さかなの眼

眼からうろこが落ちる「さかなの眼」です。

「競争の時代」

2005-03-18 | Weblog
 ある日あるときいきなり「競争の時代」になった。いや、又、
「競争の時代」になったと言い直すのが正しいのかも知れない。
この数年、競争の文字が飛び交わない日はない。市場原理に基づ
いた価格競争、国際間のグローバル競争、地域間競争、官から民
へー民間で出来るものは民の競争力を導入、規制緩和・・・・、挙
げていけばきりがない。学問の府、大学でさえ「閉鎖的で環境変
化に鈍感である、競争がなく特色がない、経営管理の発想がない」
(朝日新聞3月16日)とまで言われる。もちろん今までそれな
りの「競争の時代」は緩やかであっても続いていた。いきなり何
でもありの「競争の時代」に突入したとみんなが思い込んでしま
うほどになったから軋みが出てくるのは仕方がない。本当の意味
の「競争の時代」とは何かと冷静に考えてみる必要はありそうだ。

 あれはもう何年も前の3月末、本格的な春の訪れを感じさせる
春分の日あたりだった。場所は東京亀有、1DKのマンションの一
室での三人の会話だった。徹夜明けの朝の五時ごろ朝刊を見なが
ら友達がもう一人の後輩にため息混じりに喋りだした。「情けな
い、何年か前だったらこんな事はなかった。毎年どんどん下がっ
ていく。惨憺たるもんだ。それにしてもそっちの母校はすごいな。
毎年上位1-2を争っているじゃあないか」。嘆いていた友達は番
町小、一ツ橋中学、日比谷高校出身、うらやましがられた後輩は
番町小、麹町中、開成高校出身だった。東京大学合格者数の新聞
記事を見ながらの会話だった。そう、55年体制の一党優位の均
衡が崩れ出し、革新的な都知事の誕生と共に何がなんだか分から
ない学校群制度になって友達の母校日比谷高校は見るも無残にほ
かの都立高と横並びになってしまったのである。「競争しない」、
「横並び」がいい、「自由にのびのびと」とこのあたりから世の
中の空気は変わった筈だった。

 それが「競争の時代」、「競争の時代」と声高にどこでも言い
だしたからからみんなが面食らいだした。負けてはならぬと焦る
気持ちがおかしくさせる。昨年は、どこかの区役所の病院の設計
入札で8千円台でダンピングのニュースまで入ってきた。予定価
格が2000万円台、ただの8千円台だからとんでもない話、超
低価格だ。ましてや建築の設計は知的活動だから入札にすること
がおかしいと唱えていた建築家の協会の役員をしていた設計事務
所が8千円台で応札したから問題は大きくなる。ところがこんな
話は、ちょっと気にしてインターネットで見てみればごろごろ転
がっている。簡単に「競争の時代」と言うわけにはいかない。都
立高校の学校群制度もそう、よく言われる小学生の運動会もそう、
競争しない雰囲気が流れていた。統制されていた戦前から戦後今
まで、競争の二文字で時系列を考えてみれば社会は「競争する、
しない」で揺れ続けてきたのである。だから、面食らった挙句の
象徴が8千円入札であると思えば理解できる。

 ある日あるときいきなり「競争の時代」になったと思った人の
数はきっと多い。人が何人か集まれば背比べの競争原理は働いて
くるし、経済は統制経済でもない限り自由競争となる。問題なの
は競争の意味を正面から受け止める環境が出来上がっていなかっ
たことである。いきなりの気持ちが引きずられるから何でもあり
の気持ちが沸いてくる。何とかして勝ち組に残りたい気持ちがそ
うさせる。なんでもありの勝ち組、負け組なら答えは見えている。
力があって強いものが勝。これは競争とは言わない、「弱肉強食
の時代」と言う。本当の意味の「競争の時代」とは何かと考えて
みれば、努力して優れているものがどんどん伸びていく「優勝劣
敗の時代」と冷静に受け止める。勝ち組、負け組と括っている間
は、何でもありのギスギスした気持ちが拭えない。みんなが了解
できる「競争の時代」、そう簡単にはやってこない。


「人気ブログランキングに参加しています。ブックマークの欄ク
  リックしてください。        ありがとうございました」

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
勝ち負けはあっていい。 (メリー)
2005-03-18 16:59:50
「力があって強いものが勝。これは競争とは言わない」



同感です。

勝ち負けは、当然生じるものであり、あっていいんだと思います。

問題なのは、たった一方向からの視点で値打ちを見てしまう、決め付けてしまうこと。自他共に負けた側の違った価値を認めることができないことだと思います。

言葉が足りないと思いますので、後日このことについて、わたしもblog

で意見を述べたいと思います。
返信する
う~ん深い。 (shu)
2005-03-29 09:34:04
トラックバックをいただきつつも、当方は長期出張で返事が遅れました。

メリーさんのコメントもふくめ、鋭い洞察力ですね。

色々考えさせられました。

この件については、私もまとまり次第述べたいと思います。

先ずは御礼まで。
返信する

コメントを投稿