カバー5曲めは、昭和12年上原敏さんと結城道子さんで歌われた「裏町人生」。
https://columbia.jp/artist-info/hikawa/discography/COZA-216-7.html
Kiinaの歌唱はこちら↓
https://m.youtube.com/watch?v=glbOyLy23h0
歌詞は歌ネットより。
https://www.uta-net.com/song/45033/
ひとつ前の「丘を越えて」が希望に満ちた昭和の幕開けの歌だったのに対し、「裏町人生」の発表された昭和12年は、盧溝橋事件に端を発した中国との関係がいよいよ抜き差しならないものになり日中戦争が勃発。戦争が次の戦争を呼ぶ、いつ明けるとも知れない暗黒の時代に突入したそんな年でした。
Kiinaもカバーした「妻恋道中」や「流転」をヒットさせた上原敏さんは、後に36歳で3度目の召集に応じ南方で還らぬ人となりました。
そんな時代のカラーを反映した「裏町人生」は、転げ落ちていくばかりの自分の人生をどこか他人事のように斜に眺めているような、世の中を拗ねて見ているけれど、最後まで絶望しているわけではない、そんな女性の歌ですね。
独特なリズムのアレンジを含めどこか明るい雰囲気のある曲調と厭世的な歌詞のミスマッチがこの作品の魅力なのでしょう。実に多くの方がカバーしています。
この機会に色んなバージョンのカバーを聴いてみましたが、個人的に惹かれたのは鶴田浩二さん、渥美清さん。やはり人生を積み重ねてこられた方の歌唱には味わい深いものがあります。上手い、下手だけでは計れない歌なのだと思います。
そういった意味で、このアルバム制作の頃のKiinaには、上手に歌えてはいるけれど世の中を拗ねた酒場の女性の心情を深いところまで表現するのは難しかったかな?という気がします。
「いくらきよしくんが歌えるからって、何でも歌わせればいいってもんじゃないでしょう?」と、この頃のディレクターさんに文句を言いたい曲は幾つもあります。