アマチュア無線ネタです。先日の記事に書いた通り、手持ちの無線機Yaesu FT817の出力異常の修理をやってみました。
この機種は初代の機種でもう10年以上使っています。その後、FT817NDとかFT818NDとかバージョンアップを繰り返していますがおそらく基本設計は大きく変更されることなく現在に至っています。私の無印のFT817は現在はメーカー修理を受け付けていません。この出力異常はこの機種では割とよく起きている現象で、ネット上でも各局の嘆き声が多数聞こえてきます。
困るのは何をどう注意すれば壊れないのかがよくわからないことです。結構頻繁に使っていても壊れないし、逆に全然使っていなくても久しぶりに動かしてみたら壊れていた、などといろいろなケースがあります。
一般的に「ファイナルが飛ぶ」という表現をされますが、最終増幅段のトランジスタが壊れてしまう現象です。この機種の場合ではほとんどの場合2SK2975という正方形のトランジスタが破損します。耐圧30V程度の回路構成のようですので、整合の取れていないアンテナで送信したりとか、アンテナを付けずに送信ボタンを押してしまったりとかしたときによく壊れるみたいです。厄介なことにアンテナ端子が静電気を拾ってそれで壊れてしまうケースもあるみたいです。
私の場合も購入した翌年くらいに移動運用で使った後、出力がおかしいことに気が付いて修理に出しました。その時も何をやっても0.5W以上出力されないという症状でした。その後、故障が嫌で使っておらず、たまに受信テストで使ったりした程度で送信は全くしていませんでしたが、今回自作ダミーロードのテストで使ったときにたまたま異常に気が付いたという次第です。今回のダミーロードが原因なのか、それともテスト以前に壊れていたのか明確には特定できませんが、私の記憶ではダミーロードテストの時にはすでに壊れていたような気がします。
さて、ボヤキ節ばかり書いても仕方ありません。メーカーで修理を受け付けてもらえないとなると自力で直すしかありません。ありがたいことにいくつかの情報がネットにありまして、それを試してみることにいたしました。このトランジスタは発熱が大きくて、そのために裏面にがっちりと放熱板が付いており、それをはがすのは普通のはんだごてでは無理というのが修理の難しいところなのですが、それを解決された方がおられましてそちらの方が残してくださった方法で挑戦してみました。詳細を確かめたい方はそちらのHPの方が間違いないと思いますので、そちらをご覧ください。(FT817 ファイナル 故障 などでググると出てくるはずです。)
ケースカバー(下側)のねじを外す。
写真中央左下側に止められている金色のねじ(2個)を外し、錫メッキ線2本2か所、トロイダルコアから接続されているケーブル2本4か所をはんだごてで外す。
白い接着剤でさらに固定されていますが、私はカッターで切断しました。
これでユニットを取り外せます。中央に見える黒い2つの長方形の部品が2SK2975です。交換用の部品はサトー電気で購入できました。
ユニット基板を取り外した後は裏面の放熱板がコンピューターのCPUのようにシリコングリスが塗られているのがわかります。もとに戻すときにまた塗りなおしますのでシリコングリスも用意しておく必要があります。私は自作PCマニア時代に手元に残したものがありました。それを流用しました。
さて、今度は壊れたトランジスタをとりはずします。20~30W程度のはんだごてではとても取り外せませんので、「クラッド抵抗」6.2Ω(25W)を使います。これもサトー電気で購入できました。厚手の板にこの抵抗を接着剤(G18を使いました)で取り付けます。そしてそのクラッド抵抗にシリコングリスを塗り、取り外したユニット基板のトランジスタの裏側を合わせて、ねじで固定します。φ2mm長さ1.5㎝くらいのねじで固定できました。
次にクラッド抵抗に13.8Vをかけます。昔作った自作可変安定化電源(5A対応)がありましたので、それを使いました。
通電!気になったので温度計も取り付けて温度も見ることにしました。
200度くらいからトランジスタについていたはんだが解け始めます。そこを見逃さずピンセットでトランジスタを取り外します。実に簡単に取れます。取れたらすぐクラッド抵抗に通電していた電源をはずします。わたしはちょっと手元がくるって2個のトランジスタ上側の間に取り付けてあった実装部品も持って行ってしまいました。気が付いたので失くならずに済みましたが、あんなもの老眼の私には見えません。気が付いて本当に良かったです。くれぐれもトランジスタは垂直に外しましょう。周辺部品のはんだも解けていますので触らないように注意しましょう。
基板がある程度冷えたら、今度はトランジスタを取り付ける準備です。トランジスタを載せる部分をはんだごてで整え、そのあと薄くフラックスも塗っておきました。
トランジスタはパッケージに入っています。トランジスタの裏側にも軽く予備はんだして、フラックスしておきました。
あとで熱したときに基板のランド部分とトランジスタがちょうどよい具合で接着できる量をイメージして軽く整えておきます。そしてピンセットでトランジスタをはんだの真上に正しい向きに載せておきます。
そして再度クラッド抵抗に通電し、温度を上げていきます。しばらくすると(約200度)はんだが溶けてきます。垂直にピンセットでトランジスタを上から軽く押さえて位置を合わせます。加減が難しいですね。手も震えます。時間もかけられません。2つともササッと手早く位置を決めたら、通電をやめます。当然冷えて固まってきます。これで取り付け作業は終了です。
トランジスタを取り付けた後、私は先ほどはがしてしまった実装部品2個(抵抗かコンデンサですが小さすぎて表記もなくわかりませんでした)を取り付けました。このはんだ付けもなかなか難しい印象ですが、Youtubeで実装部品のはんだ付けの動画を見て要領をつかんでいましたので、それほど苦労せずにもとに戻せました。(老眼の私にはそろそろきついですけど・・・)
トランジスタの熱が取れるまでゆっくり待ちます。私はクラッド抵抗に取り付けたまま自然に冷ましました。急激に冷やすと熱収縮でトランジスタが破損することがあるそうですので、ここまできたら慌てず次の作業のイメージをしながらのんびりしておくのが吉です。
これでケースに戻せば817は息を吹き返すはずですが、ファイナル破損再発防止策があるようなのでそれも施しておきました。
やはりネット上にあった情報を参考にさせていただきました。詳細は省略します。2SJ334×1、2SC1815×1、100kΩ×1、10kΩ×1、5.1kΩ×1を使った保護回路です。(先ほどのトランジスタ交換の情報を提供してくださっている方がこちらの情報も掲載してくださっています。回路図もそちらにあります。)
出力調整も紹介されていましたが、私はデフォルトのままでいじりませんでした。送信テストをしてみて出力に問題があったらやり直そうと判断しました。
さあ、送信テストです。まずは0.5W。大丈夫みたい。
1WもOK。
2.5WもOK。
5WもOK。
どうやら大丈夫みたい。出力的にも問題なし。ふ~~。よく壊さなかったなあ。何とか無事にファイナル交換及びファイナル保護回路増設が終わりました。これで私のFT817は今度使うときも無事に使えるはずなのです。いつの間にか壊れていた!なんてことはもう二度とないはずなのです。素晴らしいじゃありませんか。ひょっとしたら私より長生きするかもしれません。これからも大切にしていかないといけませんね。