広島県内の島嶼部は、比較的平坦な土地が少ないために、農家辺りの平均耕地面積が狭く、あまり裕福で無い者が多かったのですが、大長だけはみかんのおかげで、多くの子供たちを大学出へ通わせることが出来たのだと言われています。逆に、そのことが多くの若者達を島外へ就職させることになったのは、皮肉な結果かもしれません。ともあれ、全国的に有名になった大長早生みかんですが、このみかんには重大な欠点がかくされていたのです。それは、浮皮(うきがわ)になりやすいことでした。普通の年ならば全く問題は無かったのですが、暖冬になると浮き皮が大量に発生し、評判を大きく落としたのでした。浮き皮とは、果肉と果皮が離れてぷよぷよとした状態になることを言います。一旦、浮き皮になると、糖と酸が急速に失われていき(つまり、水っぽいみかんになる)、腐りやすくなるのです。特にエルニーニョ現象が世間に認知されるようになった頃から、つまり、温暖化が意識されるようになった頃から、浮き皮の発生が多くなったですね。そういえば、私が小さい頃には、酸っぱいみかんはポケットに入れて手で揉んでいたものでした。暫く揉んでいると、果皮がふにゃふにゃに成り、酸味が無くなるのです。もっとも、甘味も少なくなって水っぽくもなるのですが。でも、酸っぱくて食べられないようなみかんが、僅か数分で食べることが出来たのですから、その当時は何とも不思議に思ったものでした。