アルバム3曲めは「砂山」。Kiinaの歌唱はこちら↓
https://m.youtube.com/watch?v=MLG04Y3E3KU
歌詞は歌ネットより。
https://www.uta-net.com/song/80218/
最初にこの曲を聴いたとき、「かず翼先生は
万葉集がお好きなのかな?」と思いました。
「夕波千鳥 おまえが啼けば」
という詞は、万葉集に収められた柿本人麻呂の歌
「淡海の海 夕波千鳥汝(な)が鳴けば 情(こころ)もしのに古(いにしえ)思ほゆ」
を踏まえているのでは?と思ったからです。
「夕波千鳥」は人麻呂の造語だそうです。人麻呂は、夕暮れの波間に小さな千鳥たちだけが漂って鳴き騒いでいるという限りなく淋しい情景を、「夕波千鳥」というたった7音だけで描写してみせました。
2番の歌詞にある「暮れゆく空に 三日月舟よ」も、やはり人麻呂に「月の船」の歌がありますね。
胸に秘めた恋の苦しさを格調高く描くのには、万葉集の世界が相応しいとかず先生は思われたのかなぁと、勝手に想像しています。
杜奏太朗先生の静かなメロディーも、ギターのトレモロを多用した石倉先生のアレンジも、Kiinaの哀切極まりない歌声(特に3番の「あぁ 波に散りゆく」のノンブレス)も、全てがこの詩の世界にピッタリです。
「恋初めし」もそうですが、秘めた片恋には文語体が似合うのでしょうか。
かず先生の綴られた情景が、まるで朦朧体で描かれた絵画のようにあまりにも儚くて寂しくて。
千鳥もさくら貝もすべてが薄暮の中に消えてゆくようで、片恋の相手も恋そのものすらも、本当は幻だったのではなかったのかと思うほどです。
寂しいけれど、とても美しい曲です。大好きです。
雑誌のインタビューの中でKiinaがお薦めの一曲に挙げて、「シングルにしたい!と思った」とお話ししてくれたのも、とても嬉しかったです。