲ

航空券は羽田－バンク-バ-の往復で、往路も復路も決められた航空便であった。
往路は問題ないが、復路は個人でアメリカを旅して無事にその日に
バンク-バ-へ戻って来れるかじゃ。

そんな先の事より、バンク-バ-空港に着いて、先ず最初の難関が待っていた。
カナダの日本人移住者の団体は親戚の子供などを夏休みにカナダに招待する
というのが目的なので、バンク-バ-空港の到着ロビ-には
大きなプラカ-ドを掲げたカナダの親戚の人が迎えに来てくれている。

私たち夫婦にはそんなお迎えはない。
ガイドブックにはダウンタウン行きのバスに乗ってダウンタウンへ行けば
いくらでもホテルはあるんで、その中から安全で衛生的で安いホテルを選ぶようにと
書いてあるんで、10台くらい停まっているバスのドライバ-に訊いた。

「このバスはダウンタウンに行きますか？」
答えは「ノ-！」
何故か数台のバスに訊いたが、すべて答えは「ノ-！」
『ガイドブックに書いてある事と違うじゃん！』

不安そうな顔をする妻の傍で、再度ガイドブックとにらめっこ。
そんなワシに神は手を差し伸べてくれた。
「〇〇さんですか？」
すでに空っぽになった到着ロビ-にしゃがみこんでガイドブックを開く
私たち夫婦に歩み寄ってくれた人がいた。

一瞬、何が起こっているのか理解できなかった。
初めて来たカナダで自分の名前を呼ぶ、見知らぬ人が居ることが理解できなかった。
それはAさんで、自分の友人の叔父に当たる人であった。
Aさんは甥っ子の友人が来るというので、心配して空港まで来てくれたみたいじゃ。

その日はAさんが交渉してとってくれたホテルに泊まり、
Aさんの車でスタンレ-パ-クなどに連れてって貰うた。
Aさんには今でも感謝している。

でも当時の自分にはカナダではなくアメリカに興味があったんで、
翌日にはアメリカに入国、そこから行き当たりばったりの珍道中が始まった。

多忙な時に

今日は仕事で遠方に行ったり来たり、忙しかった。
特に午後から多忙を極めた。

午前中は殆ど掛かって来なかった電話がしきりと掛かる。
極めつきは産廃業者の事務所でマニフェストを記入しとる時に
女房殿から掛かった電話。
義父の様子が今までと違うとの事、婦長さんも家族へ連絡しといた方がええと
言うてるとの事じゃが、それでもワシは深刻に受け止められない。

今まで義父の狼少年ぶりには何度も空振りを食っている。
とにかく傍に身内がおらんと寂しいんじゃと思う。
義父には３人の子供がおるが、義父に振り回されとるのが
義弟とウチの女房殿じゃ。義妹はワシと一緒で、その狼少年ぶりに辟易しとる。

電話で「それで、意識がないんか？」と問うと
「意識がないように思えるが、耳元で問いかけるとうるさそうにする」と言う。
「また狼少年じゃないんか？」と言うと
「そんな事、言うもんじゃない」と叱られた。

だんだんと弱ってきているのは理解しとるし、病状が今は軽くない事も理解しとる。
けど、今までが今までなんで、『またぁ？』と思うてしまうのよ。
ワシが薄情なのか、自分ではそう思うてないけど、他人から見たらそう見えるかも？
自分が死の床に着いた時、義父を反面教師と仰ぎたい。

初めての海外旅行は貧乏旅行 Ⅱ

カナダの移住者団体には悪いが、当時アメリカに興味があったんで
計画はカナダに着いたら、翌日にはアメリカに入り
西海岸の都市、観光地を予めピックアアップしておいて
気に入ったところには好きなだけいたい、そしてとにかく貧乏旅行をしたい。

当時の自分としては綿密に計画を立てたつもりじゃけど、今、思うと
アバウトな、あまりにもずさんな計画で旅立ったものじゃ。

計画の途中で結婚することになり、一人旅のつもりが、もう一人増え、
それだけ予算もかかる事になるんで、どうするか迷った。
他にも旅を邪魔するトラブルが発生し、今なら中止にしていると思う。

英語も話せない、初めての海外旅行なのに、１か月の個人旅行で・・・
それでも行こうと決意したのは、『一日３ドル旅行』の本に魅力が
いっぱい詰まっていたんだろうと思う。
世間知らず、井の中の蛙、無鉄砲、全てあてはまっていた。

周囲からも当然反対された。
それを押し切って羽田のタ－ミナルから専用バスで飛行機に移動する時、
女房殿は不安でいっぱいだったんだと思う、涙が頬を伝っていた。
そんな姿を見てもワシの心は、まだ見ぬ外国へ行けると思うワクワク感を
押さえられず、目は爛々と輝き満面の笑顔であった。

初めての海外旅行は貧乏旅行

いつごろから外国に興味を持ったんじゃろう？
今、手元にある古い国別の本を見ると中学生か高校生の頃に購入したものらしい。
特にアメリカに興味を持っていた。いつかアメリカに行きたいと思っていた。

それが、割と早く実現することになった。
22歳頃に読んだ『一日3ドル旅行』の旅行記。
これは安い宿を探しながら、安い交通手段でヨ-ロッパを周った旅行記じゃった。
これを読んで、『こんな自由な旅行をしながら世界を見てみたい』
青年はまだ見ぬ世界に憧れていた時、友人からある情報を得た。

それは在カナダの日本人移住者団体が年に一度日本の親戚を
夏休みにカナダに招待してやろうと言うプランじゃ。
渡航費の半額をその移住者団体が負担してくれるという。

当時の航空運賃はべらぼうに高かった。
変動相場制に移って間もない頃、たしかまだ1ドルが￥300位じゃったと思う。
片道だったか往復だったか記憶が定かでないが、バンク-バ-～羽田間が30万円以上だった。

このプランに乗れば航空運賃だけでも半額で行ける。
まだアメリカのパッケ-ジツア-なんぞ無かったと思う。
当然、格安航空券なんぞあるハズもない。飛行機代が半額、それは魅力的じゃった。
ただし往復の飛行機は限定され、行きは夏休みの初め、帰りは夏休みの終わりとなる。
むこうに約１か月滞在することになる。　決めた。

ミカン

年末にとびしま街道を通って大崎下島の大長までミカンを買いに行った。
みかん箱を２つと袋入りを1つ購入したのが、もうなくなった。

で、ス-パ-で小さな袋のミカンを買うて食べているが、また島まで行こうかのぉ・・・
もうミカンも終わりと思うけど、島にはまだまだあると思う。
この日曜日は、女房殿はお出かけでワシ独身の身なんでドライブがてら行って来ようか？
「ランチでも食べようか？」と高校の時の同級生の女性に声かけたが
彼女も趣味の発表会が近いらしく、その練習があるからとフラレた。

ほいなら近くでアコ-スティックライブがあるんで、そこへおじゃましようかとも思うたが
ミカンを買いに走るのもええかも？　と考えがめぐり始めた。
ライブに行ったら仲間もおり、新しい出会いもあり、楽しく一日過ごせるが、
静かにドライブするのも心が休まりええかも？　との考えも芽生えた。

瀬戸内海の多島美を楽しみながらルンルン気分で走るのもええかも？