つらつら日暮らし

伝教大師最澄が受けた菩薩戒の伝承について(1)

ちょっと気になることがあったので、記事にしておきたい。

 問う、若し菩薩戒を授くるに、別に大乗の類を立てる。其の菩薩戒の師師相伝、何ぞ。
 答えて曰く、師師相伝するに、略ぼ相承有り。是れ臆説ならず。何ぞ此の大道を疑わんや。
 問うて曰く、若し爾らば、其の菩薩戒の師師相伝は何ぞ。
 答えて曰く、師師相伝するに、今、当に略説すべし。信心もて聴くべし。嫉妬もて聞くこと莫れ。
第一菩薩戒師多宝塔中釈迦如来。
第二戒師大唐南岳思大師。
第三戒師大唐天台智者大師。
第四戒師大唐章安灌頂大師。
第五戒師縉雲智威大師。
第六戒師東陽慧威大師。
第七戒師左渓玄朗大師。
第八戒師荊渓湛然大師。
第九戒師瑯瑘道邃大師。
 已上の九戒師、師師相伝して、円教三学を授く。
 去る延暦二十四年大歳乙酉〈大唐国貞元二十一年乙酉に当たれり〉春三月二日、初夜の時、最澄・義真等と、大唐国釈氏沙門二十七人と、大唐の台州臨海県裏、龍興寺西廂の極楽浄土院に於いて、菩薩戒を授けらる。
 現前の和上、道邃大徳の辺、菩薩円教仏乗戒を受く。師師相伝するは、霊山法華会より、弘仁九年に至るまで、相続して絶えず。心智有る者は、此に於いて疑うこと無し。但だ、嫉妬ある者、悪見の者を除くのみ。
    『天台法華宗学生式問答』巻5


まずは以上である。

正直なところ、何とも凄まじい相承の系譜である。だいたい、戒源がいわゆる人身の釈尊ではなくて、多宝塔中の釈迦如来、端的に『妙法蓮華経』の思想に裏打ちされた釈尊なのである。それがあるため、この相承の本源を、「霊山法華会」とし、この文章を書いている「弘仁九年(818)」に至るまで、相続して絶えないとしているのである。

当方の個人的な学びが足りないので、この法華会での授戒の実態がどのようなものであったのか、まだ理解出来ていないのだが、それは今後、伝教大師御自身が見解を発しておられるようなので、それを見ておくようにしたい。

それにしても、上記内容で気になるのは2点、1つは中国に留学していた伝教大師と義真が、現地の僧侶とともに、菩薩戒を受ける戒会に随喜したことである。これは、延暦24年(805)のことだというが、この頃に中国では菩薩戒会が存在したということなのだろう。

また、この菩薩戒の師資相承について、信心をもって聴くことを求めつつ、嫉妬や悪見を持つ者を排除しようとしている。なるほど、具体的な師資相承では無いことは、インドの祖師方を一切交えていないことからも明らかだが、しかし、菩薩戒とは夢の中などで、仏・菩薩から受けることが可能であり、上記内容に、特段問題があるとは思えない。

転ずれば、これを信じないのは、嫉妬心が邪魔しているということなのだろう。嫉妬心とは、釈尊の教えの中でも批判が強く、離れるべきものである。

なお、上記の相承の詳細については、特に「多宝塔中釈迦如来」が気になるのだが、この辺は、色々と難しい内容も含むので、また別の記事にしておきたい。よって、今日はこの辺にしておきたい。

この記事を評価して下さった方は、にほんブログ村 哲学ブログ 仏教へにほんブログ村 仏教を1日1回押していただければ幸いです(反応が無い方は[Ctrl]キーを押しながら再度押していただければ幸いです)。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「仏教・禅宗・曹洞宗」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事