作家の森村誠一さんが亡くなられました。
「人間の証明」や棟居刑事シリーズなどの推理小説から「悪魔の飽食」などの問題作まで数多くの作品を世に送り出されました。時代小説もお書きでした。
https://www.nikkansports.com/m/general/nikkan/news/202307240001387_m.html?mode=all
私は決してヘビーな読者ではありませんでしたが、一度だけ森村さんご本人からお手紙をいただいたことがあります。
40年ほど前、森村さんは初めてのチャレンジとなる時代小説を週刊誌に連載されました。それを読んで疑問に思ったことがあり、編集部宛てに何項目か指摘させていただきました。
そうしたところ、思いがけず森村さんから直筆の封書が届いたのです。
内容は、私が疑問に思った点について〜例えば登場人物の井原西鶴を「戯作者」と呼んだことなどに対して〜一つひとつ丁寧にご自分の見解を説明したものでした。
驚きました。
その頃の森村さんと言えば、業界一二の人気を誇る大ベストセラー作家で超多忙でいらしたはず。私はただ編集部に意見が届けられればよかったのです。
そして私は知的でハンサムな森村さんのプロフィール写真の印象から、勝手に事務的で冷たい方だろうと想像していました。
名もないいち読者の指摘など無視しても良かったし、スタッフの代筆でもよかったのに、森村さんはそうはされませんでした。
芯から真面目で何ごとにも誠実な方ということが筆跡や文面からも伝わってきました。
あれから40年(きみまろさんではありませんが)、勝手な思いこみや表面的な印象だけで人の好き嫌いを決めつけてはいけないと、森村さんの毛筆の表書を見るたびに自戒しています。
森村さんは歌謡曲にも一家言をお持ちでいらして、晩年の三波春夫さんとも親しくされていたようです。
NHKの番組で三波さんについてお話しされた時、世の中に求められる「流通歌手」(森村さんの造語です)のひとりとしてKiinaのお名前も挙げてくださいました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。